Visiter et voir les villes suisses

 

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ベルン(独 Bern)/ベルヌ(仏 Berne)/ベルナ(伊 ロマンシュ Berna
  スイス連邦                                                                   

 

ベルン駅に戻ってきて、1階のツーリスト・インフォメーションに立ち寄りました。明日の朝にはここを出発してしまうのですが、スイス・パスについていた、例の150周年記念クーポンで記念品をゲットしよう。ここのはシティ・マップと特製ビスケット。クーポンを見せたらやはりすぐに了解してくれて、品をもらえました。シティ・マップは折りたたみ式の立派なもので、最初に受け取っておくべきだったかもしれない。この手のものは無料の場合といくらか取られる場合があり、おまけとして提供するくらいだからベルンのは本来有料なのかな? ビスケットというのは謎でしたが、箱入りとか半ダースとかいうのではなく、袋入りの「1枚」が差し出されました。いさぎよい(笑)。結局このクーポンの利用はバーゼルとベルンの2回で終わりました。もともとおまけなので、機会ゼロでも惜しくはありません。ベルンは、こと旧市街に関しては、湾曲したアーレ川に囲まれた非常に狭いエリアなので、地図があろうとなかろうと方向を誤ることはまずありますまい。


駅からホテルに戻る途中に、前夜レシュティを食べたベーレン広場を通ります。土曜だからかいつもなのか、各種の屋台が出て盛大な青空市が開かれていました。にぎやかなことこの上ありません。もとより両サイドは飲食店なので、路上に張り出したテラス席はほぼお客で埋まっています。

 
 
にぎわうベーレン広場


いったんホテルの部屋に戻って小休止。ビスケットはいたって普通の味でした。どうもスイスは交通の便がよすぎて、予定(予想)を上回るペースで旅程が進んでしまいます。パリからバーゼルへの飛行機が大幅に遅れたロスがなければさらに満喫できていたことでしょう。ベルン旧市街のだいたいのところはけさ見たので、積み残した大聖堂周辺を歩いて、首都編を締めるとしましょうか。18時前に再始動。まだまだ2時間くらい「昼」がつづくので、夏の旅行はいいですね。

 夕方のベルン中心部


とくに何をしようという当てもないまま町に出て、裏道を通って駅へ行って、そこからトラムで再び市街地へ引き返します。どの区画に行っても例のアーケードがデフォルトになっているのがすごい。朝は主にメインストリートとその北側のブロックをうろうろしたのですが、今度は南側、連邦議会議事堂につらなるブロックを歩きます。大きくないカジノの建物があり、その先に大聖堂Münster)が見えました。開館時間は終わってしまっていて入れませんでしたが、ここは1421年に着工され1893年に完成したといういわくつきの建物。欧州ではしばしばこの類の話を聞きますので、サグラダ・ファミリアなんて別に異例でもなさそうです。いろいろな歴史を見てきたんだろうなあという感じ。

 
ベルンの大聖堂


大聖堂前の広場には複数の屋台が出て、ソーセージとかビールを販売しています。その先に進むと、さほど広くない公園があり、バーベキュー施設や児童用の遊具などもあって、多くの人たちが憩っていました。この公園、アーレ川の河岸に面していて、展望台のようになっています。ただいわゆる展望「台」ではないので、展望できるポイントが線的に長く、ありがたいですね。アーチ型のキルヒェンフェルト橋(Kirchenfeldbrücke)が見えます。川面からの高さで、ベルン市街地の相対的な位置をあらためて知ることができます。キルヒェンフェルト橋は、けさ歩いて渡ってトラムで戻ったコルンハウス橋の道筋の延長線上にあり、旧市街の「半島」の根元を横切るような位置関係。橋上をトラムの車両が往来するのもコルンハウス橋と同じです。


 


この公園は河岸に面していると書きましたが、真下まで川面が来ているわけではなく、川面レベルにも住宅などが建ち込んでいました。ここにも「下の世界」があるんですね。キルヒェンフェルト橋からこの公園の下にかけて、水量を調節するらしい大がかりな仕掛けがあります。それにしてもかなりの水量。アルプスの雪解けを迎えるころになれば相当な水が流れ下るだろうから、運搬だの浸食だのといった地形学的な作用はいまも大いに進行中なのでしょう。不肖わたくし、絵に描いたような文系の人間ながら、入学した学科の関係で自然地理学もそれなりにかじっており、スイスみたいな立体的な環境を見るとセンサーが少しだけ反応します。そういえば19912月に初めて欧州に来たとき、スイスとは山をはさんだ反対側、フランス領のシャモニー・モンブランに泊まったことがあります。そこへ向かう列車の窓から褶曲した地層を見て、アルプス造山帯の実在を体感して妙に喜んだものです(謎)。

