Découvrir Lisbonne
et l’Océan Atlantique
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PART 5 |
トラムは平地、じゃなかった低地のバイシャ地区に下ってきました。さきほど歩いたところとつながって、お城の周囲をぐるりと一周したことになります。晩ごはんまで1、2時間ほどホテルで昼寝しようと思うのですが、その前に晩酌用のワインを買っておこう。バイシャ地区の一隅にけっこう立派な構えのワインショップがあるのをさっき確認していました。30歳くらいの女性店員さんにポルトガル産の赤ワインがほしいと申し出ると、すぐにいくつかの候補を取り上げて特徴を解説してくれました。ポルトガルといえば第一にはポートワイン。港町ポルト付近で産する強化ワイン(ブランデーなどの蒸留酒を加えて発酵をストップさせ、甘みを残したもの)で、フランス料理でよく使う「ポルト酒」というのも同じものです。嫌いではないのだけど、フルボトルを買って2晩で飲みきる自信はなく、普通の赤ワインがいいや。「ポート以外のポルトガル・ワインもなかなかすばらしいですよ。ほら、これとかこれとか」と、おねえさんは淀みない英語でリキを入れてきます。ユーラシアの西端まで来たのだからケチらなくてもいいけど、€50とかいわれると、やっぱりねえ(笑)。「なるほどすばらしい。ただ、これはプレゼントではなく私自身が今夜ホテルで開けて飲むものなので、もう少しカジュアルなやつでいいです」といったら、それはそれで候補が提示されました。ダオン(Dão)はフルボディで美味ですよ、というのでそれにしました。€17.50と、たしかにカジュアルで結構ですが、日本で買ったらたぶん倍くらいにはなるでしょうね。ダオンはポルトよりも少し南の地方で産するワインだそうで、あとで調べるとポルトガルに住んでいたこともある作家の壇一雄が「ダン」つながりだというので愛飲したのだそう。ポルトガル語独特のãoという母音を私は「アオン」と書き取っているのですが実際には「アン」との中間くらいのもので、壇先生には心地よい響きだったんでしょうね。ダンさん大和田さんはダンさん!(ダンと聞くとすぐこのネタを持ち出すのは昭和の人・・・なのですが、NHK「連想ゲーム」で大和田漠のトイメンにいた壇ふみは壇先生の長女です)
青メトロに乗っていったんホテルに戻りました。やー、よく歩いたなあ。カメラと本人の充電(昼寝)を図ろう。でもその前に、買ってきたばかりのダオンをグラス1杯ほど賞味。濃厚な感じがして美味しいねえ。海外旅行するととかくスケジュールが込みすぎて日程後半には疲労がたまってしまいます。少しの時間でもお昼寝しておくといいですよ。18時半ころ、あらためて晩ごはんを食べに出かけることにしました。ガイドブックなどという軟弱なもの?は使わず、見て歩いてテキトーに店選びするつもりです。 飲食店が多いのはバイロ・アルトとバイシャ。バイシャ地区は昨夜の客引きの感じが好ましくなかったため、高台のバイロ・アルトにしようかな。昨夜と同じく青メトロでレスタウラドーレスまで行って、けさ乗ったのと同じケーブルカーのグロリア線で上の駅へ。あらためて展望台からサオン・ジョルジェ城のほうを見ると、ライトアップされたお城もいいですね。リジュボーアは大都会の部類に入るはずですが、町の発光は全体に抑えめで、暗い部分が目立っています。建物の低さと密集具合が関係しているのですかね。 今朝は展望台というか上の駅のそばをすぐ南下したのですが、バイロ・アルト地区のコアはもう少し西側なので、適当に入り込んでみました。縦横のいくつかの筋に飲食店の灯りがみられ、同じようにディナー会場を物色している人たちがいるのだけど、にぎやかというほど明るくも人が多くもありません。それでいて物騒な感じがしないのはなぜでしょうかね。せっかくだから当地らしいものを食べたい。でも、いかにもな観光レストランは嫌だなあ。しばらく歩いてこの地区の感じはつかめましたが、要は飲食店を中心に観光化されすぎて、こちらが望むのとは離れてしまっているようです。1軒のレストランをのぞいたら初老の客引きが出てきて、どこから来ましたか? 日本人? コンバンハ。とありがちなアピール。店内にもっといろいろなメニューがあるよといわれたので、まあいいかと入ってみたら客は他にないし、メニューは少ない上に観光相場です。ついにはステージ衣装を着た中年の女性が現れアンプのセッティングなどはじめたので、これはファド(ポルトガル庶民の歌謡)を強制的に聴かされるぞと思う。ファドは別にいいけど、たった一人でまずい食事をとりながらワンステージ終わるまで居つづけて盛大な拍手とチップを強要されるのはかなわんなあ。メニューはお決まりですかと店員が聞きにきたので、Sorry, I don’t like it.と告げて辞去することにしました。店員は、わぁおと肩をすくめるおなじみの欧米ポーズで応えました。すまんね。 バイロ・アルトはどうも手に合わないみたいだぞと思い、カモンイス広場からそのまま南下する道をたどりました。午前中にトラムの登り下りを取材した地点の南側、もう海抜ゼロに近いゾーンに下りてくると、そこは場末の表情。別にヤバそうだというのではなく、うらぶれていて、たまに開いている飲食店もさびれきっています。と、道路の向こう側から女性が声をかけてきました。ハローという声は彼女の風体に似ずずいぶんべたべたの発声。その先の角でも別の声がかかりました。場末の地区とはいえ、首都の繁華街から数百メートルのあたりで立ちんぼさんが出るとはねえ。パリは最近取り締まりがきびしいらしく、都心あたりではほとんど見かけなくなりました。2人とも年齢は私と変わらないくらいと見受けました。商売になんのかね。
