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PART2


 
トラムで中央駅電停へ

 
 
ウィーン中央駅




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系統はいま来た道(リンク)を反時計回りに進み、オーパーのさらに東まで進んだところでリンクを外れて南に向きを変えます。ビジネス街のようなところをコトコト進んで、着いたところは明らかに駅の裏口。鉄道線路のガード下にホームがあり、オーストリアの鉄道には改札がありませんので、そのまま直接各番線のホームに行くことができます。せっかくトラムを乗り入れるなら裏でなく表玄関のほうがいいのにと思うのですが、中央駅自体が最近になって造られたため、少しややこしいことになりました。ロンドンやパリがそうであるように、ウィーンも鉄道のターミナルは方面別に分かれていました。ここに10年ほど前まであったウィーン南駅(Wien Südbahnhof)は、オーストリア南部からの線路と、東のハンガリー方面からの線路がそれぞれ行き止まりのターミナルをもち、行き止まり部分を突き合せたようなL字状をなしていました。これでは不便だというので、周囲の再開発も込みで大改造が施され、2014年に通り抜け式の大ターミナル、ウィーン中央駅Wien Hauptbahnhof)として新たに生まれ変わったわけです。裏口といったあたりはかつての東方面へのターミナルの「表」でした。トラムまで移設するのは大変ながら、新・中央駅は町はずれにあるのだから、都心部への移動手段は集約したほうがいいと思うけどな。


大改造中だった20139月のウィーン中央駅


階段を登ってみると長いホームの東端でした。ホームづたいにメイン・コンコースに向かいます。いちばん北側のホームにドイツ鉄道(DB)の新幹線ICEが停まっていました。ICEにもあちこちでずいぶん世話になりましたが、在来線に乗り入れてどこにでも顔を出す機動性ではフランスのTGV以上かもしれません。どうやらプラハ行きのレイルジェットRailjet)がやってくる時刻が近づいているらしく、たまたま顔を出したホームには大荷物のお客がたくさん出ていました。あすブダペストに向かう列車もレイルジェットなので、いい下見になります。1110分発のRJ74便はグラーツから来て、この先はスロヴァキアとの国境付近を北上し、国境を越えてチェコ共和国のブジェツラフ(Břeclav)、ブルノ(Brno)を経てプラハ本駅(Praha hlavní nádraží)に向かうとのこと。スルー構造の中央駅ができたおかげでグラーツからの直行便を走らせることができるようになったわけですね。プラハ本駅を利用したのはちょうど5年前の今日なので、もうずいぶん前になりました。冷戦アタマのままだと錯覚を起こしそうですが、ウィーンよりもプラハは西に位置するため、地図イメージとしては左上に進む感じになります。


 

 
ウィーン中央駅の構内 21世紀の新ターミナルだけに上品な感じにまとめられている



市内の小売店は一斉休業ながら、駅ナカだけは営業していた!


高架ホームの階下にコンコースがあります。それこそプラハ本駅を思い出すような、天井低めの待合ゾーンがあるなと思ったら、線路を外れたところは吹き抜け式になっていて、けっこう明るく、造りがエレガント。よくできています。欧州の都市でよく見かけるファストフード・チェーンを中心に軽食堂が並んでいるのに、空間デザインが上手なのか、俗なフードコートのような感じがない。11時半なのでお客はまだそこまでではありませんでした。待合コーナーの一角、「表玄関」のバス乗り場に出るところにスーパーのINTERSPARが見えました。オランダに本拠のあるSPARは、とくにドイツ語圏でよく見る気がしますが、INTERはコストコやカルフールのような大型業態ではなかったかな? これは新宿駅ナカの成城石井くらいの規模と構成のようです。町なかのスーパーやコンビニはどこも開いていないので、荷物になるけどここでワインとビールとお水を購入。歯ブラシないかなと思ったものの、サニタリー方面は置いていないようでした。2区画に分かれた店内はまっすぐ歩けないほどの混雑で、おそらく市内の一般店舗が休業しているので、鉄道利用者だけでなく、ここをアテにして買い物する人が多いのでしょう。