ベルンは思った以上にいいところなので、いまみたいによい季節なら少々長めに滞在してもいいかもしれませんね。展望台公園から対岸(アーレ川の右岸側)を眺めると、ほぼ全面を緑に包まれた、酸素の美味しそうな景観です。この3年ほどのあいだに、パリのほかロンドン、ダブリン、ベルリン、プラハ、ウィーン、リスボンといった各国の首都を訪れていますけれど、スイスの首都は、何やら系列が違うとしかいいようのない場所。山の中に歴史的景観だけをぎゅっと凝縮させたような町といえます。今回は最大の都市であるチューリヒをスルーしてしまうので、そのうち訪れよう。ていうか、欧州各地をうろうろしていればきっと立ち寄ることがあるよね。

 
「アインシュタイン」という店名のカフェ 彼が相対性理論を生み出したのはここベルンでの研究の成果でした


これでだいたいベルンの主だったところは歩き終えました。アーレ川の対岸が不十分ですし、ゆっくり町を観察するにはもう少し時間が必要ですけれども、まあ初回としては上々。あとは宿に戻りがてら夕食の場所を探そう。実はホテル・クロイツの0階にあるカフェ兼レストランをさきほど外からのぞいて、掲出されているメニューともどもなかなかだったので、町なかで候補を見つけられなかったらそこで食事しようかなと考えています。「ホテル内」食堂だったら敬遠するのだけど、場所が市内で最もにぎやかなところの角地なので、宿泊していなくてもそこにふらっと入りそうな感じだったのです。

 


勝手知った感じで20分くらい町をぶらぶら。なかなか日が傾かないので終了ボタンを押すタイミングが計れません(汗)。とくに惹かれるような飲食店もないので、予定どおり?ホテル0階のレストラン“Bärenhöfli”に入店。窓際のテーブルに案内されました。19時半になっているのですが、食事の人が半分、飲み物系が半分で、席がぼちぼち埋まりはじめているといったところ。若い女性の店員さんが、何語にしますと問わずに英語のメニューをもってきます。入店のときone personと告げたからかどうか、まあこちらの飲食店では英語版は絶対に要るよね。

さほど場数を踏んだわけではないので断言してはいけないのですが、ドイツ語圏のメニューって、散文的で説明的な品名を並べてあることが多いですね。フランスみたいに「牛肉の○○風」(○○は地名の形容詞形)などと実は何も説明していないような品名も困りますが、散文的だとぱっと見て直感的にわかりにくい面はあります。まあそれでもじっくり検討。やっぱり肉料理かな。ということで、Breaded escalope of pork (CH) with French fries and seasonal vegetable18.00CHF也を注文。最初の過去分詞が何だったかなと思いつかないままだけど、外国の飲食店では素材がわかればあとはテキトーでいいことに決めています。お飲み物はと定番の問いに、ドラフト・ビアと答えると、「大きいのにしますか? 小さいの?」とのお訊ね。もちろんLarge one。おねえさんは「けっこうラージですけどよろしいですか?」って、自分で訊ねておいておい(笑)。No problem, large one, please(^ ^).

 
 コースターはベルンのシンボル、クマちゃんでした


ほどなくビールが運ばれました。なるほど大ジョッキやな。よく冷えていてラガーっぽいけど、後味がビターっぽくもあります。あ〜この瞬間のために生きているんだよなあ、てなオヤジ式のコメントは泡と一緒に飲み込んじゃえ。隣のテーブルはガタイのよい中年のおっちゃんと、スマートな若い兄さんという不思議な二人連れ。マッチョなおっちゃんのほうが、どんぶりに入ったおちゃめなサラダをぱくぱく食べているのが妙にカワイイ。しかも飲み物はコーラです。兄さんのほうは料理を注文せずグラスのビールを静かに飲んでいます。

当方の料理が運ばれてきました。あー、スイス産ポークの薄切りの何ちゃらって、シュニッツェルのことだったのか。1年前のウィーンで食べたなあ。そうか、breadedはブレッドの過去分詞だから「パン粉をまぶした」って意味なんだね。日本のとんかつと違って、油で揚げるのではなくフライパンで焼いてからオーヴンで火を通したものに違いありません。ウィーンで食べたシュニッツェルは仔牛肉でしたがこれは豚肉なので、味わいはとんかつ寄り。複数の種類のハーブが載っていて、おそらく一緒にオーヴンで焼かれ、風味をつけたものなのでしょう。これがいいアクセントになっています。フレンチ・フライはともかく「季節の野菜」というのは、ニンジンとブロッコリーのことか?(笑) 料理が18.00CHF、ビールは7.00CHF、食後のエスプレッソが3.90CHFで、トータル28.90GHF。身構えるほど高くはないですね。それはいいのだけど、あと少しで肉を食べ終えようかというときに奥歯の痛みが再発し、脳天にまで達して、いっときぼーっとしてしまいました。23分で収まったのでどうにか残りを食べ終えます。いつ発症するかとびくびくしながら食べていて、それでやっぱり起きてしまうのはショック。どうすることもできないので、被害が最小限にとどまるように祈りつつ旅をつづけるしかありません。


