古賀毅の講義サポート 2025-2026

Études sur la société contemporaine II: Réflexion et apprentissage mondiaux ou ‘global’ pour le futur proche

現代社会論IIグローバル思考と近未来の世界への学び


早稲田大学本庄高等学院3年(選択科目)
金曜34限(11:20-13:10) 教室棟95号館 S205教室

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現代社会論I:近未来の社会を(に)生きる構想と探究

 

202567月の授業予定
6
6日 現代世界と言語(3):社会変動の中の言語
6
13日 マジョリティ/マイノリティ考(1):民族問題の構図
6
20日 視点としての東アジア:国家と亜国家のあいだ
6
27日 グローバル時代のエアライン
7
11日 21世紀の君主制:シンボル・統治・外交

 


次回は・・・
12- 21
世紀の君主制:シンボル・統治・外交

オンラインで受講していただいた 6- 視点としてのブリテン諸島 では、ふつう「イギリス」と呼ぶことの多い連合王国United Kingdom)を中心的に取り上げました。連合というのがちょっとめずらしいけれど、王国というのは他にも例がありますよね。欧州だけ見ても、ベルギー、オランダ、スペイン、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの正式国名に王国が付されています。なんなら両世界大戦前の欧州には、もっとたくさんの王国がありました。どこかで王がいなくなって共和国(republic)に変わったのです。ということは、王国は古い時代の遺物で、なるべく共和国になるべきなのか?と早合点しそうになります。しかしそんな状況でもいま述べただけの王国が欧州に残っているわけですので、伝統とか惰性というだけでなく、前向きの意味もあるのではないでしょうか。欧州には、王国ではない君主制国家もあります。ルクセンブルク大公国、リヒテンシュタイン公国、モナコ公国がそうです。大公とか公(公爵)というのは、王(king)より格下の君主を意味します。国家内国家でよいのであれば、連合王国を構成する4 Countries1つがウェールズ公国でしたよね。そこの君主プリンス・オブ・ウェールズは連合王国の次期国王(王太子)の座るポジションでした。ウィリアム王子は、ウェールズを1つの国家とみなした場合にはそこの君主ということになります。

第一次世界大戦が終了したとき、欧州にあった4つの帝国が崩壊して、いずれも共和国になりました(しかももとの大領土を解体されるかかなり削られました)。ロシア帝国、ドイツ帝国、オーストリア・ハンガリー帝国(ハプスブルク帝国)、オスマン帝国です。帝国とありますので君主は王ではなく皇帝(emperor)。こちらは王よりも格上とされます。中華帝国もそうですが、ほんらい皇帝はエリアにただ1人のはず。4つも併存していたこと自体が論理的におかしいのですが、カモノハシは産卵するわけなので仕方ありません。そもそもemperorの語源はローマ帝国の皇帝がもっていた称号のひとつインペラトール(凱旋将軍の意味で、軍事指揮権をもっていることを意味する)です。そのローマ帝国が4世紀末に東西に分かれ、2人の皇帝が生まれました。西ローマ帝国はすぐ滅んだと習ったかもしれませんが、800年にフランク王国のカール1世が「ローマ皇帝」の称号を与えられて復活し、その地位は神聖ローマ帝国(Holy Roman Empire)に引き継がれます。その間もコンスタンティノープルには東ローマ皇帝(ビザンツ皇帝)がずっといますので、欧州に2人の皇帝が並立していたことになります。南北朝時代どころの騒ぎではありません。歴史の授業だといろいろな固有名詞が出てきて混乱しますので、今回も混乱させてあげましょう(笑)。要するに前近代の世界はどことも君主制でした。そこに、皇帝とか王とか公爵といったランク(格)があったのだとひとまずお考えください。欧州以外に目を移すとさらにややこしくて、中東方面の君主にも、スルタン、アミール、マリクなどがありますし、イスラーム革命前のイランの君主はシャーハンシャー(王の中の王)で、便宜的に皇帝と訳されていました。こちらも歴史に由来するさまざまな含意があります。

1974年の革命でエチオピア皇帝が消滅し、1979年のイスラーム革命でイラン皇帝もいなくなりました。中央アフリカ共和国の独裁者ボカサが、1977年に突如「俺は皇帝になる」といって帝国にしてしまったのですが、クーデタが起こってわずか2年で廃位されました。時代がかったエンペラーなる存在は地球上から消えたかと思いきや、われらが日本にいまも健在です。日本の天皇の英語呼称はEmperor。世界でただひとりのエンペラーです。ただ、連合王国の君主(チャールズ3世)や日本の天皇陛下を拝見していると、権力をふるうとか抑圧的であるといったことはまったくなくて、象徴であり重石でもある感じです。これから先の世界で、いまは共和国なのに王などの君主が登場するということがあるのかどうかはわかりません(最も新しい王政復古は1993年のカンボジア王国)。国家はいろいろ、ということのつづきで、君主(制)もいろいろあり、それらを線で結んでいくとグローバル世界のある部分が見えてくるかもしれません。



REVIEW 6/27

昨年のこの回で、当時の受講生が書いてくれたのがこれ。みんなを元気にしてくれます。

先生が初めて海外に行ったのが大学3年のときだったというのを聞いて、将来が楽しみになりました。私は飛行機に乗ったことがなく、いままで行ったところで最も遠いのが新潟県であるのに対し、周りには何度も海外に行ったことがあるような人がたくさんいて、ちょっとした劣等感を抱いていました。そのため、若いときに経験していなくても、先生のように世界を飛びまわれる未来があるんだ、ととてもうれしくなり、ワクワクした気持ちになりました。HBD.