地下1階にはスタバなど飲食店と、地下鉄への連絡通路などがある

思ったよりも重厚でよく整った中央駅が完成していました。そういえばベルリン中央駅も、市内を少し外れたかつての壁の跡に新設されましたが、ここと似たテーストでした(規模はベルリンが勝る)。交通体系の現代的な見直しということを考えると、方面別・行き止まり式ターミナルというのはたしかに時代遅れかもしれません。首都圏では湘南新宿ラインや上野東京ライン、関西では近鉄と阪神の直通運転などが、伝統的なターミナルをスルーする取り組みにあたります。


 
(左)ÖBBから地下鉄へは長すぎる通路を (右)地下鉄U1の車内

 U1の車両(シュテファンスプラッツ駅)


ちょっとしたショッピング・センターを兼ねたような中央駅でも、前述のSPARをのぞけば飲食店と本屋とタバコ屋だけが開いていて、ブランド店、衣料品店、そしてドラッグストアのたぐいはすべてクローズ。徹底しとるな。この1週間後、元日の夕方にJR博多駅に隣接する大型デパート(博多阪急)に行ったら、上から下まで大変なにぎわいでした。日本はいいなというのか、日本はダメだなというべきか。

4年前に中央駅を利用した際にもたしか地下鉄で都心に戻ったと思うのですが記憶がはっきりしないし、そもそも大改造後の姿を知りませんので、これも偵察しておきましょう。地下にも広がるショッピング街を抜けると、ÖBB Bahnhof Cityという看板を掲げたゲートに出ました。この先もしばらく地下通路がつづきますが、ここまでがÖBBすなわちオーストリア連邦鉄道Österreichische Bundesbahnen)の敷地で、この先は地下鉄の担当区画のようです。JR東京駅と東京メトロ大手町駅あるいは八重洲地下街との境目のようなものでしょう。それにしても長い通路で、東京駅から東西線大手町駅までよりずっと歩かされます。新設したメイン・ターミナルなのに都心アクセスが脆弱なままなのはやはり気になります。ここに乗り入れているのはリンク内を南北方向に貫通するU1で、とくに考えずに乗り込んだら逆向きでした。あらら。乗り降り自在の切符をもっているので、適当なところまで行って折り返し、大聖堂の真下にあるシュテファンスプラッツ駅(Stephansplatz)で下車。


 
クリスマス・マーケットも出てにぎわう正午ころのシュテファン大聖堂付近


静謐でいい雰囲気の大聖堂東側(ツェドリッツ通り)

 
リンク東辺、市立公園付近


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時間ぶりに今回3回目の大聖堂前に来てみると、正午になっているため大勢の市民と観光客でごった返しています。クリスマス・マーケットは大聖堂裏の路面に展開して、土産物やホットワインなどを売っています。夏場に来るのとではやはり印象が違います。しっとりしていい雰囲気。先ほど買ったワインやビールが重たいので、一度ホテルに戻ってこれらを置いてこようと思いますが、まっすぐ戻るのも芸がないので、リンクの東側に行ってみましょう。ウィーン・ミッテ駅の直上には大きなショッピング・センターがあったと記憶しており、中央駅にあったような駅ストアを含めて買い物できる店があるかもしれません。

シュテファン大聖堂から東に向かうシュラー通り(Schulerstraße)、その先のツェドリッツ通り(Zedlitzgasse)を進みます。リンク内の散策は本当にラクちん。よさげなホテルなどもいくつか見えたので、今度来るときにはもう少しいろいろな宿を探してみよう。


ウィーン川


リンクに出ると、そこは市立公園(Stadtpark)の前でした。前回歩いているし、冬場は何とも寒々しいのでここはいいや。公園の中を、ウィーン川(Die Wien)が流れています。市の西側に広がるウィーンの森(Wienerwald)に発し、ウィーン市内の南をゆるやかに流れてここに到り、もう少し先でドナウ運河に注ぎます。こういう水路が都心部にあるとその周囲の空間が広くなり、ゆとりが感じられます。町なかには必要な部分でしょうね。



 ウィーン・ミッテ駅


ウィーン川を渡ってすぐのところにウィーン・ミッテ駅Wien Mitte)があります。ミッテというのは英語でいえばcentre(米語ではcenter)で、中央駅(Hauptbahnhof)ではなく市の真ん中にある駅というニュアンスでしょう。紛らわしくなるため中央駅が造られてから日本ではミッテ駅とカタカナ書きするようになりました。ÖBBの線路とホームは地下にあり、空港行きのシティ・エアポート・トレインもここに発着。空港アクセスの列車やバスをわざわざ市の中心から外れたところに着ける都市がしばしばありますが不親切です。中央駅にCATの乗り場を統合しなかったのは非常に賢明でした。ロンドンのヒースロー・エクスプレスがバカ高い運賃料金をとっておきながら中心部をかなり外れたパディントン駅に着けるのは意味不明ですし、現状は都心地下に乗り入れるパリのシャルル・ド・ゴール空港からのRER(高速郊外鉄道網)B線が、2024年の五輪に合わせて町はずれの東駅にアクセス列車専用駅を設けるらしいのも不可解です。ウィーンはえらい。あ、ここでもINTERSPARが営業中で、歯みがきセットをめでたく購入できました!


