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2 ラファイエット〜パッシー


ラファイエット・グルメ


こちらプランタン

フランス語でデパートのことをグラン・マガザン(grand magasin でっかい店)といいます。そもそもこの業態の発祥は、パリ左岸セーヴル通りに面して建つル・ボン・マルシェ(Le Bon Marché)でした。もともと庶民的だといわれていたル・ボン・マルシェは最近大改装をやってセレブ路線に切り替えた模様。2月に立ち寄ってけっこう上等なネクタイ1本買いました。今回は、この道を歩いてきたご縁もあるのでラファイエットGalerie Lafayette)にしてみよう。ここも何年か前に大改装が終了して、売り場もかなりすっきりした印象です。おすすめは別館のメゾン館(台所用品やサニタリーなどが充実している)と、本館1階のラファイエット・グルメ。グルメのほうは、紀ノ国屋的な高級食材店だと思えばよく、パリみやげの定番であるショコラとかフォアグラの缶詰なんかは品揃えがすばらしいので、1ヵ所でどかんと購入したい向きにはいいと思いますよ。また、肉・シーフード・惣菜・パンなどのショップにはイートインカウンターがついていて、手っ取り早く美味しいものを食べられます(いうほど安くはありません)。フランスはファストフード以外で「軽食」を食べさせるところが本当に少なく、ハイコストなのは別にしても1人でぱぱっと食事したい人があんがい苦労しますが、デパートやショッピングセンターのフードコートやイートインカウンター、カフェテリアなんかは手軽に使えますので、おみやげ購入のついでにセットなさってはいかがでしょうか。この日はまだ正午前でランチにはちょっと早く、メンズのところでネクタイ2本買っておしまい。

このすぐ西隣がプランタンAu Printemps)で、日本人にはこちらのほうがおなじみかもしれません。20122月に母と来たとき、ここでもネクタイ買いました。私が町歩きのおともに使っている折りたたみの地図は、常宿のレセプションに平積みになっているやつで、ラファイエットがスポンサーになったもの。だからプランタンについては建物の形状は載っているものの固有名詞がない(笑)。


 


さて、このままオスマン通りを西に進むと、国鉄サン・ラザール駅の南側を通って凱旋門に突き当たるわけですが、そのあたりは行ったことがあるので、ここでルート変更。凱旋門のすこし南に位置するイエナIéna)までメトロで移動して、そこからセーヌ右岸の高級住宅街などを歩いて見ようと思います。イエナの名は、エッフェル塔正面のセーヌ川に架かる橋にも冠されています。本来はヴァイマールの近くにあるドイツの都市名で、1806年、ナポレオン1世率いるフランス軍がプロイセン軍と激突して地滑り的な勝利を得たところ。いわゆる戦勝地名で、過去の栄光?を今に伝えているわけです。いったん壊滅したプロイセンがその後どうなっていくかについては2010年の「ドイツ二旅」にかなり詳しく書きましたのでどうぞ。パリのイエナはかなりの自動車が行き交う地区でした。


 ワシントン像

シャイヨー宮の裏手 

イエナ駅そばのロータリーにはなぜだかワシントンの騎馬像がありました。歩いている道路はプレジダン・ウィルソン通りAvenue Président Willson)だし、アメリカつながりですね。とくに見どころはないものの、マロニエの並木がいい日よけになって、散策にうってつけの絵になっています。日なたはちょっと暑いですけどね。緩やかな坂を登りきったところがトロカデロ広場Place du Trocadéro)。1年半前に母と来たときはかなり寒くて、そのへんのカフェでホットワイン飲んだんですよね。ちなみに、冬場のマロニエ並木はまたいい景観よ。

 
トロカデロ広場 フォッシュ将軍の像を右手に見てシャイヨー宮の切れ目に進むと・・・



エッフェル塔!