 
ほぼ新幹線が空を飛ぶくらいのサイズのリージョナル・ジェット機(いずれもボンバルティア) 狭いけど快適です
(左)ルフトハンザ・シティライン(ミュンヘン・ヨーゼフ・シュトラウス空港) (右)スロヴェニアのフラッグ・キャリアであるアドリア航空(フランクフルト空港)

 

航空という移動手段を切り口に、国際社会のしくみや文化、経済のつながりについて学ぶことができた。アライアンスやハブ空港、成田空港などの歴史的背景を学んで、教科書では得られない詳細な知識をたくさん得ることができた。先生の経験談も交えながらのお話は、身近でリアルな状況を想像できたので、とても興味深かった。「空を飛ぶ」という行為が、国家戦略や環境負荷などのさまざまな社会問題とつながっている現実も理解したうえで、私も将来、世界中の国に移動する手段として飛行機に乗りつづけたいとワクワクした。

アライアンスはハブ空港(ハブ&スポーク)、東西冷戦が航空業界に与えた影響など、初めて知ることが多い授業でした。ハブ空港については最初理解できなかったけど、日本の羽田空港や成田空港の例でよくわかり、海外の航空事情に少しふれられた気がします。飛行機に乗った経験が少なく、内容に難しさや次元の違いを感じてしまいましたが、いままで気にしてこなかったANAJALのアライアンスを学べただけでも自分のためになったと思います。

海外に行ったことがないし飛行機にも一度しか乗ったことがないので、航空という分野にあまり興味をもったことがなかったけれど、今回の授業を受けて、航空というものが国どうしの関係や社会状況と密接に結びついていることを知り、航路や海外の航空などを調べてみたいなと思いました。またハブ空港には乗り継ぎのイメージしかなかったけれど、空港の雰囲気から「次はここに来てみよう」と思わせるなど国のイメージに大きな影響をもっていることに気づき、これから行く機会があれば空港の特徴を観察してみたいと思いました。

冷戦の影響が空にも出ていたことを知り、航空産業というのは本当にさまざまな要因によって変動するのだとわかり興味深かったです。(類例複数)

今回の授業を通して、現代のグローバル化とネットワークの発達で「飛ぶ人」が増加したという現実がとてもよくわかった。冷戦の終結と航空産業の発展が密接に関連しているというのは、エリック・ホブズボームの時代区分では「黄金の時代」といわれるその時期には経済だけでなく航空の面でも発達していたことに納得した。またパイロット不足という問題に対して、軍人の転職先というのはとても理にかなっていると思った。英語ができて操縦技術のある軍人が退役後の仕事を求め、その技術が欲しい航空会社とで需要と供給が合っていると思った。
・・・> ホブズボームの「黄金時代」は冷戦期(の西側社会)ですので、航空の現代化はもう少し後のことになります。彼が「短い20世紀」と定義した期間の最後は1989年。私は、まさにそのときから航空のグローバル化が加速したと捉えています。このごろのアメリカ、ロシア、中国のありようなどを見ていると「短い20世紀」と判断したのが早計で、実は「長い20世紀」がまだつづいているんじゃないかと思うこともあるけれど、やっぱり1989年にフェーズが変わったと考えるほうがいろいろ見えてくる(ような気がします)。

航空業界の公用語が英語だと聞いたとき、英語は第二言語として学んでいる人が多く意味を伝達しやすいからかなと思ったが、アメリカ、イギリス、カナダが航空を仕切っていたからだと知り、言語使用にも歴史があるんだなと思った。
・・・> 航空管制traffic control)は国内線を含めて英語ですが、英語母語話者でなければ難しいthの音を避けて、T(無声音)またはD(有声音)で発音します。Thatは「ダット」。数字の9は「ナイナー」。ドイツ語のNoにあたる「ノイン」との混同を避けています。事故やトラブルの際など、とっさに伝達できなければ(誤解が生まれては)困りますからね。

経済発展により利用者が増えたこと、グローバル化とインターネットの普及が進んだことで国際線の航空旅客が増加し、航空連合によりコードシェアが進んだことなどがわかった。

グローバル化の進展とインターネットの普及がまったく同時期で、ネットにより海外が気分的に近くなったというのを聞き、私も話したこと、会ったことのない人とインスタなどがつながっているだけで勝手に距離が縮まったように感じるので、それと少し似ているのかなと思った。
海外経験はグアムとハワイしかないので、今回の授業を聞いて、乗り継ぎのある海外旅行をしてみたいなと思った。去年は国内線で北海道に行ったが、国内線というだけで安心感がすごかったので、先生の話にも納得した。今夏に研修でニューヨークに行くので、現地だけでなく空港や機内も楽しんでみたい。

今回は、グローバル化を大きく推し進めたといえる航空(エアライン)について見ていった。私は航空機に搭乗したことがなく、もしかしたら1ヵ月後に国内便に乗るかもしれないというレベルだが、航空や空港という要素は、国内・国外のいろいろな事情が絡んでくるのだろうと実感した。

航空会社の直接傘下にある企業だけで何十社もあるというのにはびっくりした。その傘下の企業たちを守るためにも、航空会社の責任はものすごいなと思った。

 
ボーディング・ブリッジは意外に使用料が高いので使わない場合も多い
(左)ラトヴィア リーガ空港(バルティック・エア)  (右)デンマーク コペンハーゲン・カストラップ空港(スカンジナビア航空)

 

ドイツに住んでいたころは頻繁に飛行機に乗ってヨーロッパを旅行していて、身近な存在だったけれど、日本国内に住んでいるいまはその機会が減り、移動といえば新幹線が中心になった気がする。

かつてダラスに住んでいたので、授業で出てきてなつかしさを感じた。また、アムステルダム空港で乗り継いだだけで「オランダに行った」というのは、私もそういったことがある。

幼いころから頻繁に航空機に乗れているので今回の話題は理解しやすかった。コロナのような例外はありながら、これからの航空業界は成長していく一方だそうなので、自分の進路の視野にも入れたい。チケットも滞在費も高騰していてなかなか家族で旅行する機会もなくて寂しい。大学に入ったら自分のお金でたくさん飛行機に乗って思い出をつくりたい。

