古賀毅の講義サポート 2020-2021

Étude fondamentale sur l’éducation -1

教育基礎総論1(中・高)C


早稲田大学教育学部教職課程 (全学部対象)
金曜 5限(16:30-18:00)  早稲田キャンパス 号館 教室  *本年度は全編Waseda Moodleを用いたオンライン授業です 

 

 

 

 

 

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2020(令和2)年度 教職科目における指導・評定指針

 

<オンライン授業配信予定>
6
26日 日本教育史(1):近世〜明治期の教育 pp.38-41, 70-71
7
3日 日本教育史(2):大正期〜占領期の教育 p.42
7
10日 日本教育史(3):高度成長期以降の教育 pp.42-45
7
17日 岐路に立つ現代教育:1990年代以降の展望
7
24日 高等教育の歴史的展望
7
31日 教員養成の歴史的展望


 

■■次回は・・・
8-
日本教育史(2):大正期〜占領期の教育

前回取り上げた明治期の教育を見て、「いま自分たちがよく知る教育の姿だ」と思ったでしょうか。それとも、「ずいぶん違っていて、なかなか身近に思えないな」と思ったでしょうか。江戸時代以前のことを思えば、たしかに明治以降は地続きなのですが、制度面でも内容面でも現在と異なる部分が多すぎて、「同じもの」とは思えないのも無理からぬことです。欧米諸国に少し遅れて近代化への道に踏み出した日本の公教育は、その誕生から70年ほどでいったんリセットされました。いうまでもなく、第二次世界大戦の敗戦を受けてのことです。敗戦に際して日本が受諾したポツダム宣言には、日本社会の徹底的な民主化についての指示が記されていました。教育改革を具体的に指示する部分はないのですが、社会の民主化にとってそれが不可欠であることはいうまでもありません。このときの大きな改革が、まさに現在の教育の枠組をかたちづくるものでした。

7回の内容に沿っていうならば、教育勅語とそれが規定していた教育内容、複線型の学校制度の両方が、このとき全面的に改められました。「改められました」と受身形で書いているのは、文系の一般的な作法(動作の主体を捨象する)ではあるのですが、「外部の力によって」というニュアンスを含むためでもあります。ポツダム宣言には、改革を見届けるまで連合国軍が駐留して、その監視の下で日本側が改革を進めることが明記されていました。猶予やサボタージュもほぼ許されません。そのため、玉虫色にぼやかすとか、実行を遅らせるということもなく、かなりスピーディーかつ大胆に、ドラスティックな改革がおこなわれることになります。占領下だったから仕方なく改革した部分もあるけれど、敗戦・占領という事態をテコにしてむしろ思い切った制度の再設計を果たすことができたのだという見方もできます。もちろん、日本国憲法に対するネガティブな評価(「押しつけ憲法」論など)があるのと同様に、外国に強制されてできたものは内容の是非というよりその経緯自体がイヤだ、という人がいるのも確かです。そして、憲法9条で戦力不保持と明記しながら、数年後には実質的な再軍備に向かったのと同じように、占領期の改革の成果が微妙に、あるいは大きく変更されていく経過もみることができます。占領期の改革をどう評価するかは、そのまま現在の政治的なスタンスを表すものにもなりえます。

そうはいっても、敗戦から今夏で75年。当時を直接知る人もずいぶん少なくなりました。この時期に再設計された教育が現在と直接つながっているとはいっても、かなり遠い時代のことになってしまっているわけです。制度や事象の性質(もちろん長所や短所も)を知るためには、その来歴、生い立ち、生育環境をみる作業が不可欠です。「こういう制度ができました」ではなく、「どんな背景で、何をねらって」その制度ができたのかというところを重視しながら、占領期の教育改革の全容をみていこうと思います。

 

