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PART1
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ウィーンのシンボル、シュテファン大聖堂
(左)大聖堂付近でのパフォーマンス (右)ペスト記念塔
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羽田からのANAをミュンヘンでオーストリア航空に乗り換えて、2017年12月25日(月)、聖夜に音楽の都ウィーン(Wien)にやってきました。2013年9月に来て以来なので4年ぶり。ただ今回のメイン・ターゲットはハンガリーのブダペストで、ウィーンはそこへの足場として使わせてもらうだけなので、2泊3日、実質的にはまる1日だけの滞在です。しかも、まるまる使える26日(火)は第2クリスマスなので、カトリック圏であるウィーンでは大半の商店が営業しないと踏んでおり、一度見た町の様子を、季節を替えて味わってみるというくらいのつもりでいます。
都市としての規模はかなり大きいのですが、いわゆる都心の都心にあたる部分はリンク(Ring)と称する環状道路の内側です。リンク=輪っかは直径1kmちょっとなので東京の皇居よりもずっと小さく、町の見どころがその範囲にぎゅっと収まっているため、今回のようにとくに当てもなく見て歩くにはちょうどいい。少し外れたシェーンブルン宮殿(Schloss Schönbrunn)などは、今回はいいや。今回はいいやといいながら、前回も面倒になって内部の見学をしていません。会議も、踊るのもさほど好きではないしね。さて前回来たときにウィーンの構造やだいたいの位置関係は押さえていますから、今回はリンクの上辺あたりに宿を取りました。荷物を置いて、さっそく町なかへ。もう22時ですが市の中心の中心に位置するシュテファン大聖堂(Stephansdom)周辺にはそれなりの人が出ていて、路上パフォーマンスなどを楽しんでいました。クリスマスらしい雰囲気かといえば、そうでもありません。
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ホテル・ポスト・ウィーン
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今回の宿はホテル・ポスト・ウィーン(Hotel Post Wien)。ドナウ川の本流と都心を結ぶドナウ運河(Donaukanal)から2ブロックだけリンクの内側に入ったところで、中心部だけ歩くつもりだったのと、27日朝にブダペスト行きの列車に乗る関係もあって位置優先で予約しました。2泊朝食つき込み込み€160.38(ブッキングドットコムのジーニアス価格)でした。感想は・・・今回はダメですね。都心で1泊€80だとこのレベルになってしまうのかもしれませんが、建物が古く、部屋が狭く、水回りやデスク周りの調度品なども標準以下。3つ星なのにミニバー(冷蔵庫)がないというのもなあ。4年前はリンクから地下鉄で2駅外れた住宅街のホテルを取りました。設備はあちらのほうがよかった。ただ、どちらもベッドがやたらに狭いのと、ドアがオートロックになっていないのが共通で、これはウィーンあるいはオーストリアでは普通なのかもしれません。なおホテル名にあるポストというのは、目の前に郵便局(それもかなりクラシックな)があるためと思われます。
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朝のシュヴェーデンプラッツ付近 ドナウ運河にはブラチスラヴァ行き航路の乗り場がある
カール・ルエーガー広場付近 美味しそうだけど今日は終日店が開きません
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26日は8時40分ころ出動しました。前述したように当てはないしもろもろノープラン。いつだってそうだといえば、そうです。初めての町であればそれなりのコース・デッサンを事前にするけれど、それもなし。何しろリンクという明々白々の枠があるので、方向や方角を間違えたとしても遠からずどこかで必ずリンクに到達します。本当に地図要らずの散策になります。1つだけある強い希望は、歯ブラシと歯みがき粉を購入すること。遠征用の粉がなくなっていたのに気づかず、羽田で調達するはずが忘れていました。なぜか歯ブラシまで置いてきています。どこかで買いたいけど、薬局もスーパーも開くかどうか。ま、なければホテルのレセプションにいえば入手できるような気もします。