乗った便がANAなのに運航会社がユナイテッドになっていることがあると聞いて、私もいままで数回海外に行かせてもらったことがあり、そのような経験をしているはずなのに、いま初めて気づいて納得した。物事のしくみにもっと興味や疑問をもちながら生活したいと思った。
昨年初めて海外へ行ったけど、そのときもユナイテッド航空だと思って緊張していたらANAとのコードシェア便で日本語を話せるCAさんもたくさんいて、安心したのを思い出しました。LAに行ったのですがフライトが長すぎて、体じゅう痛くなって寝られなかったので、ロシア上空を飛べない欧州方面への旅行は少し気が引けてしまいます。修学旅行は、台湾とほどよい距離の場所なので、空の旅を楽しみたいです。

日本発着の便であれば日本語が通じるとおっしゃっていたが、先日ガルーダ・インドネシア航空でバリ島に行ったときは、日本語の通じるCAさんがいなかったうえ、映画もインドネシア映画ばかり(しかも英語字幕だけ)であった。こういうのは航空会社によって違うのだろうか。
・・・> 国際的な作法としては、少なくとも英語を話せる乗務員を乗せなくてはならないというところまでしか決まっていません。まあ英語はデフォルトですからね。海外の主要キャリアにとって日本は(衰えたりとはいえ)大口のユーザーなので、日本語のできるCAさんを乗せるのは営業戦略上も重要なことで、たいてい1人か2人は乗せています。ガルーダはかなり日本人を採用していたはずなのですけれど、「先日」とあるので、もし本当に最近の話なのだとしたら、コロナ禍のときに整理してしまって補充が利いていないのではないかと予想されます。あのときは日本のキャリアもかなり整理しましたが、海外キャリアに勤めていた日本人社員がばっさり切られて大変でした。その後の急回復と国際的な人手不足で、足りていないのではないかと思います。

地図帳に下のような地図があり興味深いと思ったことがあります。なぜアフリカとヨーロッパのあいだでは、使用言語と航空路に相関があるのでしょうか?
・・・> これはもう明瞭なことで、旧英領には英国系、旧フランス領にはフランス系の航空会社が路線をもっている、ということです。アフリカ諸国は、植民地時代も、その後に主権国家化されたあとも自前の航空会社をもつまでにかなり時間がかかりましたし、費用の点で国際線を飛ばすのにはかなり困難がありました。そのためブリティッシュ・エアウェイズとエールフランスがアフリカの空をほぼ独占する状況が生じたのです。実際の移動の面でも、アフリカの人たちが話す(たいていは第二言語として)言語は、旧宗主国の言語であることが多いので、旧英領の南アフリカやケニアの人は英国に「行きやすい」し、西アフリカの人はフランスに「行きやすい」ということですね。20年くらい前に、パリの常宿で朝食をとっていたら70代の日本人男性がいらして、ごあいさつしたら関西方面の大学の文化人類学の教授でした。旧フランス領の西アフリカ各地がフィールドワーク先だそうで、エールフランスの乗り継ぎや資材・用具等の補給のためにパリを足場にしているのだ、とおっしゃっていました。かなり前に亡くなられましたが、一緒に撮った写真をお送りしたら喜んでくださって、「パリのことを思い出して赤ワインを開けましたよ」とお便りをくださったことです。

 『新詳高等地図』、帝国書院、2018年、p.39

 

LCCの安全性が気になった。

部活の遠征で、成田空港からのピーチ便を利用したことがありますが、やはりサービスも何もかも最小限に抑えられており、旅行で利用したJALと比較して少し落ち込んだ覚えがあります。他国の旅客機を利用したわけではありませんが、機内サービスや空港の設備などは第一印象を大きく左右するのだとあらためて思いました。

興味のある内容だったからおもしろかった。アライアンスとして世界のそれぞれの航空会社が提携するのは大事なのだなと思った。一度、なにかしらの理由でANAの飛行機が1時間ほど遅れたときに、1000円分のギフト券をもらったことがあるが、デルタは3時間ほど遅れても何もくれなかった。会社によって、また国によってそのサービスなどは異なると思った。日本の航空会社の総合職に興味があるのですが、どう思いますか? ANAのアプリを見たらライフタイムマイルがまだ5万くらいだったので、もっといろいろなところに行って、貯めたい。
・・・>航空でも鉄道でもバスでも、公共交通では輸送契約というのをチケットの購入時に交わしていることになり、その契約の内容がサービスの内容にかかわります。航空便は遅れたり欠航したりすることが頻繁に起こるので、それを承知で契約(購入)しますという条項が入っているのです。したがって、ちょっと遅れたくらいでは「待っていてください」というだけの塩対応でも文句はいえません。ANAさまがギフト券をくれたのは、社のイメージにかかわるのでサービスということです(そのための予算を組んであります)。10年以上前にパリの空港で、出発が大幅に遅れたエールフランスの搭乗を待っていたら10ユーロくらいのミールチケットをもらえました。ビールくださいといったらドリンクはだめで、ここからここまでのサンドイッチを選んでといわれ、がっかり。在庫処分じゃんね(笑)。航空会社の総合職というのは、トップレベルの人気就職先ですので、大変だと思いますががんばってください。できたら私の養子になって家族付帯サービスを受け・・・

優先搭乗のメリットがわからないとおっしゃっていましたが、メリットはいくつか考えられると思います。手荷物を早く収納できて収納スペースの確保が容易、子連れの方や高齢者の方にとっては安心材料になるなど。しかしそれ以外は、自分のステータスを見せびらかして優越感に浸れる、というくらいしか見つかりませんでした。
・・・> ね、それだけじゃん(笑)。「2歳以下の小さなお子様をお連れのお客様、車いすのお客様、搭乗に際してお手伝いが必要なお客様」(ANA式の定型文)は、ファーストクラスやゴールドメンバーより先に優先搭乗できることになっていて、そのアナウンスの文面にすでにメリットが含意されています。あとは本当に収納スペースくらいですよね。私は国際便のボトム席(最後列)が好きなので、空いていれば指定します。よく揺れるのですけれど、後ろに誰もいないので背もたれを倒しても気遣い無用ですし、後方にちょっとしたスペースがあるので足腰が疲れたら体操もできる。そしてお手洗いもある。以前は機内サービスもそこにあったので、ドリンクをもらいに行っていましたが、このごろはエコノミー前方に集約されています。で、そんなボトム席なのだけど短所もあって、真上に収納スペースがないということ。B777などではCAの仮眠スペースがそこに入っているのですね。

