■今回の授業を通して感じたのは、欧州連合は、多様性の中の統合という理想を掲げながら前進する、壮大な実験であるということである。ブリュッセルという遠くにある中心が複雑な意思決定をおこない、国家の枠を越えた制度が日常に介入することが、ポピュリズムが台頭する背景にもなっているのだと考える。その一方で、とくに印象的だったのは、国内のマイノリティにとって「欧州市民」が第二のアイデンティティのような存在になっている点である。数々の危機を乗り越えてきた欧州が、これからどのように動いていくのか見どころだと感じた。
■今回の授業を通して感じたことは、EUは理想と現実のギャップを抱えたまま走る、いわば未完成の大実験ということである。危機のたび、EUは崩壊するといわれるが、むしろそのたびに生き延びてきた点に、私は強い興味と魅力を感じた。各国の多様性はたしかに統合の障害にもなるが、同時にEUを硬直した国家モデルから解放する力にもなっているように思える。現状への不満やポピュリズムの対応も理解できる一方で、そうした矛盾を抱え込みながら前に進もうとする姿勢こそ欧州の覚悟ではないか、という印象をもった。
■今回の授業を通して、EUの解像度がまた一段と高くなった気がしました。多様な国家のしくみや欧州での横のつながりをもつ国の集まりで、国家どうしの価値観の違いによって対立が起こらないのか不思議に思いました。自由・平等や民主主義、近代科学などの欧州の価値が、EUの存在がどんどん広がっていくときにどこまで共有できるのかという疑問を、私も抱きました。
■最近の授業を通して、EUという枠組がここまで強化されてきたということに初めて気がつきました。いままで自分の中でEUとは「連合」であるという印象が強く、国家的な側面があることをあまり感じていなかったので、ギャップを感じました。そんなEUですが、これからどう動くか予想したときに、私は「まだ誰も経験したことのない秩序の構築」に進むだろうと思います。いや、進んでほしいと思っています。当のEU加盟国内にいない、外部だからこそいえることだとは思いますが、ここまで国家的に感じられるくらいに国家どうしの統合が進んでいる連合体はいままでにないと思うので、まだ見ぬ秩序構築に進んでいく可能性を感じました。
・・・> European Unionですから本当に「連合」という訳でよいのか、「同盟」ではないのかという議論は、ECがEUになった当初(1992年)からありました。日本語で連合と書いてしまうとご指摘のような印象のズレが日本人の中に生じるでしょうね。といって同盟というのもどちらかというと軍事的なニュアンスが強いように感じるので、やはり適切ではないかもしれません。
■前回の授業とは反対に、EUの陰の側面について見ていった。国家を超えた国家には、前回見たようなメリットだけでなくデメリットもあるということをあらためて実感した。一概にこの体制がよいか悪いかを決めることはできないが、「よいときには何もいわないが悪いときには悪いといわれる」というのは納得した。後半のEU加盟国の紹介では、ヨーロッパに行ったことがないので、さまざまな写真に物珍しさを感じた。
■GDPの話の際に、アメリカや中国に関しては内部の多様性を無視しているのではということだったが、たしかにアメリカは東西や、海沿いと内陸で大きな違いがあるし、中国も地域によって異なっているなと思った。
■EUという、国家を包摂する団体があることによって、ある国家内においてはマイノリティである人々が救われるという話に、すごく納得しました。ただ、メディアや教科書では、東と西、加盟順などで経済状況の「差」があることをものすごく強調し、「○○に比べて△△はダメだ」などとEU加盟国をEU外の人が比較することがあり、それは多様性ということとかけ離れていて、よくないのではないかと思いました。また、産業や歴史、近隣国との関係など違いが多く、人によっては排外主義的な考えをもつなど、異なる部分が多いのは大変そうだけれど、EU外の国々も地域ごとの差異をもっているのだから、一概に国が集まっているからダメなんだとはいえないなと思いました。
■欧州統合について、制度的なものなど字面だけで見れば一つの国家かのように思えた。しかし各国の特徴を見ていくと、初めは文化など目に見えるものがあまりに違っていて、一つの国家であるという考えは薄れたが、よく考えてみると、日本をはじめとして一つの国家の中にも多様性は存在するのだと気づくことができた。

(左)チェコ プラハ (右)フランス アヴィニョン