ホテル・ポストの最寄り駅はウーバーン(U-Bahn 地下鉄)1号線・4号線のシュヴェーデンプラッツ駅(Schwedenplatz)。前回何度もこの周囲を通ったので位置関係は心得ています。昨夜はウィーン空港からバスで市内入りしました。専用アクセス鉄道も在来線もあるのだけど、バス(片道€8)だとシュヴェーデンプラッツが終点なので好都合でした。4年前はこの駅に隣接する船着き場から大型水上バスに乗ってドナウ川を下り、スロヴァキア共和国の首都ブラチスラヴァまで行っています。乗船時間1時間15分程度なので私の通勤時間よりも短く、それで2首都間を移動できてしまいます。この付近は交通の要衝ということもあって人が集まりやすく、各種の飲食店、マックやスタバなどのファストフード、そしてドイツ語圏ではおなじみのインビス(Imbiss 仮小屋程度の小さな店舗を歩道上などに構え、ソーセージやドリンクなどを販売する軽食スタンド)がいくつも見えます。これらは普通に営業します。いつもクリスマス時期の渡欧になるので、どこへ行っても何かが正常ではないということは承知しています。まあ今日はウィンドウ・ショッピングだな。
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シュテファン大聖堂 朝は静かな祈りの場に
ケルントナー通り
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リンク内側なら方角を見失っても大丈夫と申しましたが、地図を見ないでテキトーに歩いていたら本当にどのへんなのかの感覚を失いました。というか、いつもの町歩きセンサーを切っています。そういうのもおもしろそうなのでね。あとから地図で確認すれば、リンク北東部の商店街を歩いていたようで、そのあたりは郊外鉄道や空港行き特急が発着するミッテ駅周辺のビジネス街につらなるゾーンでした。朝早いからではなく休日なのでしーんとしているパサージュを見つけ、ウィンドウをのぞきながら進んだら、シュテファン大聖堂の裏手に出ていました。これは計算外で、センサー切ったらこうなるのね。せっかくなので、前日は外観を眺めただけの堂内に入り、静かにお祈り。首都の真ん中の真ん中が見事な教会というのはいいですね。さすが欧州の古都。
インビス(写真左)だけは営業中!
商業的なという意味での中心街は、大聖堂からリンク南辺にまっすぐ伸びるケルントナー通り(Kärntner Straße)です。とはいっても銀座とか新宿のようなものなので世界中のどこにでもあるような店ばかりで、旧市街の情趣のようなものはほとんどありません。どのみちこの日は店が開くことはないので、このまま直進してリンクに出てしまいましょう。
音楽の殿堂、ウィーン国立歌劇場
リンクに突き当たるところの角地にあるのがウィーン国立歌劇場(Wiener Staatsoper)。Operはオペラですがドイツ語の発音はオーパー。
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オーパー/カールスプラッツ電停は高校交通の要衝
(左)ウィーン市電 (右)ここまで乗り入れてくるバーデン鉄道の車両
地下鉄のカールスプラッツ駅構内
トラム新型車両のインテリアはスマートで機能的
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オーパーの交差点付近が市内交通の重要な結節点になっています。トラム(路面電車)はリンクの上を走る路線のほか、ここから他の2方面に向かう線路があってさまざまな系統が乗り入れています。おもしろいのは、ウィーン南郊の温泉保養地バーデン・バイ・ヴィーン(Baden bei Wien)とを結ぶ郊外路線、バーデン鉄道(Baden Bahn)も線路を共有してここまで乗り入れてくること。赤いラインの市電に対してバーデン鉄道はクリーム色に青いラインなので誤乗する危険はおそらくないことでしょう。かつては日本国内にも郊外型の私鉄列車が都心部では路面を走ってど真ん中に乗り入れるというケースが多々見られましたが、もう絶滅に近い状態です。JR線をあえてLRT化した富山ライトレールがまもなく市内路面区間に乗り入れてきますし、福井鉄道も以前は大型車両が路面を走っていたのが、逆にトラム型の車両を郊外にも走らせるようになりました。バーデン鉄道は前回も今回も見るだけで乗っていませんが、トラムで温泉なんて、いいじゃない。
カールスプラッツは地下鉄にとっても拠点駅で、U1、U2、U4と、全5路線のうち3路線が乗り入れています。地下鉄ではなくトラムに乗りたいのだけど、チケットは共通なので、確実に購入できる地下鉄駅の券売機で€7.60の24時間券を購入しました。最初に乗るとき機械で打刻してヴァリデーション(有効化)すれば、そこから24時間使えます。あす27日は中央駅9時42分発の列車でウィーンを後にしますので、これから24時間弱なら申し分ありません。地下鉄、トラム、バスに乗ることができます。お店も博物館も開かない日であるのを承知で来ていますので、私としては大好きな乗り物に触れていられればおおむね満足ということにしておきます。町の景色を見ながら走るトラムのほうが好ましいのはいうまでもありません。オーパー電停から1系統の電車に乗って、リンクを時計回りに進みましょう。乗り放題だし、どこへというアテはありません。オーストリア議会(Österreichisches Parlament)の議事堂が左手に見えて、その先の市庁舎(Rathaus)の付近にクリスマス・マーケットが見えたので下車してみました。
