古賀毅の講義サポート2025-2026

Méthodes et TIC pour l’enseignement

教育の方法・技術とICT


千葉工業大学工学部・創造工学部・情報科学部・社会システム科学部 教職課程
前期 火曜910限(17:00-19:00) 津田沼キャンパス 6号館 612教室


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2025(令和7)年度 教職科目における指導・評定方針

 

202546月の授業予定
4
8日 開講にあたって/教育の方法・技術とICTを学ぶ
4
15日 主体的・対話的で深い学びと授業観の転換
4
22日 目的・目標に沿った教育方法の選択
5
13日 発問・板書・教材作成
5
20日 授業の構想と学習指導案の作成(1) 
5
27日 授業の構想と学習指導案の作成(2) 
63日 ICTの導入・利活用と課題

 

 


次回は・・・
5
6- 授業の構想と学習指導案の作成

いよいよ授業をどのように組み立てるか、どのように準備するかという部分を扱います。受ける側としてはあまりになじみ深い授業も、それを実践する側になってみようとすると、何をどうはじめればよいのか見当もつかないということがあるかもしれません。すでに教科教育法で、それぞれの教科の趣旨や内容に即したかたちで授業づくりの指導を受けているものと思います。今回は、それらの学習経験も持ち寄って、授業の構想・実践のあり方を考察します。いつも申しているように、教育を考えるときの順序は、教育目的・目標→教育内容→教育方法です。教職科目の配列がそのようになっているのでしたね(教育原理→教育課程論→当科目)。ということは、教育の目的・目標のあり方や、教育内容については、これまで私と一緒に深く考察してきたわけですので、それを各教科や単元に落とし込んであらためて設定し、今回それを授業というかたちで出力するということになります。

授業づくりにあたっては、学習指導案の作成がその中心的な作業になります。これは、授業1回分の計画書なのですが、近年の作法だと、かなり精密な単元計画をセットして、単元全体の中で当該授業を捉えられるような様式が求められています(『教育の方法・技術とICT 4.9をよく読んでおいてください)。私が教職課程で学習指導案の作成方法を教えるようになってもう四半世紀を超えましたが、この間に様式はどんどん込み入ってきて、求められる分量は数倍にふくらみました。授業1コマするのにどれだけ入念に準備しなければならないかということがわかりますが、神経質ではないか、そんなに手間をかけても実際の現場では状況が変わるのではないか、という意見はもっともです。しかし、初心者や初任者がノープランで臨めるほど授業づくりは甘くありません。学習指導案を入念に丁寧に作成して、それでも実際の授業がうまくいかなくて、また計画を立てなおして授業して、そしてまた・・・ というふうに努力と経験を積んで、ようやくどうにか授業らしきものを会得していくというのが順当かつ理想的なところです。教育実習においては、この学習指導案の作成がメインのひとつです。スキルはもちろんですが、その背景にある理念や理想も含めて、しっかりと身につけておいてください。


※当科目のレビュー、意見交換はLMS上でおこないます。

 

 


開講にあたって

この科目は、教科および教科以外の領域における教育の方法や技術を、教育課題や生徒の発達段階といった視点から考察するもので、いわゆる教職専門性の形成に資する科目です。各教科の教育法(数学科教育法など)との違いは、教科の違いを越えて共通する教育方法・技術上の問題を深めることと、近年の教育動向に即した実践的な項目を扱う点にあります。もとより直接的には教科の指導法にフィードバックされ、当面は近くおこなわれる教育実習においてそれを発揮し検証するということを意識して学んでいただくことになります。2S教育原理、3S教育課程論でもたびたび指摘したように、中等教育の置かれている状況や構造の変化に伴って、かつては「専門の先生が専門的な内容を一方的に伝達すればよい」と考えられていた中等教育でも、初等教育と同じように、しかし初等教育とは異なる仕方で、教育の方法・技術の熟達を図らなければならなくなっています。いわゆる教員養成系の大学などと異なり、千葉工業大学ではそうした方法・技術の習得にかけられる時間がかなり限られていますので、当科目を中心に、意思と意識をもって学んでください。

法令の改正に伴って、科目の名称が従来の教育方法・技術論から、昨2024年度より教育の方法・技術とICTに変わりました。「とICT」の部分が付加されたわけですが、千葉工大の教育方法・技術論では従来から「とICT」の内容を相当に盛り込んでおり、また教育学・心理学・情報科学の専門家が協働して担当してきましたので、法令のほうが私たちに合わせてきた感じです。ただ、この時期にICTが必修化されたのは、GIGAスクール構想、急速に進む学習環境のICT化、そしてコロナ禍でのオンライン教育の経験などが背景にあります。いままでも日本の学校ではICTを扱ってきたが、それはメイン・ストリームとはいいがたく、周縁とか端っこのようなところで、メインとは別建てで学ばれていました。日本経済の低迷や国際競争力の低下に焦る経済界の後押しもあって、いまこそICTを学校教育のど真ん中に組み込み、生徒に内面化させなければならないという決意が表れています。そのため、高等学校情報科などの特定の教科・科目でだけ扱うというのではなく、すべての学校種、すべての教科でICTの活用を図るべきものとされます。もちろん「教育の方法・技術」と「ICT」が別々にあるのではありません。ICT化が進もうと、それが何に資するのか、どこにかかわるのかを適切に知るためには、公教育の形成以来の教育方法の展開を十分に知っておかなければならないはずです。前述した経済界の焦りとか不満は、「日本の若者はICT漬けになっていて、スマホなどの操作は常時やっているのに、それを(遊びではなく)生産活動や研究に使うことができない」という点に向けられます。その趣旨を踏まえるなら、ICTの操作ができればよし、というわけでは絶対にないことがわかりますね。

「技術」に関しては、教育活動の中心となる「授業」の技術に力点を置きます。板書、発問、印刷教材の作成、視聴覚教材の活用といった、すべての教科・領域に共通する部分をあらためて検討します。また教育活動の計画書というべき学習指導案の作成も重要な学習項目です。7Sの教育実習事前事後指導では、各教科の模擬授業をおこなって教育実習実施の最終判断をしますが、7Sの段階になってもなおそうした授業技術の基礎すら心得ず、過去に生徒として見た風景を切り取っただけのような学生がちらほら見受けられます。それではとても間に合いませんので、今学期のあいだに、それなりの見通しをつけられるようにしておきましょう。

当科目は、古賀(第1回〜第7回)と、市川洋子先生(教育センター 第8回・第9回)、山崎治先生(認知情報科学科/情報ネットワーク学科 第10回〜第13回)の3名のオムニバスです。それぞれの担当パートの方針に沿って評価活動がおこなわれ、比例計算にて評点を算出し、最終の評価とします。

 

<使用するテキスト>

古賀毅・高橋優編著『教育の方法・技術とICT』、学文社、2022
3S
教育課程論で用意していただいたものと同じ本です。ひきつづき使用します。

 

 

 

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