航空会社はファーストクラスやビジネスクラスで稼ぎ、エコノミーは稼ぎがあれば儲けであるとおっしゃっていましたが、ファーストやビジネスの売れ行きが悪ければ赤字になりかねないのでしょうか?
・・・> そのとおりです。

日本では鉄道を敷く場合、政府の厳しい審査のもとで運賃などを取り締まれているが、国際線はそれと異なり、ファーストやエコノミーなどで値段が極端に異なり、LCCはとても安いなど、それの政府への対応が気になった。
・・・> 日本語ガタガタ(汗)。少しずつ改善しましょう。国際線の運賃は、各国のキャリアが加盟するIATA(国際航空運送協会)が基準・指針を決めて、その範囲で各社が決めます。日本の鉄道会社は、いつ乗っても距離あたりの運賃は同額ですが(特急料金には若干の変動がある)、国際航空運賃は、路線・時期・便ごとに細かく設定されています。また正規運賃(normal tariff)のほかに正規割引運賃(PEX)というのがあって、たいていはそちらが適用され、ディズニーランドのチケットと同じで需要供給に連動して決められます。移動需要の大きな路線は、他社との競合もありますので運賃は安めになり、一社で独占するような路線では高めになります。

電車や新幹線などに乗るときには、運賃+特急料金を払っているのだと初めて知った。切符で新幹線に乗っていたときに2枚切符を入れていた気がして、それは運賃分の切符と特急料金分の切符だったのかなと思って調べたらそうだったので、2枚の意味を今回初めて理解できた。
・・・> 日本の鉄道で特急料金が必要なのは、JRの新幹線もしくは在来線の特急と、一部の私鉄の特急です(関東では東武・西武・小田急の特急と京成スカイライナー。このほか通勤ライナーでは「座席指定券」「着席整理券」などの料金が付加されるものもあります)。京王、東急、京急、京成(スカイライナー以外)などの特急は料金不要。それぞれの会社の運送約款によります。本庄早稲田は新幹線単独駅ですが、在来線と共通の場合として、高崎駅を例にとりましょう。東京→高崎を在来線で移動する場合には、運賃1980円のみです。運賃というのはA駅からB駅まで列車で運んでもらうことの対価。同区間で新幹線自由席を利用する場合には、自由席特急料金2510円がプラスされます。「料金」というのは、スピードおよび車両設備にかかる価格です。運賃は距離あたりの額が決まっていて、新幹線と在来線では違うルートを通るため本当は距離が異なるのですが、在来線の距離あたり運賃に合わせることになっています。したがって、在来線で高崎までゆくつもりで切符を買ったけど、気が変わって新幹線に乗るというときには、自由席特急券だけ買い足せばよいことになります。ネットだのみだと、このような基本的なしくみを知らないままお金を払わされることになるので、ちゃんと勉強しておきましょうね(昭和の生徒・学生はみんな知っていた)。ただ、海外では包括運賃制を採ることが多く(要するに航空券と同じようなしくみ)、運賃プラス料金という概念を知らないまま、日本を旅行してとまどうということがよくあります。SNSで見かける「外国人旅行者のマナーの悪さ」の例として、特急券がないのに座席にすわっていて車掌に口ごたえしていた、という話がしばしばあるのですけれど、日本のルールを心得てから乗れよ、という話は別にするならば、現在の世界的な常識とはズレがあるということなのでしょうね。

 
鉄道や航空の業界で「パタパタ」と通称される旧式の発着案内板
(左)フランクフルト空港では現役! (右)鹿児島空港では展示室の「昔はこうだった」という展示品扱い(笑)
私と同世代のご家族がいたら「ザ・ベストテン」ていう歌番組知ってる?と聞いてみてください
ところでフランクフルトの中段にSTUTTGART HBF、最下にDORTMUND-KÖELN HBFとあるのに注目してほしい
HBF
は鉄道の中央駅(Hauptbahnhof)のことで、出発エリアにT5/T6とあるのは鉄道(train)の番線のことである
ルフトハンザ(LH)が新幹線ICEの一部車両を借り切って「航空便」扱いにしているのだ
空港は都市のはずれにあるけれど鉄道駅は都心部なので、環境のことも考えればスポーク路線として有用ということである

 

日本のハブ空港は羽田空港と成田空港のどっちだろうと思っていたけれど、実際にはどちらでもなく、そもそも日本には存在しないということに驚きました。

授業を受けて、私は航空についてほとんど知らないのだと思いました。羽田空港と成田空港の経緯を初めて知り、少し不便に感じる理由がわかりました。日本の空港になじみがあったためハブ空港というものについてよく理解できていなかったのですが、海外の例を学び、ハブ空港の恩恵も大きいのだと思いました。
ハブ空港を実現するにはいろいろな工夫をしなければいけないが、スポークとハブの共存で移動はきっととても便利になる! 内・際分離の発想で成田空港を造ったことをまったく知らなかったので、羽田と成田は両方とも、初めから国内線・国際線を設けていたのだと思っていた。しかしどう考えても国内線と国際線は共存したほうがよいのに、当時の日本はなぜ内・際分離にしたかったのかすごく気になる点である。

羽田は国内、成田は国際というイメージが強いのはどうしてなのかというのを、飛行機を利用するたびに思っていたが、今回わかった。日本がハブ空港の建設に乗り遅れてしまったのが原因だと知り、国の航空産業への介入が失敗したのだなと思った。飛行機は2点間しか結べないという点を、鉄道でいう乗換駅のようなハブ空港の導入によって効率化させるというのは、現在できる強みであるとわかった。
・・・> 航空産業への介入というよりは、国の航空(交通)政策の失敗ということです。