2020年度 教育基礎総論1(中・高)Cの進め方・学び方 4/5

早稲田大学では感染予防などのため、2020年度春学期の授業をオンラインで実施することになりました。
当科目は1年生が主たる対象であり、大学生になって早々に通学して通常の授業を受講することができなくなって心中穏やかではないと思いますが、社会人そして教育者をめざすうえで貴重な経験を得られると考えて(こういうことを申すのはあまり好きではないのですが)、イレギュラーなかたちではありますが、大学生としての学びをスタートさせてください。当科目の授業本編でも扱いますが、教室に教師がいて「生徒たち」に語りかけるという授業のスタイル(一斉式授業、一斉教授法などといいます。第2回で取り上げます)は、もう200年ちかくつづいてきたものですが、このところのメディアやツールの発達、コミュニケーション・プロセスの変化に伴い、実は存在意義がきびしく問われるものになっています。近未来の学校教育がどのようなスタイルになるのか、まだ不透明ですが、今回のオンライン化も、それを考えるきっかけにしてほしいと思います。「当たり前だと思っていたものが、実は相対的なものにすぎないのだ」という、文系の学びにおいて必須の考え方につながります。

当科目は、みなさんが教員免許を取得して携わろうとしている公教育public education ≒いま私たちがよく知っている学校教育)とは何であり、どうあるのか、そして中でも中等教育secondary education ティーンエイジャーを主対象とする教育段階。現在の日本では中学校・高等学校に相当する)はどのような特色をもち、どうあるのか、どうなっていくべきかというところを主題とします。誰もが生徒としてそこを経てきていますので、それを対象化して考えるというのは思いのほか難しい作業であり、それを対面せずオンライン上でどこまで思考・理解していただけるか不安もありますが、通常は控えている「はみ出し」(授業時間90分を超える部分)がかなり許されると思いますので、この機会に新しい授業スタイルの「実験」に取り組んでみようと思います。みなさんもそのつもりでいてください。

授業は、次のように進めます。

本年度スタートしたばかりの新しいLMSWaseda Moodleを利用します。
515日を初回として、毎週金曜の朝に、授業動画を配信します。
毎回の授業に対し、フォーラム(ディスカッション)のコーナーを設けますので、意見、質問、コメント、深めたいところなどを自由に書き込んでください。
毎回の授業に対し、ミニ・レポートを課します。翌週までに必ず提出してください。これらの成果と、期末の課題によって成績を評定します。
次回授業の予告は、Waseda Moodleではなく、このサポートページに掲出します。また、フォーラムやミニ・レポートを通して私が考えたことや、みなさんに考えてほしいことなどもこのページに記します。これは、受講生以外の方(とくに学外から古賀の授業内容に注目してくださっている関係者の方々)にも内容や成果を共有していただきたいためです。複数箇所の閲覧は面倒ですが、授業や課題に取り組むに際して、このサポートページを必ず閲覧するようにしてください。
状況の推移によっては、授業や評価の方法を途中で変更せざるをえない場合があります。あらかじめご了解ください。

テキスト(教科書)として次のものを指定します。必ず購入してください。

古賀 編著『教育原理』(学文社、2020年 2100円+税ですが生協では組合員割引があります ISBN:9784762029707
*大学生協ブックセンター扱い

本来であれば、本書の第1章にあたる部分を最初の3回で扱い、「教育について考える」という構えをある程度心得たうえで、GW明けから歴史・思想編に入るという段取りなのですが、本年度は授業日程が短縮され、3回分が削られますので、イントロダクションの部分はみなさんの自習にゆだねます。本書第1章を読んで主体的に思考するというのが、授業第1回の課題になります。幸いにも開講までまだ時間がありますので、いまのうちに第1章をお読みください。フォーラムはすでに書き込み可能なように設定しています。

 



