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PART 4 文芸の都フィレンツェ その1 |
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さて長距離列車のターミナルといえば、欧州では方面別に分かれていることが多く、われらが東京だって新幹線がメインになる前は東京(東海道)・両国(房総)、上野(東北・上信越・常磐)、新宿(中央)と分かれていました。パリは6つ、数え方によっては7つのターミナルが高速特急TGVを含め機能分担します。これに対しイタリアでは1ヵ所に集約する場合がほとんど。ローマはテルミニ駅です。テルミニは市街地に突っ込んだような完全行き止まり式の駅。これから向かうフィレンツェも同じで、どうやら各都市で突っ込んでは折り返すスイッチバック式を採っているらしい。手間はかかるし構内の入れ替えも複雑になるが、利用者にとっては利便性が高そうですね。欧州の人は座席を進行方向にそろえるという発想がそもそもないので、しょっちゅう方向が変わっても問題はないのでしょう。
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定刻の15時22分に、フィレンツェ・サンタ・マリア・ノヴェッラ駅(Firenze Santa Maria Novella)の行き止まり式のホームに到着。ルネサンスの震源地、文芸の都フィレンツェ(Firenze)に初めてやってきました。イタリアの観光都市としては、ローマ、ナポリ、ヴェネツィア、ミラノと並ぶ存在で、日本人旅行者の人気が非常に高いところ。それゆえなのか、なんだかこれまで足が向かなかったのだけど、今回はローマとセットで量産型の観光をしてみようと思います。10年以上前だったか、卒業旅行でイタリアなど数ヵ国を回る簡易ツアー(移動手段と宿泊だけセットされている)をとったがフィレンツェが入っていないと残念がっていた学生に、ローマから高速列車に乗れば日帰りで行けるよと、切符の取り方ごと助言したことがありましたが、口説の徒でしたね(汗)。日本人はイタリア語の読みを採ってフィレンツェと呼ぶのが普通ですが、英語ではフローレンス(Florence)、フランス語は英語と同じ綴りでフロランス。花の女神フローラに由来する地名です。現地では英語を話していますので、フィレンツェとフローレンスが混じります。 |
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メディチ家礼拝堂
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ドゥオーモの先を右(南)に折れると、やや静謐になりましたがやはり観光地区でした。ぽつぽつと雨が落ちてきて、まずいなと思ったけど、すぐに止みました。滞在中は降らないでほしいと勝手な願い。やがてシニョリーア広場(Piazza della Signoria)が見えてきます。商人の共和国だった時代にその中心広場として機能していたところ。ヴェッキオ宮殿(Palazzo Vecchio)とランツィのロッジア(Loggia del Lanzi)、ウッフィツィ美術館(Galleria degli Uffizi)などが周囲をかこみます。ヴェッキオ宮殿は共和国時代の政庁、ロッジアはその隣の建物の回廊部分で、いろいろな彫刻が展示されています。ウッフィツィ美術館はボッティチェリ「ヴィーナスの誕生」などイタリア・ルネサンス作品の展示で知られます。ヴェッキオ宮の入り口横に立っているのはミケランジェロ「ダヴィデ像」のレプリカ。ダヴィデは旧約聖書に登場する古代イスラエルの王(シバの女王に難問を吹っかけられたソロモン王の父)で、巨人ゴリアテに立ち向かったエピソードが有名。ダヴィデ像は大国と格闘するフィレンツェ共和国のシンボルだと解釈されています。19世紀後半までここに本物が置かれていたのですが、いまは近くのアカデミア美術館にあります。
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入口に近いカウンター前の2人席に案内されます。ここはちゃんとイタリア式に、前菜としてパスタ、主菜にトリッパということだな。さすが本場だけあってパスタもいろいろ。ペンネ、スパゲティ、ラザニア、ラヴィオリ、ニョッキ、ピチ、クレスペッレ、タリアテッレ・・・ 毎度同じようなことをいうけれど、スパゲティのことを「パスタ」と言い換えるのは間違いですからね。スパゲティが哺乳類だとすればパスタは動物です(それでいいのか?)。ローマのところで少し触れたけれども、ピチというのはここトスカーナのパスタで、太麺だと聞いています。ならばそれを選ぶことにしましょう。Pici cacio e pepe(チーズ味のピチ、ブラック・ペッパー)を。主菜はもちろんフィレンツェ風トリッパ(Trippa alla Fiorenzina)。グラスのワインが€3なのに対し1/4リットルが€4とお値打ちだったので赤のピッチャー(ハウスワインですね)にしよう。いつもはフランス、しかもボルドーの赤ばかり飲んでいますが、イタリア・ワインはかねてより好きで、2009年に初めてイタリアを訪れたときにはハウスワインの味にすら感激したものです。美味しいワインを舐めながら、込んでいるわけでもないのに10分以上かかるんだねと思っていたら、なんと2皿同時にサーブ。ここではそういうものなのか、トリッパは主菜扱いされていないのかわかりませんが、欧州ではめずらしいパターンですね。ま、いいか。一応の作法にのっとってピチから手をつけると、たしかに太麺ながら茹で加減はやわらかめなので、しっとりしています。チーズ味のパスタなんていつぶりだろ。でも最後のほうは飽きてきたので、試しにトマトソースのトリッパをまぶしてみたら意外にいけました。新宿のさるスパゲティ屋さんでは、カルボナーラにトマトソースをかけるという謎の構成なのですが、そんな感じで美味しい。トリッパも美味しいのだけど、味は100%トマトソースのもので、食感も胃袋を細かく切りすぎているため白いんげんに負けそうになっているのが惜しい。18時半ころ現れた3人の女性店員(おそらく夜の担当)が客に目配りするでもなく大声で私語をはじめたので、エスプレッソはやめて勘定を頼みました。ピチ、トリッパとも€9、ワイン€4で合計€22、サービス料なしと明朗会計! こういう場合にはちゃんとチップを置くからね。ごちそうさまでした。近くのスーパーでお水とビールとイタリア・ワインを買ってホテルに戻りました。 |
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この作品(文と写真)の著作権は 古賀 毅 に帰属します。