2024(令和6)年度 教職科目における指導・評定指針

教育職員免許法等の法令に定められた教職に関する科目(以下、教職科目)は、専門職(プロ)として児童・生徒の指導にあたる人物の職業的な能力・資質を全国的に保障するものとして設定されています。次代の人間を育て、それを通して次代の社会の形成に寄与する教員の職務・責務はきわめて重大です。また近年、学校教育に対する社会の疑念や不信が高まっており、教員の資質が厳しく問われる事態になりつつあります。こうした前提を踏まえ、私の担当する教職科目では、学習指導および評定(期末の成績算定・単位認定)に関して以下のような指針を設け、開講時に明示することにします。
20244 古賀 毅)


<教諭免許状の取得へ向けての各段階での指導方針>
12年生には、主に「教員という専門的職業」がどういうものであり、そこへいたるために何を身につけておかなければならないかを自覚できるような内容を指導する。
34年生には、それまでの学習経験を踏まえ、より専門的・実践的・応用的な知識・スキルの習得ができるよう指導・支援する。
原理系科目(教職概論、教育原理、教育課程論、教育基礎総論1)においては、教育に関する基礎的知識と、それを踏まえた「教育に対する専門・職業的な見方」の習得を促す。
実践系科目(介護体験入門、教育の方法・技術とICT、総合的な学習(探究)の時間の理論と実践、道徳教育の理論と実践、教育実習事前事後指導、教育実習AB、教職実践演習、社会科教育法4)では、学習指導(授業)の計画と実践にかかわるスキルと、それを支える理論の習得を促す。

<受講生各自の進路観・教員観とのかかわり>
いわゆるペーパー・ライセンス(教諭免許状を取得するが教員にはならない)志望の学生を排除しない。学校教育に理解のある人が社会の各所に増えるのだから、むしろ歓迎である。ただし、ペーパーであるか否かにかかわらず教諭免許状の本質は変わらないし、教育実習で児童・生徒の発達や人間形成という重大な事柄に関与することに違いはないので、各自の目標設定によって指導方針や評定方針を変えることはしない。
教員の養成・採用・研修の一体化改革(2016年一括法改正)、教員免許更新制の廃止(2022年)、教員の働き方改革、教員採用選考の早期化など、学校教育と教員の身分・職責に関してこのところ大きな制度変更がおこなわれている。また教職大学院の開設(2008年度)に伴い、より専門的で高度な教員へのプロセスも想定されることになった。教員養成のしくみはいま大きな変革のさなかにある。教職科目でもそうした最新動向は紹介していくが、こうした過渡期にあっては各自が注意しておくべきである。また、「先輩」の助言が必ずしも適切でない局面も増えると心得ておくべきである。*20244月現在
スポーツ系などの指導者になることに主眼を置いて教諭免許状の取得をめざす学生が一定の割合で存在する。すばらしい目標であり最後まで追求してほしいが、そのことをもって教員としての一般的な知識・スキル等の減免や教職科目の軽視が認められないのはいうまでもない。教員のメインの仕事は、正規の教育課程における児童・生徒の指導にあり、部活動の指導はあくまでオプション(付帯事項)である。
上記に関連して、当科目おいては、取得する免許の教科を問わず、教員をめざす大学生としてふさわしい知識・スキルが身についているかどうかをそれぞれの段階において評定し、他の学生とのあいだに二重の基準は設けない。

<3年生および4年生以上への注意>
教職科目の評定結果によっては、次年度の教育実習や教員への就職に関する内定を取り消さなければならない事態が生じる(一般に、教職科目は卒業単位には影響しない)。そうした事態は、内定先はもちろんであるが、家族や大学の後輩などにも迷惑をかけることである。自分の怠業(なまけ)や不注意によってそうした事態を招かないよう、12年生以上に注意すること。上記のような事態が現に生じるとすれば、それは第一に自分自身の責任からであると心得ること。

<配付物>
授業時に配付した教材等は、1回ごとに破棄してストックしない。欠席した場合にはクラスメイトに複写を依頼するなどして各自で対応すること。

<教職科目の受講態度>
教員という職務の性質にかんがみ、何より誠実で勤勉であることが望まれる(ユーモアやゆとりを排除するものではない)。
大学の授業にふさわしい服装で受講すること。だらしない服装、過度の露出、華美なアクセサリーなどは不適当である。また、教室内での帽子、マフラー、コート類の着用は非常識である(社会通念と「若者の常識」はかなり相違すると考えてほしい)。
教場への飲食物の持ち込みはしないこと。
教場での携帯メディアの取扱いには十分注意すること。音を発生させたり外部と通信したりするような行為は慎むこと。
無断退出は認めない。ときに厳正に対処することがある。
オンライン授業においては、通常の授業以上に自律と主体性が求められることを心してほしい。

<レポート作成>
出題時の指示に従って作成し、提出期限を厳守すること。教職科目においては、提出期限を厳格に適用することとする。
ウェブサイト等からの無断引用は、マナー違反ではなく法律違反であり、社会人として不適切であるし、教員をめざす資格を自ら放棄するような行為である。厳に慎むこと。
同僚との共同制作は、教員が指示した場合をのぞいて当然禁止である。実質的に同一内容であることが判明した場合には、科目全体を0点とすることがある。
レポート等の課題に関して、インターネット上の情報や他の提出物とのあいだの文字列の類似を検出するソフトを使用することがある。
SNS等を通じて受講生同士がレポート等の一部ないし全部を共有することを禁止する。この事態を検出した場合には、いずれがオリジナルであるかを問わず、関係した学生すべてについて科目全体を0点とすることがある。当該年度以前の受講生との共有も同様の処置をとる。
課題の作成等に際しての生成系AIの使用に関しては、科目ごとまたは課題ごとにその範囲を指示する。

<試験>
試験は設置箇所(大学・学部)の要領にのっとって実施する。
あらゆる不正行為は認められない。大学の規定に従って処罰される。なお、教員を志望する者が不正をおこなうことなど本来的にあってはならないと心得るべきである。

<授業の出欠、および公欠の取扱い>
教職科目においては、原則的に出欠を評価対象としない(複数教員共同で担当する科目をのぞく)。
上記の原則のため、学校行事、授業関連行事、試合等に際してのいわゆる公欠届は無用である。

以上