開講にあたって

教育基礎総論は、教職課程の入門的科目として、教育の理念・思想・歴史・制度や学校教育およびその周辺のアウトラインを広い視野から学び、教育のプロをめざす上での専門性(教職専門性)の基礎を養うことをねらいとしています。早稲田大学の教職課程で取得できる免許状にはさまざまな学校種(小・中・高)や教科が含まれますが、その違いにかかわらず共通して基盤とすべきものといえます。受講生の多くは12年生で、教職課程はもちろん専門分野についても初歩的な段階にあると思われますので、プロをめざすのだという前提に立ちながら、個別・具体的な知識やスキルの習得よりも、教育・学校・青少年・教員といった事象を見つめる視点・視角やアプローチの手法を学ぶことを優先したいと思います。教育は、誰もが主観的には(児童・生徒として)経験しています。そのため、何となくわかった気になっていたり、メディア等で報じられることをそのまま受け取ったりする弊を招きやすい分野でもあります。職業としての教員は、職業的な専門性というものを当然もたなければなりませんので、当科目あるいは他の教職科目の学習を通して、広く深い知見をも身につけられるよう期待しています。

この教育基礎総論1では教育の歴史・思想・理念などを中心に扱うことになります。教育に興味がある、教員になりたいという人の場合、その関心の大半は現代の学校教育、たとえば学力の問題、いじめや学級崩壊、少年犯罪、ブラック校則といった社会的現象として報じられる部分や、各自が児童・生徒として経験した学校や教員の問題(不満や批判を含む)にあるのではないかと思います。そうした観点からみますと、当科目で扱う教育の歴史・思想・理念といったものは、これまで最も視野に入りにくかったのではないでしょうか。「21世紀の日本の教員になるのに、どうして18世紀の西欧の思想家について勉強しなくてはいけないのか」という不満を感じ、モチベーションを得られないという人もいることでしょう。しかし、教員養成(未来の教員を育成するプロセス)のしくみがどう変化しようと、当科目のような学習が基礎にあるという点は不変なのです。歴史・思想・理念を探究する学習活動は、社会と人間と教育がどのようなかたちで相互にかかわり合っているのか(つまり教育は何のために存在するのか)、あるいは私たちが学校教育と呼んでいるものの原理・本質はどこにあるのか、といったきわめて大事なことを知るにつながります。目先の技術や教育内容を学ぶだけでは、10年どころか5年ほどの変化にすら対応できないことでしょう。また、教育分野にかぎらず原理や本質を深めようとせず、表面や上っ面を要領よくまとめて点数を稼ぐという方法で学ぶクセ(悪癖)がついてしまうと、それは教員としての教え方にそのまま反映されてしまいます。次世代にツケを回してよいはずはありません。

さいきん気になっているのは、学部学科を問わず、少なからぬ大学生が歴史や外国事情、概念、思想など直接経験しにくいものを苦手としていることです。教育にかぎらず、大学生が真に学ぶべきは、すぐに役立ちそうなものではなく、物事の土台(コンピュータでいうOS)となる部分であり、歴史とか思想といったものもその重要な一部をなします。高校までの歴史学習がどれほどの水準であったかは知りませんが、どうであっても、いま大学生としての学びを見つめなおし、大いに取り組んでください。その学びこそが、教壇に立ったときの基準になるからです。私たち教育者は、自分が学んだようにしか教えられないという宿命を負っています。自身の学びが単語の丸暗記ならそのような教え方になりますし、自身がネットをパクるやりかたなら生徒にもそれが伝播します。教職科目への取り組みの甘さがプロとしての欠陥の原因にならぬよう、心して臨んでください。

当科目では教科書を指定しませんが、参考書として次のものを挙げておきます。*オンライン授業実施に伴い正規の教科書扱いに切り替えます。全員入手してお読みください。
当科目のメインとなる部分について、古賀のことばで平易に記述してあります。
古賀毅編著『教育原理』(学文社、2020年)
また教育・教職関係のテキストは多数出ていますので、書店で手にとって、数冊を購入しておくとよいでしょう。

 

当科目の評定方針

前期末の試験および自習課題(中間レポート)により評定する予定です。自習課題を期日までに提出しない場合には期末試験の受験資格を失います。
出席点はいっさいありません。


 

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