■EUについて学び、一つの国家を運営することすら難しいと思いますが、文化や政治状況が異なる20以上の主権国家をまとめる、というのはとても壮大で、課題も多いということがわかりました。経済政策や雇用などは壁がないことによるメリットもある一方、悪い影響も受けやすいという側面があると思いました。ですが国境がフリーになったことで、文化や言語、民族などの交流が受け入れられやすくなったり、個々の可能性が増えたりすることは魅力的に感じました。
■前回にひきつづきEUの多様性を重んじているところを実感した。国境を簡単に越えることができるのは便利だと思ったが、その一方でウィルスも広がるなど、物事には必ず裏の側面があることを再度実感した。国家の文化や言語をもとにしたアイデンティティがありながら、欧州としてのアイデンティティを併せ持つことで現在のEUがあることを知り、よい学びになった。やはりマイノリティが生じないようにして皆を輪に入れて考えるというのは、人々の調和にとって大切なことであると思った。
■欧州では、国境を越えて自由に学び、働くことが日常となっており、それを希望としてつかめる若者もいれば、選択肢が多すぎることを負担に感じる若者もいて、日本で東京一極集中が問題にされるのとは別の意味で、欧州の若者が抱える問題というのが興味深かった。
■欧州統合で壮大な実験が直面する課題や矛盾がわかり、単なる理想像を学ぶ以上の深い洞察を得ることができた。欧州がどこへ向かうのかという視点は、私たち自身の未来を考えるうえでも不可欠だと感じる。
■EUは一枚岩だと勝手に考えてしまっていたけれど、かなり複雑に分かれていることがわかった。統合における各国の主権の問題や価値観の違い、統合による経済的な影響の問題などがあるという状況を、まったく考えたこともなかった。しかし以前学んだように、多様な言語、複雑な歴史などをもつヨーロッパの中にEU市民(European Citizen)であるという共通のアイデンティティが生まれるのはよいなと思った。日本にいると国境を難なく越えることができるという状態がうまくイメージできないので、実際に訪れてみたいなと思う。
■欧州連合というくくりで国家をまとめているが、一つずつの国家について見てみると、異なる歴史や文化をもっており、そういったアイデンティティが共存し、それが一つの大きなアイデンティティになっているという点が、新鮮ですごいと思った。EUとしてのアイデンティティと一つの国家としてのアイデンティティとではどちらのほうが強いのかが、国によってはあるのか疑問に感じた。また、雇用など経済の不均衡について、他の科目で日本の都市化・郊外化または地域格差について学んだ際、うまくいっている事例は少なかったので、日本とやり方は違うにしても規模の大きなEUにおいては経済的不均衡を是正するのは難しいのではないかと思った。
■2010年代にさまざまな危機が欧州を直撃して、「欧州統合はダメなのではないか」というネガティブなマインドが発生したという話が合った。その例の中には、コロナウィルスによる危機など、欧州だからという理由で陥ったわけではない危機もあった。これは欧州に対してもともとネガティブなイメージを抱いていたから悪く見えているだけなのではないか。これによってネガティブなイメージが生まれているわけではなく、因果関係が逆なのではないかと思った。
・・・> まったくそのとおりです。ま、「マインド」などという怪しい?概念を噛ませているあたりが、経済学が数学とは違って人間社会の学なのだということでもあるでしょうね。内外にあれこれあって、マインドが下降気味であったところにパンデミックが襲いかかり、「やっぱダメだ」という感覚が強まった、というような、相乗効果のような感じで捉えてください。ただパンデミックからの回復(経済も、気分も)もめっちゃ早かった。

(左)マルタ セント・ジュリアン (右)イタリア ヴェンティミリア
■EU加盟国どうしが協力し合う一方、それぞれの国が抱える利害や国民感情が衝突し、決して一枚岩ではないとわかった。グローバル経済の中で米中などの大国とどう向き合うかという課題があり、ヨーロッパが新時代にふさわしい戦略を模索していることがわかった。
■EUがめざす民主主義、人権、環境といった価値は、かつて経済競争の先頭に立った欧州ゆえにその痛みや代償を誰よりもわかっているという自覚によって、優位性が倫理にこそあると捉えられている点は、EUの統合の理念の根幹であると感じました。
■EUの制度的課題についてよく知ることができた。とくに、金融政策は中央銀行中心におこなわれているのに対し、財政政策は政府に残されていることで、欧州全体としての経済政策の調整が難しいという点が、EUの標語である「多様性の中の統合」の難しさを象徴する課題であると感じた。