いま私は東京に住んでいるのであまり不便はしていませんが、たとえば海外から成田空港に飛んできて、疲れているのに羽田まで時間をかけて行かなければならないと考えると、内・際分離はやめてほしい。成田に住んでいる人の意見も通せるし、行きづらい人がほとんどなので、羽田をもっと他国とつなぎ、ハブ空港にしてほしいです。ヘルシンキのように計画的に建設してほしかった。
・・・> 羽田はもう容量いっぱいで限界です。これ以上の発着枠拡大は難しいでしょう。海外から成田に来て、そこから羽田に移動するのはもちろん大変ですが、成田から都内に出るのも遠いですよね。十数時間のフライトを経て、ようやく着いた!と思ったら「ここから1時間ちょいです」なんて、世界屈指の大都市にしては恥ずかしい。京成スカイライナーが日暮里まで36分をうたいますけれど、日暮里だしな(涙)。

点と点を結ぶ移動しかできない航空機にとってハブ空港が大切な役割を果たしていることがわかった。

ハブ空港=西船橋 というのは千葉県民なので超わかりやすかったです(類例複数)
ハブ空港という言葉を初めて知った。私の家の最寄り駅は西船橋で、たしかに西船橋には路線が何本か通っておりどこにでも行きやすい駅だ。千葉のハブ駅といった感じかなと思って、少しユーモアを感じる例だった。
・・・> 千葉県内でこの話をすると大うけなんですけどね(大笑)。ご存じですか? 千葉県内のすべての駅で利用客数の最も多い駅は、千葉でも船橋でも松戸でもなく西船橋です。誰も下車しないのに! (私も毎日、メトロとJRを乗り継いで利用しているので、1日分の統計には私の「2回」がカウントされています)

 
空港ターミナルはどこも無機質だが、がんばって特色を出そうとしている
(左)考古遺物を展示するアテネ・エレフテリオス・ヴェニゼロス国際空港
(右)フットボール・ゲーム(なのかな?)を置いているローマ・フィウミチーノ国際空港 これ昭和のおもちゃだよね!

 

ハブ空港のしくみは地方の活性化を図るうえでも非常によいと感じた。一方で、そのしくみがない日本は不便であるように感じたが、日本は国内線・国際線のシステムで、長年独自にアクセスなどもしやすくなってきているため、無理に変える必要はないように感じた。空港によって国の印象が変わるため、今後より独創的な空港が増えていくとうれしい。
・・・> 日本の独自(ガラパゴス)のシステムは印象悪いと思いますけどね。この種の話に「感じた」という動詞は不向きです。社会的な物事は、感じるのではなく考える対象です。感覚で学問しないように(笑)。

中学校の地理で習ったハブ空港について理解を深められた。今夏、家族でモスクワに行く予定なのだが、その際の乗り継ぎで中国の空港を利用することになっているため、設備に期待したい。10年ほど前にロシア→日本で航空便を利用した際に、搭乗前の検査が日本→ロシアの場合よりもはるかに面倒だった記憶があるのだが、それは国の政治の問題なのか空港の問題なのか気になった。
・・・> 両方でしょう。それと大きいのが航空会社の方針や気質。

私はハブ空港で数時間ぶらぶらして、その国の食べ物を食べるのが好きなのですが、一時滞在者を増やし、ターミナル内のショップやレストランで国をPRするというハブ空港の戦略にまんまと引っかかっているなと思いました。今後さらに技術が向上し、燃費がよくなったら、さらにダイレクト便が増え、ハブ空港の需要は小さくなってしまうのではないのでしょうか?
・・・> 航空便が2点間の移動しかできない、という弱点を抱えているあいだは大丈夫なんじゃないですか。

空港は国の玄関口であるというのをよく耳にします。これは外国から来た人・物を迎える場所というだけでなく、その国の様子を示している場所でもあるからだとわかりました。新しい土地に行ったとき最初に見るもので、その土地の印象が決まるということに納得しました。

空港は他の観光名所などと比べてないがしろになりがちであるが、修学旅行では空港にも目を向けて、存分にその国の特徴を味わいたいと思った。

空港は都市の顔ということだったが、ダラス・フォートワース空港やシャーロットのダグラス空港など、アメリカの空港はだいたいトイレが汚いので、日本の空港は清潔ですごいと思う。

キューバのホセ・マルティ国際空港を利用したことがあります。町なかもそうでしたがなかなか設備や内装に歴史を感じる造りになっていて、やはり国の「顔」であったのだと思い出しました。反対にカタールのドーハ国際航空は、その豪華な造りに圧倒されました。成田空港の到着ロビーの内装には、ニンテンドーのキャラクターが出迎えてくれる仕様になっているなど、日本らしさを印象づけるためのさまざまな工夫がなされていてとても好きでした。

ロンドンのヒースロー空港も世界有数のハブ空港であると知って驚いた。イギリス研修に行くときシンガポール・チャンギ空港で乗り継いだらめちゃくちゃきれいでびっくりした。今度はシンガポールに行ってみたいと思ったので、「直接的なPRになり好感度にもつながる」ということを、身をもって感じた。
シンガポールに旅行に行ったとき空港がとてもきれいで感動したのを、もう6年前のことだがよく覚えている。それは国家や都市の印象をよくするためのことだったことを知り、すごく納得した。
日本の空港にはおもしろみがない。先生のスライドにもあったシンガポール・チャンギ空港は空港内に緑が多く、たしか温室のようなものまであったような気がするし、子どもの遊び場も充実していた。それに対して日本の羽田や成田は、機能的である一方で遊び心がなくてつまらないと私は思う。

 
空港メシにはあまり期待しないが(高いしおいしくないことも多い)、いいやつに出会うこともあるね!
(左)シンガポール・チャンギ空港での海南鶏飯 ホーカーズ並みとまではいわないが市内の価格と味にかなり近かった
(右)香港国際機場のロースト・ダック・ライス インディカ米となぜか合うんですよね