イエナ駅周辺は初めてでしたが、トロカデロ広場にはもう何度も来たことがあります。メトロのトロカデロ駅を降りて地上に上がったところにシャイヨー宮Palais de Chaillot)があります。1937年の万博会場として建てられたもので、現在は2つの博物館になっていますが行ったことない! それよりも、このシャイヨー宮は、シンメトリックな2つの建物のあいだに広がるステージがすばらしい。真正面に、どーんと、エッフェル塔La Tour Eiffel)が見えるわけです。私、そんなにミーハーではないと思うのだけど、エッフェル塔の姿というのがすごく好きで、滞在中に1回はこのトロカデロから眺めることにしています。モーパッサンじゃないけど、登ってしまえば塔自体は見えなくなるので、しょっちゅう来ているわりに展望台に登ったのは過去5回だけ(うち3回は付き合いで 笑)。


エッフェル塔2階展望台から見たシャイヨー宮(20122月)
左の写真は、2つの建物のあいだにあるステージから見た構図です

初めてパリに行くという人がいるなら、エッフェル塔との出会いはぜひこのトロカデロ駅→広場→シャイヨー宮のステージというコースを。ガイドブックに従えば最寄り駅であるRERのシャン・ド・マルス・トゥール・エッフェルかメトロのビラケムで降りて徒歩ということなのだけど、どちらにしても巨大な鉄塔を斜め下から見上げる感じになり、子どものころから写真で見ていたあの美しい姿ではありません。やっぱり真正面から、それも高さのあるステージから見た姿が最高です。5年前にゼミ生たちを案内したことがあるのですが、このコースで眼前に塔がどかんと現れたとき、日ごろは冷静沈着なサノ君が「やべー、やべー」と妙に興奮していたのを思い出します。この散歩の2日前の日曜日には、塔の反対側にあるシャン・ド・マルス公園でけっこうな時間うだうだして、存分に眺めておきました。


 写真撮りまくり(自分もか)

 
フランクリン像とフランクリン通り(下は西側から見た同通り)


実際にここからエッフェル塔に行こうという場合には、ステージ横にある階段を下りて噴水を通り過ぎ、イエナ橋を渡ります。塔の手前あたりでちゃっちい塔のおもちゃをぶら下げて「ワンニューロ、ワンニューロ(€1)」と声をかけてくるアフリカ系の兄ちゃんたち(たいてい集団)に出会うことが多い。おまわりさんが来るとウソみたいにすばやく霧散していくのがおもしろい。シャイヨー宮のステージから撮影する際の注意点としては、昼間はどうしても逆光になるので、晴れた日は露光を変えて何コマか撮っておいたほうがいいです。

さて、シャイヨー宮からのエッフェル塔は「いつものコース」なので、ここらで切り上げて右岸めぐりを再開しましょう。シャイヨー宮の少し先の茂みに青銅製の座像があるので近寄ってみたら、ベンジャミン・フランクリンでした。そこからパッシーPassy)方向に抜ける道路もベンジャミン・フランクリン通り(Rue Benjamin Frankrin)。パリの道路名を示す標識は、最近つくりなおされているようで、人名の場合には生没年と何者かが記載されるようになりました。フランクリンは「アメリカの物理学者にして政治家」だそうですが、これほどの超有名人でなくても記載があれば勉強になるし、とくに子どもたちが歴史や文化に関心をもつきっかけになりますよね。なぜフランクリン像がここにあるのかはわからないままでしたがさっきのワシントンとつながりがあるのかな? 日本人に最もよく知られた話は凧を揚げて避雷針の原理を発見したというエピソードでしょうけど、1776年の独立宣言の起草にかかわったあとパリに渡って13州の正統性を主張し、フランスが独立戦争を支援するよう外交交渉を担ったのが彼でした。パリはフランクリンが最も活躍した場所でもあったのです。歴史というか思想史のおもしろいところで、フランスの啓蒙思想に影響を受けたフランクリンがフランスを動かし、まさにその啓蒙思想を建国の原理に採用したアメリカを誕生させるわけですが、これを支援したフランスとルイ16世はそのしっぺ返し(財政破綻と、啓蒙を突きつめれば国家原理の刷新に立ち至るのだということの実証)を食らって、10年後に大革命の嵐に巻き込まれることになったわけです。