・・・> 正確を期していま一度整理しますと、合衆国でも連合王国でも日本でも、統合前の西ドイツやフランスでも、金融政策は中央銀行が主体(合衆国はやや特殊で、連邦準備制度理事会=FRBがその主体となる)、財政政策は政府が主体です。中央銀行と政府の呼吸が合わず、ポリシー・ミックスが適切に稼働しないことも、しばしば起こります。いわゆるバブルを発生させた1980年代後半の日本経済では、財政再建(国債の発行抑制)をめざした政府が財政出動を嫌がったため日銀の利下げ(金融政策)が過度に推し進められ、過剰なマネーが市中に流れた結果、無用なまでの投機がおこなわれてバブルになりました。また現在進行中のことでいえば、トランプ大統領はFRBに利下げを迫っていますがFRB側は抵抗していて、トランプによる議長更迭も近いとみられています。統合後の欧州では、金融政策は各国の中央銀行の手を離れ、フランクフルトの欧州中央銀行(ECB)の担うところとなりました。これに対して財政政策は各国政府の手の中に残っている、ということです。実はあえてそのようにしています。財政は主権国家の生命線だというのもありますが、欧州全体のマクロ調節と、よりきめこまかな対応が求められる各国単位の調節とを連動させつつ、趣旨や手法をずらすことで、調和を図っているのですね。
■EUとその加盟国はどのように権限を分担しているのか?
・・・> 前回お休みになったと思いますので、スライドをご確認ください。補完性(subsidiarity)原則が作用します。
■宗教・文化・言語等々あらゆるものが違う数十ヵ国が同じルールの下で統合されるというのが、なぜ成り立っているのか不思議に思うし、単純にすごいとも思った。ただ、複雑化され、EU加盟国の国民には制度をよく理解できない層もあるのではないかと思うし、民主主義としてどうなのかと思った。
・・・> 日本の選挙制度(衆議院・参議院とも)も非常に難解で、理解できない層というか思考を放棄している層や人たちも相当いて、民主主義としてどうなのかと思うぞ。
■それぞれの国でマジョリティの人でも、欧州全体の中ではマイノリティであり、みんながマイノリティになるという視点は、多様でありよいことだと思った。しかし一方で、意思決定における不透明性や複雑性という課題があることが印象に残った。欧州委員会があるブリュッセルから地理的に遠い場所が多いこと、あるいは機関や選挙の段階が多いがゆえに構造が複雑になっていることがわかった。これは民主主義の実感が湧きにくいだけでなく、政策が一歩遅れたり、加盟国間の利害の相違が生じやすかったりすることにもつながるのではないかと思った。

(左)ブルガリア ルセ (右)ポーランド グダンスク
■EUの国に住んでいた経験があり、ボーダーフリーのおかげで自由に移動できて便利であることは実感していたが、その裏でテロやウィルスが簡単に広がってしまうリスクも大きいのだとあらためて気づいた。EUに住んでいたコロナ禍のときには、最初は遠い国の話だったのに、気づいたら周りの国々にも一気に感染が広がっていったという当時の話が思い出された。
■EUは国家の壁を越えた大きな組織で、それで内部ではイギリスをのぞいて肯定的な考えが多いのは、グローバル化の一途をたどる世界において貴重な成功例なのだと思いました。サッカーでも、スペイン等のリーグでは非EU枠の制限があり、裏を返せばEU内では労働力が自由に動けるということを表しているのだと思いました。
■あらためてEUという国家集合体がもつ側面の複雑さ、難しさを感じた。ひとつの連合として隣接・集中する地域として、なにかとまとまるのはよいことのように思えるが、その反面、発生する問題点にどうしても宗教や言語といったアイデンティティの要素が含まれてしまうことを考えると、私にとってはEUの存在意義に疑問を感じてしまうところがある。またEU加盟国は比較的「唯一の○○」、つまりなにかしらのマイノリティ要素をもっていることが多いように感じた。もしEUの中で排外主義が生まれてくると、いくらでも排外要素をつくれてしまうではないか、と思った。
・・・> ちょっとわかりにくい部分があります。(1)EUであれ各国であれ(仮に日本であっても)宗教や言語といったアイデンティティの要素は含まれますし、それが小さくなることはありません。むしろ各国単位のほうが対応は難しくないですか? (2)マイノリティ要素というのはわかりますが「唯一の」とはどういうことでしょうか? その国の国内に限定される「唯一のもの」は欧州全体だとマイノリティになるということ? もう少し論理的に整理できれば深まりそうですね。排外主義というのは、マジョリティがマイノリティに対して起こす傾向のことですので、元が多様なEU全体で起こるとすれば、最近になってEU圏内にやってきた非欧州人に対するものくらいでは?