 
(左)岡山桃太郎空港  (右)広島空港  中国地方の両空港はどちらも市内から遠いうえに新幹線の「4時間の壁」の範囲内で
東京からの移動には全般に不向きとされる(でもANA好きとしては乗っちゃう)

 

「飛ぶは恥?」という内容がありました。それをするくらい、自分たちはいままでもっと身近でできる行動を心がけてきたのか、と疑問に思いました。海を渡っての移動を控えて、世界の広さを知ることもなく過ごすよりは、世界のことを知ったうえで身近にできることの中でもっと小さな犠牲を払って行動できるはずだと思います。

コロナのときは外国に飛べなかったので、家族で海外旅行というわけにもいきませんでした。しかし「飛び恥」の観点から見ると、環境を守る行動につながっていたかと思います。環境に配慮することは、世界的に取り組むのが難しい面があります。個人個人ではできたとしても・・・。しかし、このコロナ・パンデミックでは航空機での移動が世界的に減少したために、皮肉にもエコ活動をグローバルにおこなっていたことになると思います。こんな観点からも、環境に配慮した活動ができるのですね!

地球温暖化を促進してしまうというので飛行機の利用が制限されるととても不便だと思う。水素自動車のように、環境にやさしい飛行機の開発があればいいと思った。

航空機の進路を見ると世界の情勢が見えてくるというのが、当たり前のことではあるが興味深いなと感じた。
航空機は他国の上空を通過するため、政治事情に大きな影響を受けるということを理解した。(類例複数)
現在、ロシア上空を飛ぶ代わりに北米側を通って欧州へ往くと知って、結構遠回りするなという印象を受けた。帰りもロシアや北朝鮮を避けていて、社会情勢が空にも影響しているのだと思った。
・・・> 国家の三要素の中に領域というのがありますね。その範囲で排他的な主権が行使されるというものでした。領域は地面だけでなく空中(だいたい大気圏)にも及びますので、どこかの主権国家の領空を無断で飛ぶことはできません。領空侵犯になってしまいます。いまはそのあたりの国家間協定が結ばれていて、一定の条件を満たす航空便に関しては領空の通過を互いに容認するということになっています。したがって、いったん交戦状態に入ったり、当該国が協定を離脱したりしたときには領空通過ができなくなります。撃墜されても文句をいえなくなるわけです。

冷戦のせいで乗り継ぎがあるのがややこしいなと思い、めんどくさいことをしているなと思ってしまった。
冷戦後、空のシームレス化が進んだ。かつてはロシア上空を飛ぶことができず、北・南回りしか路線がなかったと習ったが、昨年羽田からロンドンに行った際には、ロシア上空を避けて北極を通った。おそらく安全面を考慮したのだと思うが、戦争のせいで以前と同じ状態に戻ってしまっているのはとてもよくないと思った。北極も映えるので悪くはなかったです。結構溶ける様子を見ることができました。
・・・> 「めんどくさいことをしているな」は現在形? だとしたら時代ごとの問題を混同しています。いまは冷戦(戦闘を伴わない対立)ではなくウクライナとロシアの本物の戦争。公団の「かつてはロシア上空を」のところは「ソ連上空を」ですね。ソ連がらみの次元・概念の整理は第2回を思い出してください。

去年、東京とロンドンを往復したときにロシアの上空を飛行できないため、乗っている時間が前より長くなっていたが、帰りの便のほうの飛行時間が短いのは地球の自転の関係なのだとわかった。(類例複数)
・・・> 自転そのものと、それに伴うジェット気流(西→東)がありますので、たとえば東京と福岡の往復でも帰路の飛行時間のほうが短くなります。低緯度のところだとそれに地球の遠心力が加わったりします。

卒業後に家族旅行でどこに行きたいか、という話題が出たので、あこがれているパリを提案したのですが、授業で示されたナビゲーションの動画を見て、気が遠くなってしまいました。ロシア上空の飛行制限を早く解除してほしいです。12時間で行けるANAがあったらぜひとも乗りたいです。

ロシアがいまウクライナと戦争しているのでロシア上空を航空機が飛べないということについて、先生は「当分この状態はつづく」とおっしゃっていたが、私はロシアとウクライナの決着はそろそろつくと考えているので、案外早くくだんの問題も解決するのではと考えている。
・・・> さあ、どうでしょうね。そうあってほしいですけど・・・。仮にロシアとウクライナのあいだの戦争が終結したとしても、ウクライナはともかくロシアの上空を日本などの航空機が飛べるようになるにはかなり時間がかかると思います。とくにプーチンが権力を握っているあいだは、再開は難しいことでしょう。

面積の広い国が戦争状態になると、その上空を避けていくのがとても面倒になるのだと思った。いまはロシア上空を避けているが、冷戦下と違い、旧ソ連領を普通に飛べるのは大きいと思った。質問です。間違ってソ連領やロシア領の上空を飛んでしまった事例というのはあったのですか。
・・・> 残念ながら、いくつか事例があります。中でも衝撃度が大きく、中学生だった私も大変驚いたのが、198391日の事件です。ニューヨークからアンカレジ経由でソウルに向かっていた大韓航空機が、サハリン沖でソ連の戦闘機に追尾され、撃墜されて、乗客・乗員あわせて269人(うち日本人旅客28人)が全員死亡しました。いくつかの要因が重なって大韓機がソ連の領空に入ってしまい、ソ連機は警告射撃したものの大韓機側がこれに気づくことができなかったようです。ソ連側はアメリカの軍用機が領空侵犯したのではないかと疑っていたのでしょう。純民間機、それも大型のB747を容赦なく撃ち落とすという行為は、事後の対応の悪さも含めて、ソ連への国際的な非難につながりました。墜落現場は北海道最北端の宗谷岬から90kmほどのところでしたので、日本国内でも動揺が広がったのです。東西冷戦は、ゴルバチョフがソ連の指導者に就任した1985年以降に急速に緩和へと向かうのですが、アフガニスタン侵略(1979年)以降の数年間は、米レーガン政権の対ソ強硬姿勢とあいまって最後の厳しい対立(「新冷戦」とも呼ばれた)のフェーズにありました。レーダーから消えたという第一報につづき、「ソ連軍機が撃墜した」という事態を当事国ではなく米政府が発表したというのも怖かった。冷戦はいよいよやばい局面に向かうのではと、中2の私は本気で思っていたものです。

