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PART2 にもどる
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3 モンソー公園付近のハイソな地区
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パサージュを抜けてダム通りに
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エベルト劇場の少し先にパサージュが見えました。道路中央のグリーンベルトを歩いてきたので、自動車に注意しながら車道を横断して近づいてみます。パリ、というか多くの欧州の都市でよく見るタイプの、建物のあいだを行く道の、入口のところだけ建物の外壁をくり抜いた形になっています。パサージュ・ジェフロワ- ディドロ(passage Geffroy-
Didelot)という名がついています。ジェフロワは20世紀のジャーナリスト、ディドロはご存じ18世紀百科全書派の哲学者で、接点はなさそうだなと思ったのですが、どちらでもなくここの地主の連立姓だった模様。
パサージュを抜けたところがダム通り(Rue de Dames)で、こちらは庶民的な商店街ですけれど、やはり暑さゆえかあまり人通りがなく、元気もありません。いつもならもう少しうろうろするところですが、欧州に着いて早々に暑気あたりするのも嫌なので、本線に戻って凱旋門方面に進むことにしました。
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その本線は、私が再合流した地点で名をバティニョル通りからクールセル通り(Boulevard de Courcelles)に変えていました。メトロ2号線ヴィリエ駅(Villiers)がこの地下にあります。わりに大きな交差点で、合流地点の広場にはメリーゴーラウンドが置かれていました。馬とか馬車ではなくよろず近代的な乗り物なのが興味深いですが、この暑さなので子どもの姿はありません。寄り道したパサージュやこの遊具があるのは大通りの北側で、日陰がなく太陽光が直撃しますので、もう歩いていられません。またウソみたいに風がなく、べたべたに凪いでいる状態。何だこのぬる〜い陽気は!
そんなわけで横断歩道を渡って南側の歩道に移り、交差点に面したLe Zinc Villierというカフェで小休止。こういうパターンだとたいていは生ビールを頼むところだけど、この異常な暑さの中アルコールを入れすぎて脱水症状でも起こしたら大変なので、自制して普通のカフェを(€2.70)。パリの町の、角を曲がれば必ずあるというほどのカフェは、たいてい夏場になるとガラス窓を取り払って「外」と店内を一体化させたかたちで営業します。したがって冷房はなし。高湿度ではないので日光さえ遮れば涼しい、はずなのですけれど、今日くらいの気温だとそういうわけにもいかないらしい。日向を歩いているときよりはラクですが、空気はぬるいまんまです。ペリエ(炭酸入りミネラルウォーター)にでもしておけばよかったかな。私はテラスと店内の境目あたりに座っていたのだけど、テラス大好きなパリの人たちもさすがに内側を選んでいる様子です。
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お花屋さんとは何とも涼やか
モンソー公園
アイスクリームを買うか、ごろんとなるか・・・
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30分くらいカフェで深呼吸してから、意を決して?クールセル通りを再び南西に向かって歩きはじめました。やがて進行方向左手(いま歩いている道路南側)にモンソー公園(Parc de Monceau)が見えてきます。
モンソー公園のロトンド
革命前にオルレアン公が、ピラミッドなどの世界の名所を再現しようと自邸の庭に個人の趣味で造ったのがこの公園のルーツ。紆余曲折を経てパリ市が接収し、19世紀後半に現在のような英国式庭園になりました。以前に内部をゆっくり回ったことがありますが、あちこちの建物や庭園からもってきた古いものをごてごて置いてあったり、芸術家の彫像を飾ってあったりで、趣味がいいのやら悪いのやらよくわからない企画になっています。池があったり築山があったりと、こちらの講演にしてはめずらしく凹凸があります。でも今回はちらっとのぞくだけにしましょう。
ジョギングする人たちの姿もこの日は少なめ。たいていは木陰に寝転んで涼んでいます。てか、涼めるのかね(汗)。前述のようにパリは冷房のない建物が多いので、風通しの悪い部屋の中にじっとしているよりはマシなのかもしれません。いま15時半で、いちばん暑い時間帯です。この季節はサマータイムの21時近くまで明るく、「夕方」が最もしんどいことになるわけね。岩の壁から水が流れ出す趣向があるのですが、照り返しが強いせいもあって、涼やかではなく、ぬるい湯気が立ち上る感じ。