■欧州連合というしくみは、他の連合体に比べて固まっておらず、柔軟なしくみであると思った。ユーロを使用するのか、国境を越えるときに手続きが必要なのか、その国に合った方法を採ることができるため、加盟のハードルが低いと考えた。同じユーロを使用している場合、国ごとに物価や景気が違うことによる為替調整ができないという問題も生じるため、欧州連合はよいものであると決めつけられないと思った。また加盟国間での結びつきが強いため、柔軟なしくみではあるが、課題を改善することは難しいと考えた。同じ通貨、国境の出入り自由という欧州でも、裏を返すと問題があり、連合や条約はその裏の部分まで見る必要があると思った。
・・・> 傍目八目(おかめはちもく)という言葉があります。「よそ」のことは、裏までよく見えるのです。「自分たち」の構造や裏の部分まで、ちゃんと見ることができているでしょうか?
■前回は、主権国家を超える実験場としてのEUがもつ強みについて学んだが、今回はEUの課題として、経済の問題や産業・雇用の不均衡化、意思決定プロセスの不透明性などを学び、多くの主権国家が束になることの難しさを感じた。変わりゆく世界情勢において、これからのEUはどのような道をたどっていくのか注視したい。私は、いまよりも少し結束の度合いが緩むと予想する。また、EUがない世界線のヨーロッパはどうなっていたのか、かなり気になる。
■モンテネグロ、コソヴォは、ユーロを非公式に採用しているとあったが、「非公式」とは国が承認していないにもかかわらず取り入れているということ?
・・・> 承認していないのは国家のほうではなくユーロの発行元である欧州中央銀行(ECB)です。経済・金融を学ぶとわかりますが、通貨というのは何よりも「通用すればいい」という趣旨のものですから、公式に採用されていても通用されない通貨もあれば、非公式ながら普通に通用することもあるのです。古い話では、中世(鎌倉・室町期)の日本では独自通貨の発行をしておらず、宋や明で鋳造された銭貨を「輸入」して、それが決済手段となり商業が発達しましたよね。モンテネグロは旧ユーゴスラヴィア連邦構成国(国家内国家)だったため、その当時はユーゴスラヴィア・ディナールが法定通貨でした。連邦の解体後は、国家自体が内戦や社会崩壊にさらされて信用を失ったため、欧州で最強だったドイツ・マルクを非公式に導入して流通させました(ボスニア・ヘルツェゴヴィナも同様)。安定を回復したのちも、国家の規模がかなり小さいため、独自通貨をいまさら決めたところでマルクなどに対して大幅に下落することが見込まれるため、ひきつづきドイツ・マルクが用いられたのです。そして1999年(現金は2002年)にマルクがユーロに移行した際に、そのままユーロが採用され、現在にいたっています。ECBとのあいだで公式の合意がありませんので(ユーロ圏入りするには経済指標が不足しすぎて、たぶん無理)、いまのところはユーロ圏の経済に一方的にぶら下がるという状況がつづいています。主権国家としてどうなのかという指摘は、まあほどほどにしておきましょう。人生いろいろ、国家もいろいろです。コソヴォも同じく旧ユーゴスラヴィア連邦に属していましたが、主権国家化の経緯がもう少し複雑で、いまも半ば国際管理のような状態にあります。EUが「保証人」になっている関係で、欧州で最も安定しており発行量も多いユーロを当然のように流通させているのです。未承認国家である北キプロス・トルコ共和国の法定通貨はトルコ・リラなのですが、ユーロがかなり流通しているようです。私が「入国」したときには、そのような越境観光客向けだからでしょうが、品物の金額表示がユーロ一択ということが多くてびっくりしました。
■EU、ユーロ圏、シェンゲン圏はこんな感じですか?