 

 

 
(左)ペスト記念碑  (右)コールマルクトから王宮を望む


ミッテ駅から、まだ利用したことがなかったU4に乗って1駅、シュヴェーデンプラッツ駅へ。今朝も見たように、スロヴァキア行きの船も出るこの駅の地上付近にはいくつものインビスが展開しています。最近、欧州ではランチ軽めもしくは省略という感じになっています。ソーセージをとも思いましたがどれも巨大なので、焼きそばでいいや。あちこちで見かけるチェーンのようで、焼きそばまたはチャーハンに各種トッピングが用意されていて、前に並んでいた中国人カップルは何だか不思議なオーダーをしていましたが当方はプレーン(€3.50)。お祭り屋台と同様に大きな鉄板で炒めたものが供されます。もやし、キャベツ、ニンジン、ニラをいずれも細切りにしたものが入った醤油味で、そんなに美味しくもありませんがまずくもありません。塩気が意外に少なくて助かります。前回の遠征から帰国して1ヵ月後の健診で血圧沸騰が発覚して病院送りとなり、降圧剤を服用しつつ日々の食事に大幅な塩分規制が入るようになりました。焼きそばみたいに塩分でコーティングしたようなメニューはあまりよろしくなく、毎週のように通っていた横浜中華街もそれ以来自粛したままです。欧州に出てまともに食事できないのもアレなので、平常よりは制限量を緩和していますが、それでも汁物などは避けて注意しなければ。ま、この程度の焼きそばならば大丈夫でしょう。病気のおかげで食品の塩分に詳しくなりましたからね。インスタントのソース焼きそばは1食で5gほどの塩分が含まれます(成人男性の理想量は18g)。

ホテルはすぐ近く13時過ぎなので連泊客の部屋のクリーニングはまだだろうなと予想しつつ戻ってみたら、ちょうどこれからやりますというタイミングでした。歯みがきもしたいので「ジャスト・テン・ミニッツ」と係の女性にお願いして待ってもらいました。冬至を過ぎたばかりの中欧は、16時ころには暗くなってしまいます。町歩きの持ち時間はあと3時間程度。とくに見たいところはないけど、ウィーンらしいところをもう少しだな。王宮付近を歩いて、それからドナウ川を見に行くことにしよう。


 王宮

 

 

 
(左)神童モーツアルト  (右)女帝マリア・テレジア


大聖堂の先を折れて、コーンマルクト(Kohnmarkt)を歩きます。マルクト=広場ですが実態は普通の道路で、ここは世界のトップブランドが路面店を出店する高級ショッピング・ゾーン。どうせ今日は開いていないけどね。4年前に初めて来たとき歩いたのと同じコースです。突き当たりに王宮Hofburg)があります。Hofは英語のcourtburgはお城なので「王城」くらいが正しいのかもしれません。本によってはホフブルク宮殿などと記載していますが、これだと意味が重なってトートロジーになってしまいます。もとはハプスブルク家代々の居城であり、現在は大統領公邸のほか美術館などに利用されています。

午前につづいてセンサーを切っていたせいか、すぐリンクに出るはずというつもりが商店街などをかなり歩いて、気づいたら南東のオーパー付近に出ていました。リンクの内側にいることはわかっているので何も問題ありません。リンクを走るトラムに乗って位置的には王宮の外側にあるモーツアルトの像(と、ト音記号)を見物。前回も見ているし、率直にいって興味もないのですが、のちのち教材化する際の写真コンテンツの収集ということです(笑)。その斜め向かいはミュージアム・ゾーンになっています。今日はどことも休館。ただマリア・テレジアの像が見守る中庭にはクリスマス・マーケットが大々的に開かれていて、家族連れや観光客でここも大にぎわいでした。