今回の授業を受けて、去年留学に行った時のことを思い出し、また外国に行きたくなった。パイロットになるのもありかなと思った。パイロットって専門の学校に行けばなれますか? また、おすすめヨーロッパの旅行する国はありますか?
・・・> 海外の事情はよくわかりませんが、日本国内でパイロットをめざすのであれば、航空会社(ANAまたはJAL)に社員として入社したあとで、社内の養成機関に入って技術とライセンスを得るか、航空大学校に入学して専門的な訓練を受けることになります。前者は文系でもかまいませんが、後者は理系でないと厳しい。また当然ですがトップレベルの一般学力と英語力、それに身体・健康面での不足がないことが求められます。TOEICのスコアが700点といわれていますけれど、かなり狭き門なので、もうちょっとほしいですよね。

 
(左)ANAファンなのでグッズもたくさんもっています! センスのいい扇子は夏が来るたびに機内購入していて十数本ある(笑)
(右)羽田空港で離陸を待つANAのスターウォーズ機 ポケモンはともかくスターウォーズはUSAのものじゃないのかな?

 

私もANAによく乗っていました。機内で提供されるラーメンとスープが大好物です。
・・・> 血圧をやっちゃってからスープは避けているのだけど(上空では気圧の関係で味を薄めに感じるため、地上よりも塩分濃度を高くしている)、個人的にはJALのほうがおいしいと思う。ANAのコンソメはなんだか野菜のえぐさが感じられないかい?

先生が嫌だとおっしゃっていたANAのポケモン旅客機、私はとても好きだ。スターウォーズのANA機にも乗ったことがあるのだが、たしかCAさんの服装もそれに即したものになっていて、それに関するお土産ももらえた。かわいいしほっこりするので、私はそのような機体が好きだ。

古賀先生はなぜANA派なんですか?
・・・> なぜですかね。わからないのですが子どものころからJALよりANA派で、マイル登録の時代になってからは完全に固定されました。赤の天音ちゃんと青(空色)のまなふぃーは同じくらい好きなので(ミントグリーンの航空会社ないかな?)、そこは関係ないか(汗)。もともと昭和期の日本の航空行政は自由競争ではなく護送船団的で(これは公民で習っているのではないかと思いますがお調べください)、国営の日本航空が国際線、純民間の全日空(本来的には名古屋鉄道の系列だった)が国内線、東急系の東亜国内航空が国内のローカル線という棲み分けでした。1980年代、日本の経済大国化・国際化と新自由主義化が進み、日本航空が民営化され、全日空も国際線に参入し、東亜国内航空も国際線を開設して日本エアシステムに改称されます。そのあたりからキャリアごとの役割分担がなくなり、競争の時代に入りました。サービスのスマートさとかっこよさではANAが優勢でしたね。あ、いまも社名は全日本空輸なのだけどいつからか「ぜんにっくう」と呼ばなくなりました。JALが経営破綻(1つ下に書きました)して不採算路線を整理すると、いよいよANAの優勢がはっきりするようになっています。先日、航空券のネット予約がうまくいかずにサービスセンターに電話したら、係の方の対応がすばらしく、ああこれでまたANA推しの要素が増えたなと(まぢで)思ったことです。

赤字になることはないと思っていた。敗戦国であるから航空機の開発が遅れたと聞き、日本の技術力でもつくれないものかと驚いた。またJALが一回つぶれたと聞いて驚いた。
・・・> それもそんなに古い話ではなくて、2010年に会社更生法適用を受けています(いわゆる倒産)。JAL日本航空はもともと国営企業で、1980年代に民営化されたとはいえ、文字どおりの「親方日の丸」体質を抜けきれませんでした。利益率のわりに乗務員などの待遇がよかった(よすぎた?)こと、各種のコストカットを進められなかったこと、日本エアシステムとの経営統合で不採算のローカル路線を多数抱え込んでしまったことなどが要因で、破綻に追い込まれてしまったのです。ちょうどリーマン・ショック後の不況の折だったので再生も厳しいとみられていましたが、ときの民主党政権がバックアップし、平成の経営の神様的な存在だった稲森和夫さん(京セラ)をトップに迎えて再建をめざし、見事に数年で再生に成功しています。

日本の技術は世界からも評価が高いのに、航空機業界に参入していないのはどうしてだろうと思っていたが、部品づくりに生かされていることを知り納得した。GHQなどから規制されて機体づくりについては他国より数年間遅れた。その数年の差が大きな差になったことに驚いた。

先生はフランス語10ヵ月でフランスに行ったということでしたが、ことばがわからないことに不安を感じたことはありましたか。また、ことばの問題を除いて、女子ひとりで海外、とくにベルギーなどをぶらぶらするのは危険だとお考えですか。親に止められています。
・・・> 私はデビュー当時からなぜか言語の不安って抱いたことないんですよね〜(ロクに話せないくせに)。旅行くらいどうにかなるし、どうにかならないほうがおもしろい、くらいに思っています。ネタになるしね。フランス語初級クラス(週2回)で授業を受けた程度でフランスに行ってみて、案外通じるなという感触でした。ま、それはそうで、旅行者が話す内容なんて注文かあいさつくらいですからね。それで安心?したのか、フランス語の学習を手抜きするようになり、そっちの研究に入ってから痛い目に遭うのです。なつかしいな。さて女性の一人旅ですが、これはいろいろ心配なことがあります。まず、エリアと時間帯において絶対に避けるべき部分があります。ダウンタウンとか駅裏の場末みたいなところには絶対に近づかないこと、そして暗くなったら一人で歩かないこと。もちろん目立つアクセサリーやセクシーな衣類を身につけるのは危険です。日本人の女性は、欧米人の相場からすると年齢不相応に若く、カワイく見えます。カワイイというのは誉め言葉ではなく「子どもっぽい」という意味ね。旅慣れてくると、きりっとした表情を管理できて、うかつに手を出せない感じを醸し出せるようになるので、それまでは修行の時期と心得て、なるべく安全を心がけるべきでしょう。