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市庁舎前のクリスマス・マーケット
欧州きっての名門ウィーン大学
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が、時間が早いためか25日を過ぎたからか、一部の小物屋さんをのぞいて営業していません。欧州とくにドイツ語圏では、昼の時間の短い冬場にクリスマス・マーケットをこうした公共広場などで開き、独特の景観を見せます。12月の渡欧をはじめたのが5年前のドイツだったのですが、新鮮な感じがしたのを憶えています。そのとき何度も通った西ベルリン中心部のクリスマス・マーケットがテロにやられたのは1年前。欧州はまだまだ不安のときを過ごしています。
市庁舎をあとにリンクを北に向かって歩くと、次に見えてくる大きな建物はウィーン大学(Universität Wien)です。当方も大学人の端くれですので大学、それも名門大学と聞けば関心があります。ウィーン大学は1365年創立で、文系理系を問わず多くの業績を残してきました。シュンペーターやハイエク(経済学)、メンデル(遺伝の法則の発見者)、ドップラー(ドップラー効果の人)など具体的なことはロクに知らないまでも名前だけはよく知っている偉人を輩出しています。ただ私にとってはジークムント・フロイトの印象が強い。変人だけど巨人には違いなく、新たな知の地平を開いた人といえるでしょう。この大学は中世後期からの歴史を有していますが、ウィーンが近代的な学術の中心として繁栄するのは19世紀後半、ハプスブルク帝国自体が相当に爛熟して傾きかけたころのことです(岩崎周一『ハプスブルク帝国』、講談社新書、2017年)。考えてみれば、世界大戦の一方の核になるほどの大帝国だったハプスブルク国家が、敗戦を機に空中分解してしまい、ウィーンが小国の首都、「いにしえの都」に転落してしまったのだから、ものすごい変転があったのだなあ。前掲書を読んで、オーストリアやウィーンに関して政治・社会史と文化・学術・思想史を完全に分けて考えていた弊に気づきました。
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各方面行きのホームが統合されたショッテントール電停 2本の尖塔はヴォーティフ教会
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大学の先でリンクは北から北東に進路を変えます。輪っかとはいっても円とか楕円ではなく直線をつなぎ合わせた多角形(マッチ棒で描いたようなイメージ)なので、ところどころにカクカクしたコーナーがあります。その角張ったところにショッテントール電停(Schottentor)がありました。地下鉄U2駅への階段入口も見えます。トラム各系統のプラットフォームを扇形に設定してあるため、地下鉄を含めて相互の乗り換えが便利。そしてホーム上にインビスなどがあるのはこちらのトラムではおなじみの景観です。で、次々にトラムの車両がやってきて、思った以上の人が乗り降りします。欧州に通うようになってからトラムが格段に好きになったのですが、その魅力は都市景観に溶け込んでいるところと、何といっても距離の近さ。一般鉄道が専用の敷地内を走り歩行者とは隔絶されているのに対し、トラムは同一平面を、何らのボーダーもなく走っていきますからね。ここ10〜20年ほどのあいだに新設ないし再設されたトラムを欧州のあちこちで見てきましたが、そういう都市では電停間の距離がありすぎるケースが見られます。新設となるとどうしてもケチってしまうのかもしれないけれど、歩行距離が長くなりすぎるとトラムの優位性が目減りしてしまいます。ずっと一線で活躍しているここウィーンとか旧社会主義国などは絶妙な距離感でした。
さて次はどうするか。このまま時計回りに進めばホテル近くのシュヴェーデンプラッツにすぐたどり着きますが、まだ一周してはもったいない。ホテルでもらったシティ・マップの路線図を見ると、ここショッテントールからリンクを逆戻りするD系統に乗れば、鉄道の中央駅に1本で行けることがわかりました。2013年に来たとき、ブラチスラヴァから戻る際に中央駅を利用していますが、当時はまだ造りかけで壁も塗りつくされていない状態でした。あすの出発は9時台ですし、キャリーバッグを携えているため構内の見学もままなりません。この機会に下見を兼ねて、新装なったと聞いている中央駅を見てみることにしよう。(ただ、いまあらためて地図を眺めるとショッテントール電停のすぐそばにジークムント・フロイト公園 Sigmund- Freud- Parkという公園が見えます。何があるわけではなくても、人名シリーズは押さえておきたかったですね)
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PART2 につづく
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*この旅行当時の為替相場はだいたい1ユーロ=134円くらいでした
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