(上)コスタリカ広場 (下)広場西側のアパート街


緩い下り坂のフランクリン通りをゆっくり歩いていくと、お花のロータリーに出ました。冬にばかり訪れているとこういうあざやかな色彩にはなかなか出会えません。花の都っていうくらいだからお花が咲いている時季に来るのが正解。標識によればここはコスタリカ広場Place du Costa Rica)。上品な住宅街として知られるパッシーの中心のようです。とくに観光地でもないし自分の動線にも引っかからないので、地図上ではよく知っているのだけど、歩くのは初めてです。


昼ごはんにするか


ロータリーに面して飲食店もいくつかあり、イタリア料理屋さんがとくに賑わっているようだけど、パリでイタめしというのもなあ(例外はあるのだけど、フランス人はパスタを茹ですぎる傾向があります)。その名もル・フランクリン(Le Franklin)というブラッスリーが見えたので、ここでランチにしよう。


 
アンドゥイエット€13.80、生ビール€4.90、食後のカフェ€2.50で〆て€21.20 昼間からけっこうガチで食べた感じね(笑)


広場に面したブラッスリーだからカジュアルなんかいなと思って入ってみたら、カジュアルには違いないけど思いのほか上品でしっとりしたお店。店員さんたちの物腰も非常にスマートです。場所柄なのかそういう設定なのかははっきりしません。お客がみんな中産階級以上の感じです。右隣に座ったアフリカ系のカッコいいおねえさんはスマホを終始いじりながら250gくらいありそうなタルタルステーキ(牛の生肉をたたいてコショウやオリーブオイルなどで和えたもの)をばくばく召し上がっていました。肉食女子やね(ちがうか)。当方はアンドゥイエット(andouilette)。ブタの臓物各種を詰め込んだソーセージを焼いたもので、フランス人にとっては忘れえぬ味なんだそうです。最近、日本人の職人がこれのチャンピオンになったという記事を読みましたが、大方の日本人にとってはニオイと味がなじめないでしょうね。私もそんなに好きなほうではないのだけど、まあフランスらしいものをということで、はい。



メトロ6号線パッシー駅


食後のエスプレッソまで飲んで小一時間ほどゆっくりしました。土曜の夜にパリに着いてから肉ばかり食べていますが、とくに反省はございません(笑)。春先に主治医に脅されてから高カロリー食をかなり削って、血圧の面でも効果が出ているところだけど、こっちにいるあいだくらいは肉食おうぜ。

さてコスタリカ広場から1ブロックほどセーヌ川方向に進むと、足許はトンネルの出口になっていて、メトロ6号線の複線の線路がまっすぐに伸びているのが見えます。さっき食事したあたりが崖上で、メトロはその地下を走り、川っぷちで崖を抜け出すとそのままかなりの高さでセーヌ川の橋梁をめざす、というわけです。トンネルを出た直後(入る直前)にパッシー駅があります。コスタリカ広場からここに来るには、当然ながら斜面を下って、さらに階段を下りなければなりません。凱旋門とエッフェル塔を最短距離でむすぶ6号線は何度も利用しており、この地上駅のことも印象にはありましたが、地上を歩いてみて地形の感じがよくわかりました。崖と地上駅といえば東京メトロ丸の内線を思い出します。御茶ノ水付近でとつぜん表に出て神田川を渡り越すところとか、文京区内の後楽園〜茗荷谷付近でさほどアップダウンがないはずなのに地形の関係で何度も地上を走るところとか。


パッシー駅(写真奥のほう)を出てビラケム橋にさしかかったメトロ車両

3へつづく

 

この作品(文と写真)の著作権は 古賀 に帰属します。