 
 トラムでエンゲルス広場へ


フロリズドルファー橋


さてドナウ川。ロンドンのテムズ川、パリのセーヌ川は市内のど真ん中を横切って流れ、東京の隅田川も若干軸がずれるけれどまあその仲間です。あす訪れる予定のハンガリーのブダペストは、ドナウ川をはさむブダとペストが合併してできた町なのでなおさら河川が都市景観と一体化していることでしょう。しかしウィーンは、一般にはドナウ川のイメージが強いのですが、その本流は中心部からかなり北東にずれたところを流れています。前回も見たのですが、今回はブダペストに行く直前なのでなおさらその「上流」を見ておきたい。4ヵ月前にはブルガリア・ルーマニア国境となっているドナウ川を眺め、車で越えました。欧州を代表する河川のいろいろな場所を見て、イメージをつなげたいのです。

川があればどこでもいいのだけど、地図でトラムの路線系統を追うと、2系統がリンク東側からシュヴェーデンプラッツを通って、北部の住宅地のようなところを突っ切りドナウ川の手前まで行くようなので、それに乗ろう。乗車距離も長くなり、普通の観光では行かないような地区を見られて楽しかろうと思います。午前に利用したのと同じ、中央駅方面に向かうD系統をリンク上のシュヴァルツェンベルクプラッツ(Schwarzenbergplatz)で降り、2系統に乗り換えました。低床式の車両なので車窓の景色が歩行者に近いレベルで流れていき、とてもよい。2系統はシュヴァーデンプラッツの先でドナウ運河を渡り、鉄道の操車場のようなところを回り込むようにして走りました。フリードリヒ・エンゲルス・プラッツ(Friedrich Engels- Platz)という電停が終点。ウィーンのトラムは片方にのみ運転台のついた編成のため一方向にしか進めず、そのため終点部分には必ず折り返し用のループ線を設けてあります。そのループ線の先に、ドナウ川の橋があるようです。それにしても、マルクス主義自体がかなり過去のものになりかかっている中で、エンゲルスという名前は余計に「なつかしい」感じがしますね。ウィーンとのかかわりがあるのかは不明。

フロリズドルファー橋(Floridsdorferbrücke)というその橋は、ウィーン北東郊に向かう主要道路がいちばん手前のドナウ川本流と、幅の狭い中洲をはさんだノイエ・ドナウ(Neue Donau 新ドナウ川)を渡り越すアーチ橋のようです。幅の広い歩道があるのはありがたい。そして、いま乗ってきたのとは別系統のトラムが両岸を結んで走っているため、歩道のすぐ横に専用軌道が敷かれています。夏のブルガリア・ルーマニア国境では、ドナウ川を渡ってルーマニア側に入るバスの手配になかなか苦労しましたし、両国ともいまだシェンゲン協定(加盟国相互の自由往来を定めたEUの原則)の適用外ですので、本式の出入国審査がありました。同じ河川の上流ですが、ここは歩行者でも路面電車でも気楽に、気軽に越えていけてしまいます。



下流側の鉄道用トラス橋

 

 

 やっぱりトラムに!(マルクサーガッセ電停)


シティ・エアポート・トレインの乗り口がある駅ビル0階のショッピング・エリア


ああ、やっぱりこの川はゆったり、どっしりしています。ことし2017年の欧州ツアーは、クロアチア、スロヴェニア、ブルガリア、ルーマニアと来て年末のオーストリア、ハンガリーと、ずっとドナウ川流域を歩いています。4年前ウィーンに来たときには、まだ中東欧ははるか向こうだと思っていたので、かつては「東側」を流れていたドナウにかなりのアウェイ感があったのですが、もうすっかりなじみました。もとより同じ流域でも国・地域によって景観などに大きな違いがあるのは確かです。

 20139月のドナウ川

ま、しかし、真冬にあらためて来てみると、特段に美しくも碧くもないドナウ川ではあります。どんより空は冬場の欧州の標準。川面もそれに倣ってか不景気な表情を見せています。こっちのほうが詩情をさそうような気はしますけどね。