駅につづくノイエン通り  ここにもお花とアーケード


8
31日(日)は、10時台の列車で出発することにしているので、朝は少しだけゆっくりできます。朝食をとって945分ころチェックアウト。これまで宿と駅のあいだはメインストリートを経由していたのですが、ショートカットするノイエン通り(Neuengasse)があることはわかっていたので、最後にこの道を通りましょうか。オフィス街のようで、日曜の朝は本当に静かです。今日は、オルテン(Olten)を1130分に発車する列車でルガーノに向かうことに決めています。ベルンからの直行がないのでオルテン乗り換えなのですが、オルテンはバーゼルからベルンまでの移動で通ったところ。つまりいったん北東方向に進むことになります。ベルン→オルテンは大幹線なので時刻表不要の区間ながら、『ヨーロッパ鉄道時刻表』でいちおう調べて、1036分の列車かなとめぼしをつけておきました。こういう場合は、ネットのタイムテーブル検索(SBBDBなど各国の鉄道会社のサイトには必ずついている)とか、駅で無料配布しているような区間別の時刻表よりも、『ヨーロッパ』のような総合時刻表がいい。というのは、乗り換えを含むときに区間別だと役に立たないし、ネット検索は「最適解」を出してくれるものの、トータルの所要時間を最小化する傾向にあるため、今回でいえばベルン→オルテン間の他の選択肢がわからないのです(わからないことはないが、面倒)。とはいえ、そういう感覚で時刻表を繰るのは、紙の時刻表で育った世代まででしょうね。IT化はアナログのほうが勝っている部分をも捨象していく傾向にあります。

ベルン駅に着いたのが955分。1本くらい早いのに乗れそうかもと思ってホームに行ってみたら、2本早い1004分発がまさに発車しようとしているところでした。乗っちゃえ乗っちゃえ。これはバーゼル行きのIC、つまりバーゼルから乗ってきたやつの逆向きね。車内はほぼ満席で、老若男女さまざまな客層が乗り合わせています。空席を見つけて座りました。ICは高規格線を快走して1030分にオルテン着。いかにも途中駅ですが、ホームも3面あって「交通の要衝」感がわかりますね。ここから西へ進めば、ソロトゥルン、ヌーシャテルなど北西部の主要都市。東へ行くとチューリヒ。私がこれから乗る列車は南に向かい、まずルツェルンをめざします。4方向に分岐するジャンクションになっているのですね。

 
 
オルテン駅


予定より早い列車で来たので1時間ほど余裕があります。ただ『ヨーロッパ』で便を確認しただけで座席指定をとったわけでもないので、念のため確認しておこう。この駅のチケット・オフィスは駅舎ではなく真ん中のホーム上にありました。あとで観察したところでは、住宅地と川にはさまれた狭い場所に駅があり、大きな駅舎を建てられそうにないので、このような構造になっているのでしょう。こちらの駅には改札がないので、切符を買う人はまっすぐホームに来ればいいということね。そのあと階段を下りて別のホームに移動するのも面倒ですが。窓口のおねえさんに、これからルガーノに向かいたいのですがと、スイス・パスを示しつつ訊ねてみました。「ダイレクト(直行)がよろしいですか? 乗り換えならば少し早く着けますが」と。それはうかつにも気づかなかったけれど、予定どおり1130分の直行でいいや。ダイレクトをというと、その便のタイムテーブルをチケットサイズの紙にプリントアウトし、「発車は向かい側のホームです」と丁寧に案内してくれました。あとで確認したら、1049分発のIR(地域急行)に乗れば1130分にルツェルン着、ルツェルン1140分発のフォアアルペン・エクスプレス(Voralpen-Express)で1211分にアルト・ゴルダウ着、そこを1217分発でルガーノに1424分着という行程になるようです。2回乗り換えで、時間的余裕もほとんどないのに、ルガーノ到着が23分早くなるだけなので、直行便で正解だったように思います。いろいろな列車に乗りたいというなら話は別ですし、フォアアルペン・エクスプレスはルツェルン湖とボーデン湖をむすぶ観光列車なので30分だけでも乗りたいという人は、なくはないことでしょう。でも、往年の乗りテツもキャリーバッグを引きずって何度も階段を上り下りしたくないし、さっきからまたしても奥歯が痛んでいるしで、ラクなほうにしてしまいました。

直行便を選んだためルガーノ着が1447分になります。ランチというほどでなくても、何か入れておいたほうがいいかな。駅ナカの小さな食品スーパーやキヨスクをのぞいたものの、ぱっとしたものがなく、乗り換え通路内にひっそりと営業していたケバブ屋さんで、ケバブならぬホットドッグを注文。15.50CHFで、コーヒーは2.50CHF。イートインもあったのですが、通路の先に外界とつながるデッキのような場所があり、川に面していたので、そこのベンチに持ち出しました。ビアガーデンふうのテラスがあるものの営業の気配はなし。ホットドッグをできるかぎり小さく切り取って、口内の右半分でどうにか咀嚼するというトリッキーなことをするわけですが、いまは最悪のタイミングらしく、口を動かすたびに激痛が走ります。最後までまともに噛むことができません。平気なときは何もなく食べられるのに、なぜ・・・(涙)。期待していなかったのにホットコーヒーが普通に美味しかったので救われました。


駅構内から見たオルテン市街

 

PART9 につづく

 

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