・・・> こんな感じですね。ユーロ圏だけというのは、あるのかないのか(難しいところです)。EU非加盟・ユーロ不採用だがシェンゲン圏というのは4ヵ国(アイスランド、ノルウェー、スイス、リヒテンシュタイン)ではないでしょうか。アンドラ、モナコ、サンマリノ、ヴァチカンは実質的にユーロ圏なので。
■EUのよい点として、EUで一つの国家のようなものを形成し、個々の価値観が尊重されているということがあるが、デメリットは組織が大きすぎることで、ミクロな視点で事柄を見ること、考えることが難しいのだと感じられた。
■欧州は、宗教や言語によるアイデンティティの共有と対立を繰り返している。そのような環境において統合を進めているが、それぞれの主権国家によって有している課題は異なっている。また経済格差も深刻であり「EUにぶら下がっている」国も複数存在している。しかし実際、市民からすると、隣の地域に少し行くだけなのにパスポートやビザが必要となってしまうと、面倒なものである。つまり政策の統合は難しいが、文化の共有は可能(実際におこなわれている)と考えられる。

(左)キプロス レフコシア(ニコシア) (右)ポルトガル リスボン
■傾向が似ている部分もあるけれど、EUの国それぞれに違った特色をもっているなと感じた。また国の中の都市でもまた違った雰囲気、特徴をもっているなと思った。シェンゲン圏に入っていればこの違いを気軽に楽しめるというのは、EUの大きな要素であると感じた。
■ヨーロッパは、領土の変化が激しかった(とくに東欧は、占領→独立という流れを経験した国が多い)ので、町並などにその跡があらわれていて、おもしろいと思った。ポーランド、チェコ、スロヴァキア、オーストリアなどの併合は歴史の授業を通して知っていたが、現在どうなっているのかを知らなかったので、とてもおもしろかった。スライドを見ていると、町並、言語、食生活がほぼ一緒であるように感じられるところがあり、あらためてアイデンティティ形成の難しさとその多様さを認識した。実生活に近いところを知ることの重要性がわかった。
■写真を見ると、実物は全然違うのだと思うが、料理が全部似ているように見える。
・・・> 多様だとか相当に差異があると感覚的に思うのは、私が欧州の内部に浸りきっているせいでしょうかね。少なからぬ日本人には「欧米」「西洋」は、人も景観も文化も同じように捉えられるのかもしれない。同じように、欧州の人たちから見れば、日本と韓国と中国と、場合によってはタイやシンガポールあたりも違いを認めてくれず、「アジアの東のほうはほぼ一緒だよね」と思われるのではないか。お箸でライスなる穀物を食べるエリアは、顔立ちも食べ物もさほど違いを見出してはくれないように思います。
■授業の後半でEU加盟国の紹介があったが、たしかに多様ではあったが、ところどころ似た部分があり、いうならば「ヨーロッパ的」な雰囲気が見受けられた。EU加盟は、「ヨーロッパ的」な印象、ひいてはヨーロッパ世界という概念を保全することにも役立っているのではないかと考えた。
■パスポート不要で他国に自由に渡れる感覚がどんな感じなのか気になります。
・・・> チェック(コントロール)がないというだけで、パスポートは携帯しないとだめですよ。
■訪れる地域、国の知識をもっていると、その地の景観から文化、食事にいたるまで、そのような姿かたちになった背景の裏づけをもって観光できるので、とてもおもしろそうだと思った。一人旅は好きだが、国内の景色がきれいな場所をテキトーに回っていただけだったので、その地の歴史や文化、地理を学んでから行こうと思った。
■ヨーロッパには一度も行ったことがないが、行ってみたいなと思う国がいくつかあった。その一つにデンマーク王国がある。「高福祉で居住満足度では世界一」と聞いて、住んでみたいと思った。また、もっている諸島に行けるのが強いと思った。
・・・> フェロー諸島とグリーンランド? もちろん国内扱いで行けるのですが、ドイツにもフランスにもイタリアにも同じように「行ける」ということを忘れていませんか?