幼少期には何度も飛行機に乗ったことがあるが、当時はまだ「大きくて空を飛べるのりもの」というイメージしかなかった。世界のことをほんのちょっと学んだいま、もう一度飛行機に乗って、いろいろな角度から物事を感じながら、空を飛んでみたい。

今回の授業を聞いて、早く海外旅行に行きたいと強く感じました。幼少期に何度かオーストラリアに行った記憶があるだけで、いまだに海外旅行に対する不安や、国内より高めのハードルを感じます。これまで3ヵ月ほど国際的な視点を育ててきたと思っていましたが、まだまだ世界・海外に対して抵抗感や、自分のこととして捉えられていないのだと痛感してしまいました。現在はSNSやインターネットを通して、国境を越えたコミュニケーションや人やモノの行き来が可能になり、国内にいても海外の状況を知ることはできますが、やはり実際に足を運んで、自分の目で見て体で感じて体験することも必要だと思います。

 パリ・シャルル・ド・ゴール空港第2ターミナル




開講にあたって

現代社会論は、附属高校ならではの多彩な選択科目のひとつであり、高大接続を意識して、高等学校段階での学びを一歩先に進め、大学でのより深い学びへとつなげることをめざす教育活動の一環として設定されています。当科目(2016年度以降は2クラス編成)は、教科としては公民に属しますが、実際にはより広く、文系(人文・社会系)のほぼ全体を視野に入れつつ、小・中・高これまでの学びの成果をある対象へと焦点化するという、おそらくみなさんがあまり経験したことのない趣旨の科目です。したがって、公共、倫理、政治・経済はもちろんのこと、地理歴史科に属する各科目、そして国語、英語、芸術、家庭、保健体育、情報、理科あたりも視野に入れています。1年弱で到達できる範囲やレベルは限られていますけれども、担当者としては、一生学びつづけるうえでのスタート台くらいは提供したいなという気持ちでいます。教科や科目というのはあくまで学ぶ側や教える側の都合で設定した、暫定的かつ仮の区分にすぎません。つながりや広がりを面倒くさがらずに探究することで、文系の学びのおもしろさを体験してみてください。

選択第7群の現代社会論IIでは、設定いらいずっと「グローバル」なものを副題に掲げてきました。グローバル化(英語でglobalization=地球化、フランス語でmondialisation=世界化)という用語や概念は、1990年代あたりに一般化したものであり、2000(ゼロ)年代にはそれがすべてかのように猛威をふるい、2010年代には逆風にさらされ、グローバルに関する言説は総じて批判的なものになりました。2020年代ももう半ばですし、高校3年生のみなさんが実社会で活躍するのはさらに先の2030年代でしょうから、そのころグローバルという表現自体がもう陳腐化している可能性は、なくはないと思われます。ただ、いったんグローバル化してしまった以上、もとの世界に戻ることはありません。私たちは知らず知らずグローバルの恩恵を受けています(もちろん、ダメージも食らっています)。グローバル時代だから外国語を話せるようになりましょう、といった単純すぎる(アホみたいな)発想が陳腐化するのは間違いない。では、これからの時代に社会で活躍する人として、いかなる思考、どのような構えを心得るべきなのか。その答えを出すには、週2時間、1年弱の授業ではとても足りませんが、そのヒントや土台くらいは提供できればと考えています。

みなさんが小・中・高で学んできたことの中には、たとえば算数・数学の公式や定理や問題の解法、あるいは国語や英語の文法など、数値や単語を入れ替えることで広く使えるような知識と、個別の用語や概念を自分の中に取り込み自分で説明できるようにしておくという、知識それ自体の、両方が含まれていました。社会系教科といわれる地理歴史や公民は、どうしても後者のイメージが強いようです。社会科=暗記 という認識が、ほかならぬ「社会」の側でも広く共有されているようです。でも、社会なる対象が不動のものであればそれでいいかもしれませんが、実際には絶えず動いており、形を変えています。私(古賀)は社会系教科を教えるようになってもう30年以上になりますが、初期のころと現在とでは知識それ自体がまるで変ってしまっている、ということも多いです。ということは、暗記してなんとかなるような部分はさほどでもなく、むしろ公式や定理や文法に近い部分こそ、いまのうちに取り込んでおくべきなのかもしれません。いま世界は、ちょっと想定を超えるスピードとベクトルで変化しています。合衆国のトランプやロシアのプーチンの振る舞いが注目されており、みなさんもそこに目を奪われているかもしれませんけれど、より本質的には、18世紀ころから世界を覆ってきて標準(standard)とみなされていた西欧的な考え方や価値観が、非欧米世界の経済成長につれて相対化され、動揺しているというところが重要です。トランプやプーチン、そして彼らを支える勢力には、そうした動揺の反動として動いているという側面がかなりあるのですね。当科目では、いま私たちがいる日本という国家や社会については大半を対象外としています。学ぶのは日本の外、いうところの海外とか外国という部分です。公民はどうしても日本にかかわる部分をかなりの割合で扱い、余白みたいなところで世界を学ぶという構成になりがちですが、この現代社会論IIは、3年生選択科目というコンディションを生かして、あえて日本の外に照準を当てます。おそらくそうした視野で学び、思考する経験は初めてなのではないでしょうか。1年間の学習を終えたときに、「世界の見方」の一部くらいは獲得できて、成長を実感できるのであればいいなと考えています。

*地理の授業で使用した地図帳を毎回、持参してください。別種類のものを買い足してもよいと思います(違った視点を得られるかもしれない)。

 

 

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