トラム2系統を選んだのは、フロリズドルファー橋の1本下流側、遠くないところにエスバーン(S-Bahn 郊外鉄道)のハンデルスカイ駅(Handelskai)があるのを地図で確認したからでもあります。戻りも同じ経路ではおもしろくありません。違う乗り物も試したいですね。ここも24時間切符の適用区間で、こと市内の移動に関しては(東京式にいえば)メトロでもJRでもかまわないと考えましょう。ハンデルスカイ駅はSバーンとUバーン(地下鉄)の共用区間で、ホームは34線。上下線どちらのホームでも結構な数の人が列車を待っていました。5分ほど待ってやってきたのは、郊外線にしては立派な電車。内部もゆったりしており、クロスシートにウッディなテーブルが添えられて、東京あたりでは考えられないゆとりがうらやましい。わずか2駅、プラーターシュテルン駅(Praterstern)で下車しました。このまま乗っていけば次はミッテ駅で、歩いて宿に戻るにはちょうどいいのだけど、あっという間に着いてはおもしろくないので、プラーターシュテルンからトラムでミッテまで行くことにしましょう。4年前はプラーターシュテルン駅近くのホテルに泊まっていますので、アプローチの感じは承知しています。トラムの拠点になっている同駅前のロータリーで乗車し、Sバーンにほぼ沿って進み、ドナウ運河を渡って、マルクス通り電停(Marxergasse)で下車。エンゲルスと韻を踏んだのではなく、ここがミッテ駅の裏口にあたるからです。シティ・エアポート・トレインだけは他のÖBB線やSバーンと別のロビーと乗り口があり、そこに行くのは裏口のマルクス通り側からという自動放送の案内が流れました。前回そのルートを歩いていますので、だいたいわかっています。飲食店以外の店舗は全休のショッピング・センターに入り、少し進んだところにCAT。そのちょっと先に、数時間前に歯みがきセットを購入した小型スーパーがあります。うろうろして一周してきました。さっきは地下鉄に乗ったけど、ウィーンにはしばらく来ないような気もするので、今朝いちばんに歩いた道を逆にたどって、ホテルに戻りました。ちょうど16時で、日が暮れかけています。

 

 






ホテルの西隣のビル0階に、その名もRestaurant Vienne(フランス語でレストラン・ウィーン)というレストランがあります。昨夜も通りかかって表からのぞいたところ、まずまずのようなので、ここで夕食をとることにしました。いまさら出歩くのが面倒だというのが本当のところです。いつも事前にネットのスコアなどは見ないようにしています。当たり外れはそのときの運。あとでGoogleの口コミを見たら毀誉褒貶が極端なので、やっぱり見なくてよかった(笑)。そういうところは、えてして担当従業員の気質とか料理の味にばらつきがあるというわけで、大衆店ならば致し方ない。

煮込み系とか鉄板系も美味しそうだけど、ここは縁起物ということでヴィナー・シュニッツェル(Wiener Schunitzel)にしよう。ミラノ風カツレツ(コトレッタ)がラデツキー将軍によってもたらされ、ウィーン名物になったという伝承があります。数日後におこなわれるウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートでは、アンコールのラストに「ラデツキー行進曲」(ヨハン・シュトラウス1世作曲)が演奏されるのが決まりですけれど、その主題となった人物がイタリアから持ち帰った料理、という回りくどい説明でいかがでしょうか。スキンヘッドの店員がやけにスモール・サラダを推しますが、ドレッシング漬けになっていては困るので(欧州ではありがち)敬遠。

0.5Lの生ビールをとっとと飲み干して待つと、手のひら大で1.5枚分くらいのシュニッツェルが運ばれました。3ミリほどに薄く伸ばした仔牛肉に細かな衣をつけて揚げ焼きにしたものです。さくさくしていて美味しい。思いのほか塩気も多くなくて助かりました。こちらが食べ終わるころ78人の団体(2家族)がやってきて、そのうちの10歳くらいの少年が着席もせずスマホを手に店内をうろうろ。目障りだなと思っていたら、スキンヘッド店員がWi-Fi ?と訊ね、PWを記した小さなカード(レジ横に積んである)を示しました。少年は嬉々としてそれを受け取り、さっそく何かのゲームに夢中。大勢で食事するときに子どもに画面をいじらせるなんてダメ親の所業で、地球も愚かな時代になったものだね。勘定すると、シュニッツェル€18.90、生ビール€4.20、赤ワインのグラス€4.90、エスプレッソ€2.30で、〆て€30.30でした。最近の私のディナー相場としてはまあまあ。あすは8時半くらいにチェックアウトして、ブダペストに移動します。


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