■デンマーク王国は、大陸に領土があるのに首都は島にあるというのが、首都が離れていて特殊だなと思った。
■大陸に領土があるのに島に首都があるデンマークが興味深いと思いました(もう一つは赤道ギニアだとわかりました)。スウェーデンからの侵略を防ぐため軍事上の要衝の地として栄え、貿易で栄えて最大の都市となったコペンハーゲンが、デンマークの首都となった。アンデルセンやレゴなど、文化や創造の面でも、世界に影響を与えているとわかった。
・・・> ことしの2月に、対岸にあたるスウェーデンのマルメを訪れたら、そこはスウェーデンとデンマークが奪い合った土地ゆえに、歴史の書き方が微妙でした(笑)。スウェーデンをそこまで悪く書けないのでしょうね。いまコペンハーゲンとマルメのあいだのエーレスンド海峡は、海底トンネルと長大橋梁を組み合わせたエーレスンド・リンクによって直結されています。もちろん出入国管理はありませんので、電車に乗ったら25分くらいで普通に着きました。「ハムレット」の舞台になったクロンボー城は、海峡が最も狭くなっているシェラン島(コペンハーゲンの所在する島)北東部にあります。バルト海にフタをするような、まさに要衝であったわけですね。
■ブダペストのペストの名の由来は何ですか。
・・・> 知らん(笑)。ウィキペディアを見たら諸説あるようでしたよ。
■これからクリスマスの時季になりますが、どこがいちばん魅力的ですか?
・・・> キリスト教の本場なので、それぞれの魅力があって、好みが分かれるのではないでしょうか。日没後の雪明かりに映えるクリスマス・マーケットと教会、という絵柄が好きなのであれば、ドイツ語圏(ここがマーケットの元祖)がよいだろうと思います。注意してほしいのは、信仰の篤い地域、とくにカトリック圏では、12月25日と、場合によっては26日(ボクシング・デーまたは第2クリスマスと呼ばれる)はほとんどのお店がクローズになるということです。英国では鉄道や空港バスも全休になっていてびっくりしました。カトリック圏のリトアニアで、25日に営業するお店が多かったのには逆の驚きでしたが、憶測ですけれど社会主義時代が長かったので宗教ベースで動く習慣が認められなかったのではないかと思います。

(左)スウェーデン マルメ (右)イタリア ジェノヴァ
■欧州各国の紹介では、イタリアが1860年代に統一されたことや、ギリシアは意外に中東顔、フィンランドは頭がよいことなどを知って驚いた。個人的にデンマークに行ってレゴを買いたいと思った。
・・・> どうしても国家を主語にした擬人法的な表現になりがちですが、「フィンランドは頭がよい」ということはありますまい。それと、私は教育学が専門なので、学生にはしばしば申していますが、学力が高い/低いことを「頭がよい/悪い」と表現するのはなるべく避けましょう。「頭がよい/悪い」というのは子ども語の一種です。ちゃんとした言葉を使わないと頭が●く見えてきます(笑)。
■オーストリアが、第二次大戦のときにファシズムに呑み込まれそうだったとおっしゃっていたが、大きな国や権力の盛衰がみられ、米英などの国は永続的なものではないのだと気がついた。
■レアルとバルセロナの試合は直近のものも荒れていたけど、やった側とやられた側の試合となると、選手は直接関係していなくても厚くなるというのは納得できる。
■マドリード対バルセロナの試合は、歴史的背景があることから非常に盛り上がるマッチだが、たとえばブラジル出身でこのチームに所属している選手なども、背景を知っているのかどうか疑問に思った。ヨーロッパの歴史を見てみると、サッカーではひとくくりに「国の代表」として出場するのもなかなか難しいのだと思った。
・・・> 助っ人として「加入してやった」と上から目線で思っている選手ならばわかりませんが(日本のチームに加入する大物外国人にはありえそう)、レアルやバルサについてはさすがにわかっているんじゃないですか。7〜8年くらい前のことですが、バルセロナの3トップが、ネイマール、スアレス、メッシだったことがあり、ネイマールはポルトガル語、スアレスとメッシはスペイン語(カスティーリャ語)を母語にしているのだがバルセロナの公用語はカタルーニャ語で、まあ微妙だなあと思って、見ていました。もっとも欧州で活動するフットボール選手は、たいていマルチリンガルになりますけどね。