カイス・ド・ソドレ駅
地平にある駅は行き止まり式の櫛型ホーム。ここは近郊線専用なので、長距離ターミナルのような旅情は皆無です。上り便から降りてくる通勤客だけでなく、私のようにこれから下りに乗ってどこかへ行こうという人も多く、狭いホームはほぼ人で埋まっていました。切符売り場でカスカイスまでの往復を頼むと€2.15×2で€4.30。ただ、「3日乗車券」として使用中のヴィヴァ・ヴィアジェンの重複利用は不可で別に買わなければならないらしく、あらためて€0.50が徴収されます。全自動になっているのはいいとしても、乗るたびに€0.50払うのはどうかなあ。ま、カリス(メトロ・トラム・バス・ケーブルカー・エレベータの運営会社)とポルトガル鉄道(CP)の2種類あればいいということか。仕様が双方向乗り入れになる前のSuicaとPASMOみたいなもんだと思えばいいのですね(それよりははるかに安価です)。自動改札を通ってホームに出ても望みの便は来ていません。パタパタ式の出発表示板の情報はあてにならず、といってポルトガル語はわからないのでアナウンスの内容も不明のままです。そのうちホームの両側に列車が到着。地元の人たちも「こっちでいいのか」「いやあっちだ」と発車ぎりぎりまで迷っている。乗った車両の中でカスカイスには行かないみたいな英語を察知したので、反対側の車両のそばにいた中年の車掌に「こっちがカスカイス?」と聞いたらそうだといいます。ただ、周囲がどうにもバタバタしている。向こう側(最初に乗ったほう)の列車が出発間際になるとみんな移っていくので、私も。リジュボーア〜カスカイス線はたぶん支線がない路線なので、誤乗したとしても途中駅どまりということだから実害はないことでしょう。東京の電車と同じようにドアの上に列車種別ごとの停車駅を示した図を掲示してあり、どちらかが急行だったとしても大丈夫だと踏みました。――と思ったら、さきほどの車掌が大声で「カスカイス!」といいながら車内を通り抜けました。何じゃそりゃ。 カスカイス行きの車内から どたばたした挙句に9時15分ころ、カイス・ド・ソドレを出発。線路はすぐテージョ川の右岸に取りついて、対岸のアラビダ半島とを結ぶ4月25日橋をくぐり、その先で大西洋岸に出ました。実は大西洋を見るのは初めてなんです(前々日に上空から見ているのをのぞけば)。カスカイスまで30分ほど、海岸段丘の上を走る感じとか別荘地らしき車窓風景、左手に海を見て進む雰囲気などが伊豆急で南下する場面に重なります。リゾート地として知られるエストリル(Estoril)には3つほど駅があり、いずれも海に近くて「洗われる」感じ。そのあたりで半分ほどのお客が降りました。エストリルから数分でカスカイス駅に到着しました。行き止まり式のホームがやっぱり下田駅っぽいなあ。
前ドアから乗り込み、運転士さんに「カーボ・ダ・ロカ(ロカ岬)に行きたいのですが」と告げると、「カーボ・ダ・ロカ」と復誦して、€3.25の運賃前払いを請求しました。ここまでの鉄道といい、思ったより安いなー。外国でバスに乗る際には、こういうふうに行き先を伝えておくと誤乗を防げるほか、その停留所で「ここだよ」と教えてくれる恩恵を受けられます。鉄道と違ってどこで降りたものかわかりにくいですからね。バスは前半分が低床、後ろが高床の東京でもよく見るタイプの新型で、私はもちろん運転席横の最前列かぶりつき。カスカイス駅周辺はよくある郊外の景観でしたが、10分も走らないうちに田舎の国道みたいなところになり、乗車も下車もほとんどありません。車内には私と2、3人になってしまいました。ユーラシアの最西端はどうやら結構な標高のあるところらしく、バスはぐんぐん登っていきます。日本だったら沿道にゴルフ場の1つや2つはあるところだなきっと。そのうちシントラに向かう本線筋から左に折れ、見晴らしのよい「丘の道」に突入します。向こうに海が見えているものの高原の風情で、伊勢志摩あたりで見たことがあるような景色ではあるけれど、ここには建物ひとつありません。そして、次々に現れるカーブをさほど減速しないで通過するため、崖下や対向車がちらついて非常におっかない! 運ちゃんは毎日のことで熟練しているのでしょうけどね。 カスカイス駅から25分くらいでロカ岬に着きました。本線筋から折れてから5分くらい走ったと思います。停留所はラケット状の折り返し場になっており、そこに隣接して案内所が建っていました。灯台と、少し離れてレストランらしきものがある他には何もなく、要は最西端の観光のためだけに取りつけ道路が造られたということですね。先客が15人ほど。うち10人くらいは自転車に乗ってきたらしい学生グループで、大声を上げて写真を撮り合っています。
大西洋(Oceano Atlântico) |
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