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5- もりもりモンマルトル |
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時間をとってモンマルトルを散策したいという人は美術好き、あるいは特定の画家さんのファンかもしれません。私はこの方面はまったく知りませんので、興味のある方は美術史関係の本などでお調べください。何々派がどうしたという画壇の話にもなりましょう。パリが都市化されすぎて美術をやるには不向きになったころ、まだ農村地帯だったこのへんに芸術家が大挙して移り、以後「芸術村」みたいになったといわれています。 この地区の見どころは大まかに3つ。「丘」のてっぺんに建つサクレ・クール寺院(Basilique du Sacré-Cœur)、寺院の背後から丘の北側にかけて広がる芸術家たちの足跡、そして(多くの日本人観光客はスルーするでしょうが)「丘」の南側に展開する何ともごちゃごちゃした買い物ゾーン(&風俗街)。 |
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9月2日、カノラマの乗り場に向かう前に右岸のどこかを歩こうかなと思ったとき、そういえばしばらくモンマルトルに行っていないなというので、足を向けてみました。と思ったら、昨2010年にも訪ねていたんだった。まあいいか。 北の周縁みたいに書きましたが、シテ島を東京駅とすると上野の先くらいの距離感ですのでパリは本当に狭い。メトロ4号線で北駅の1つ先、バルベス・ロシュシュアール(Barbès Roshuchouart)で下車します。まっすぐサクレ・クールをめざすのなら2号線に乗り換えて次のアンヴェール(Anvers)で降りれば真正面なのですが、例の「ごちゃごちゃした買い物ゾーン」を見るにはバルベスで降りたほうがいい。なおこのあたりでは2号線は地上に出て道路の上を高架で走っています。 バルベス駅からサクレ・クールの門前にかけてはタチ(Tati)を初めとするディスカウントショップが軒を連ねる激安地帯。品とか質にこだわらなければ実にさまざまなものが手に入ります。まあはっきりいって安かろう悪かろうが大半ですので、あまり本気で買い物しないことですね。色もの買ったら雨に濡れただけで色落ちしたことがありました。タチはいくつものビルにまたがって、婦人服・紳士服・子供服・雑貨小物・ドラッグストアなどの店があります。かつて御徒町の多慶屋に喩えたことがありますが、まあそんな感じ。 |
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メトロのアンヴェール駅付近で北に折れると、サクレ・クール寺院に向かう「参道」があります。仲見世というほどの規模はないものの、想像どおりのお土産屋さんゾーン。PARISと書かれたTシャツがほしければどうぞ。このあたりは完全に観光の世界ですね。100mちょっとでサクレ・クールの正面に出ます。が、ここはまだ「丘」の下。寺院はすぐそこに見えているものの、急坂を登らなければたどり着けません。 |
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よくしたもので、参道というか登山道の左側にフュニキュレール(Funiculaire)なるケーブルカーがあります。フニクリ、フニクラ〜♪というほどの山でもないけれど、足腰の弱い人や気合の入っていない人はどうぞ。私は気合に問題がありそうなのと、メトロなど市内交通の1日乗車券モビリス(Mobilis)をもっていてそれが使えるので、あっさり利用と決定。あらゆるメトロの切符が使えますが€1.70で乗るかどうかはあなたしだい。 フュニキュレールは乗ってしまえば1分くらいで山上に着きます。寺院にはもう1かたまりの階段を上らなくてはいけませんが、その前に、振り返ってパリの街を眺めてみるのがいいでしょう。エッフェル塔やモンパルナス・タワーなどの展望台もいいけど、ここからの景観はまた独特ですばらしいよ。日本国内の「展望台」はだいたい海の近くにあるのだけど、パリは完全に内陸なので地平線というやつに感じ入ります。 |
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サクレ・クールはカトリックの聖堂。出自のあやしい第三共和政(1870-1940年)が自らの権威を象徴させる意図が含まれていましたが、この政体はもとよりカトリックとは対立的であり、実際には市民の寄付などによって建築費がまかなわれました(そのため完成は第一次大戦のころになりました)。普仏戦争とパリ・コミューンの惨禍を悼むというのがそもそもの目的。残念なことに(いや当然か)パリの寺院としてはめずらしく堂内の撮影が禁止されているため、写真でのご報告はありません。あしからず。近代の建物だけに、内部は明るくてきれいですよ。 |
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芸術村に深入りするつもりはないけれど、観光名所のテルトル広場(Place du Tertre)はのぞいておきたい。四角い広場の周囲にはカフェやレストランが並び((夏場は真ん中にもテラス席をしつらえてある)、あまり広くないスペースながら多くのプロアマの画家さんが出て、画を展示&直売している。ここの名物、似顔絵屋さんも多い。よく「ボラれた」なんて話を聞きますが、これだけオープンなところでインチキできるのがすごい。すごくないか。 エッフェル塔のかわいいデザイン画を何枚も並べていた中年女性のスペースに近づき、1枚€30くらいだし、買ってもいいかなと思いかけたら、そのおばさんが「ツーリスト(観光客)は本当にエッフェル塔が好きよね」などと余計なことをいうのでやめました(笑)。もののわからん観光客から巻き上げるために好きでもないものを描いているのか?? |
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帰り(下り)は参道を歩いていこう。そうそう、思い出しました。昨年訪れたときは歩いて登って、フュニキュレールで下ったのでした。冬でも夏でも観光客が多いですね。ツーリスト呼ばわりされて不愉快になっているけど、まあ本当だから仕方ないか。サクレ・クールの参道には、真正面を一直線に登る階段と、ぐるりと曲がって勾配を緩くしてある側道があり、日本の寺社でいう男坂・女坂の感じ。日向ぼっこの老夫婦とか、音楽やジャグリングを披露するパフォーマーもいて、のんびりした雰囲気です。 モンマルトル地区そのものはけっこう広くて、芸術村探訪をしたいなら半日かそれ以上確保しておくほうがいいでしょう。今回みたいにサクレ・クール周辺だけならだいたい1〜2時間もあれば十分。この地区の南西側、クリシー大通り(Boulevard de Clichy)に沿うあたりはパリ最大の風俗街で、イカガワシイお店やちょっと文字にしにくい看板も目立ちます。昼間通っても別に大丈夫だけど、夜は物騒になるらしいので、ツーリストは控えましょう(笑)。 |
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この作品(文と写真)の著作権は 古賀 毅 に帰属します。