■ポルトガル共和国は「避寒地」とあった。避寒地とは聞きなれない言葉だったが、たしかに避暑地があるなら避寒地もあるのかと思った。またポルトガルとスペインは隣で、経度もあまり変わらないのに時差が1時間あるのが不思議な感覚だった。
■EU加盟国には、国のできる過程や文化などがそれぞれにあるが、あらためて写真を見ると総じておしゃれな町並や食事が多いなと思った。経度で見るとイギリスとポルトガルとフランス、イタリアなどのあいだに時差があるように、ポルトガルとスペインにも時差があることに疑問をもった。それは第二次大戦前まではすべてイギリスと同じタイムゾーンだったのに、大戦中にドイツの時間に合わせようとフランスやその周辺の国々、さらにスペインも1時間早めてしまって、位置と時差が比例しなくなってしまったのだとわかった。
・・・> 標準時というのは、原則的には経度15度で1時間の時差を設けることになっています(地球一周の360度を24で割れば15度になる)。ただ、同一国内や同一経済圏内に時差があると、経済活動の妨げになりますので、必ずしもデジタルに区切られているわけではありません。経度0度の子午線が通る英国(ロンドン)の冬時間を世界標準時とする考え方を協定世界時(UTC)といいます。いまは冬時間なので、ロンドンはUTC±0ということになります。日本は兵庫県明石市の東経135度が標準なので、(135-0)÷15=9 となり、タイムゾーンはUTC+9と表現されます。日本は夏時間を採用しないため、夏の英国との時差は8時間。EUの多くの地域は、ご指摘のようないきさつもあってUTC+1の「西欧標準時」を用います。パリからロンドンまでユーロスターに乗ると、経度的にはほぼ真北に進むのに(パリは東経7度)、時計を1時間遅らせなくてはなりません。このごろは海外でもネットだのみになり、テレビを観る機会も減っているでしょうが、大陸側で英BBCなどを観る際には、画面上の時刻表示に気をつけましょうね。出動時間を1時間ずれて認識してしまう恐れがあります。
■写真をたくさん撮っていますが、どこの何って忘れたりしますか? よい管理方法はあるのでしょうか。私はよくごちゃごちゃしてしまいます。
・・・> 細かいことは忘れちゃいますし、忘れていいことにしています(記憶する価値がないから忘れたわけなので)。実はものすごい量の写真を撮っているんですよ。で、あえてファイル名を変更したりせず時系列のまま日ごとのフォルダに入れています。写真の被写体は歩いたルートに沿って並んでいるはずなので、どうしても思い出したいのであればストリートビューをなぞればいいわけですよね。
■私が推したい国家はルクセンブルク大公国です。神奈川サイズにもかかわらず(だからこそ?)GDPが世界トップであるところや、なんといってもスライドに載っていた箱庭的な町並と都市との対比がよいと思いました。欧州は古い風景が見られてうらやましいです。空襲による東京の古い町並の焼失は、景観の保存という点でも非常に悲しい出来事だと感じました。
■私のお気に入り国家はオーストリア共和国を挙げたいです。幼少期から音楽が生活の一部だったので、音楽の都ウィーンを生きているうちに一度は訪れてみたいと思っていました。「ラデツキー行進曲」の話がありましたが、作曲された背景を知らなかったため、何度も演奏したことのある曲に対する見方や聴き方が、再度改まった気がします。それぞれの国家の色がとても強い一方で、EUという一つのまとまりとして成り立っているこの状況を、あらためてすごいと感じました。
■それぞれの国の写真を見て、「この国っていう感じがするな」と思う国が多くあった。国ごとに異なる印象が広まっているのだと思った。
■授業の後半を通しての推し国はポーランドです。町並が素敵。ポーランド版ギョウザおいしそう。
■イタリアの食事といえばパスタとピザしか知らなかったが、カツレツが本当においしそうで、食べてみたい。
■ヨーロッパはごはんがどれもおいしそうで、お昼ごはん前のこの時間だと、ほぼ飯テロですね。仔牛のカツレツ、とくに食べてみたいです。
■クロック・ムッシュ―食べたいです。

クロック・ムッシュ―集 パリで軽くランチというときの定番だったのだけど最近は昼食抜きにしているので食べていないな〜