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クールセル通りの歩道
クールセル通り 高級ホテルなどが多い地区です
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クールセル通りに戻って、広いモンソー公園の北辺を歩きます。背の高い並木があるのでまだ若干の日陰ができていて、助かっています。ほどなくメトロのクールセル駅。ヴィリエ、モンソー、クールセルと、パリのメトロはとにかく駅間距離が短くていいですね。それでこそ下駄代わりに使えるというものです。クールセル駅といえば日本大使館(Ambassade du Japon en France)の最寄り駅。いまのところ幸いにして大使館の世話になったことはなく、したがってその界隈は未踏です。
クールセル駅の入口
朝、出発した地区は非白人が多い庶民的(というのは私なりの修辞)なところでしたが、モンマルトルを経てここまで来るとずいぶんハイソな感じがします。右岸といってもいろいろありますよね。
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(左)セルフスタンド (右)おしゃれなパン屋さん
聖アレクサンドル・ネフスキー大聖堂
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さあ、あと一息。こうなってくると、いったい誰に頼まれて歩いているのかという疑問が頭をよぎりますが、自爆するだけなのでやめましょう。まもなくテルヌ広場(Place
des Ternes)。朝からえんえん歩いてきた一連の道はここが西端です。タテ筋はワグラム通り(Avenue de Wagram)、ヨコ筋はフォーブール・サン・トノレ通り(Rue du Faubourg Saint- Honoré)。そこに斜めにわが道路が突っ込む形状になっています。フォーブール・サン・トノレ通りはパリを代表するブランド街で、第3シリーズで歩きとおしたところです。したがって最後のひと歩き、ワグラム通りを凱旋門まで進む部分はそれと重なりますけれど、けっこうしんどいので別のルートをとる気力が、もうない(笑)。
テルヌ停留所付近
その少し手前、道路越しの突き当たりに尖塔が印象的な教会が見えました。フランスではイレギュラーなデザインなので、おやと思ってよく見ると、てっぺんの十字架がカタカナのキの字みたいになっているので、正教会の教会だということがわかります。あとで調べたら聖アレクサンドル・ネフスキー大聖堂(Cathédrale Saint- Alexendre- Nevsky)というらしい。EU加盟国を(できればEUが動揺しないあいだに)回りたいと思っていて、そろそろ東欧行きを本格的に計画しなければなりません。正教会のエリアに入るのも楽しみです。
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ファイナル・アプローチはワグラム通り
ご存じエトワール凱旋門(シャンゼリゼ側から)
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ワグラム通りをテルヌ広場から南に300mほど進むと、凱旋門のあるシャルル・ド・ゴール広場(Place Charles de Gaulle)に到達します。最後は上り勾配。シャンゼリゼも同じように凱旋門に向かってけっこうきつい勾配になっています。それだけに凱旋門の存在感があるということね。この付近のワグラム通りも、シャンゼリゼにつづく観光地区の一角をなしており、それっぽい飲食店などが並んでいます。この道から行くと凱旋門を真横から見ることになるのがおもしろい。
16時ちょっと前に凱旋門前に到着。セルカ棒を取り出して記念撮影する世界各国からのツーリストがわんさかいるのは以前と変わらず、ちょっとだけほっとしました。凱旋門の正面に刻まれた彫刻(リュード作)は通称「ラ・マルセイエーズ」。実際に口ずさめば恥ずかしいし、思想的な背景を疑われても困るので、心の中で歌ってみました。ナショナリズム批判が私の仕事ですし、まして愛仏心なんてあるわけないけれど、威勢のいいフランス国歌を鳴らして、猛暑と、昨今のパリにまとわりつく嫌な気分を吹き飛ばしてしまいたい心境になっていたわけです。
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PART4へつづく
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