古賀毅の講義サポート 2024-2025

Études sur la société contemporaine

現代社会論


千葉工業大学工学部機械電子創成工学科、応用化学科1学部指定科目群1
前期 火曜129 :00-11 :00 新習志野キャンパス 5号館 5103教室


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2023
4月の授業予定
4
9 現代の産業を学ぶ
4
16 産業分野の区分と高次化の考え方
4
23 第二次産業(1):軽工業の現代化

 


次回は・・・
3- 第二次産業(1):軽工業の現代化

ここから数回は、第●次産業という分類を一つずつ取り上げて、その構造や成り立ち、今日的な課題などを考えます。第一次→第二次→第三次の順で扱うのが順当ではありますが、第一次産業(農林水産業)というのは、残念ながら多くの学生にとってなじみが薄く、いきなりそれからだと考えにくいので、私たちの大学名にも入っている工業(第二次産業)から入ることにしましょう。工業にも本当にいろいろな種類があります。その全体を整理するために、軽工業/重化学工業というふうに2つに分けて考えることが多い。軽い・重いというのはつくられる製品の相対的な重量や大きさのイメージですね。軽工業は繊維(糸をつくる、布をつくる、服をつくるなど)、食品、雑貨など。対して重化学工業は金属(鉄、非鉄)、機械、自動車、造船、化学などです。当クラスの受講生にも、これらの分野に進む人がかなりあることでしょう。つい「どの産業分野がいいでしょうか」と聞きたくなるでしょうが、時代や地域によってなんともいえませんし、それ以上に、自分自身の能力・適性・好みとの相性が合うかどうかが重要です。進路として考えるのであれば、人の意見やSNSのウワサをあてにすることなく、自分で調べて、考えることが大事なのでしょう。おそらくはまだまだ先のことだと思いますので、いまは「見方・考え方」を自分の中に取り入れるようにしてみてください。

さて今回は軽工業です。とくにその主力である繊維工業を扱います。衣食住というように、人間の生活にとってなくてはならない産業分野です。大学生の消費生活にとってはどうでしょうか。自動車やバイクなどの大きな機械類を購入する機会はめったにないでしょうし、冷蔵庫やコタツなどの家電製品も、下宿生活をはじめるときなどにまとめて、ということが多いことでしょう。それに対して、Tシャツやジーンズ、アウターや肌着、靴下といったいわゆる衣類は、購入頻度が高いものだろうと想像します。日々必ず身につけるものですし、ものによっては消耗品に近くて数ヵ月でだめになるということもあるからです。もちろん大学生にとっては「高い」というもものあるでしょうが、それでも重工業の商品に比べると全体に安価ですね。付加価値は相対的に小さい(あまり儲からない)ということが容易に予想されます。

いま身につけている衣類、タグなどを見て、どこでつくられているのかをチェックしてみてください。Made in XXという小さな文字がどこかにあるはずで、そのXXにはどの国の国名が入っていますか? 私が子どものころは、ほとんどすべて日本製だったのですが、中学生になるあたりからKorea(韓国)、Hong Kong(香港)などが増えていき、1990年代にはだいたいChina(中国)の製品に覆われるようになりました。現在はChinaもあるけれどもその割合はだいぶ下がっていて、ワイシャツやTシャツなどの綿製品ではヴェトナム、インドネシアなどが目立ってきました。忘れてならないのはバングラデシュです。多くの日本人にとって国名を聞いてもイメージが湧きにくい国なのですが、こと綿製品に関しては世界屈指の生産拠点になっているのです。繊維工業の主な生産地は時代とともに変わる(移る)のだ、ということを押さえておきましょう。なぜそうなのか、その結果どうなるのか、というところが重要な点です。このあとさまざまな産業分野を取り上げますが、この軽工業にみられるパターンは他の分野にもかなり通じるものがあります。

 

REVIEW 4/16

社会や産業のシステムがわかりやすく説明されていて、とてもおもしろい内容だった。とくに第二次産業の話や、付加価値の考え方がとても興味深かった。

日本の第二次産業内部の変化が、現代につながっていておもしろかった。付加価値という概念がとても重要であることがわかった。
むかしの日本の産業と現在の産業で、付加価値などの関係を学ぶことができておもしろかった。どのくらい利益が変わるのかなどを知れて、関心をもって取り組むことができた。

近代の産業について深く理解することができました。いままで考えていたイメージが違っていたことがわかりました。

正直、第一次・第二次・第三次産業の違いを知らなかったので、付加価値の違いなどがあることを初めて知れてよかったです。

第一次産業は付加価値が低く、数がどんどん減ってきており、いまの日本は他国に農作物を依存していることがわかった。産業の世界も理論にもとづいていることが理解できた。

第一次・第二次・第三次産業にはそれぞれ需要がある。しかし最も付加価値があるのは第三次産業であることがわかった。日本はある意味、急成長したすごい国であるということがわかり、誇りに思う。

第一次・第二次・第三次産業の違いを理解できました。また第二次産業の金属工業と機械工業の関係もわかりました。高次化で、重厚長大産業→軽薄短小産業になって、ものがどんどん電子化していますが、これからの社会がどうなっていくのか疑問をもっています。

私たちのいる学部学科や現代の企業と結びつけた話だったので興味をもつことができた。

 
航空会社というのはいうまでもなくB to C企業だが、「航空産業」全体でみると大半がB to Bであり、かなりの広がりがある
機内食をつくる業者、カトラリーの業者、シャンパンを納入する業者、モニターを製造する会社・・・
ある夏にエミレーツ航空(ドバイの企業)を利用したら先方の都合でビジネスクラスに変更されており、上等な機内食とワインを味わうことができたという話

 

B to BB to Cというのを初めて知った。産業は消費者だけを見ているのではないということを知って驚いた。
たしかに、会社どうしの売り買いの関係と、会社と消費者のあいだの関係がある。CMは見ている人に会社の意図を刷り込むくらい強い。みんながB to C企業に行きたいのかな?
・・・> 最近、B to Bということでしばしば例に挙げられるのが、富士電機という企業です。知っているかな? 富士通はこの会社から枝分かれしたものです。富士電機のほうは発電所や工場用の設備機械などで知られた典型的なB to B企業なのですが、近年は飲み物の自動販売機のトップシェアということが有名になりました。たしかに自販機で飲み物を買うのは日常で、B to C(たとえばコカ・コーラ)の世話になっているのだろうなという認識しかないが、機械そのものはどの企業がつくっているかなんて考えませんからね。そして同社は、セブンイレブンのコーヒーマシーンを製造して、コーヒーの世界にある種の革命を起こし、それを足場に家庭用のコーヒーサーバーなんかもつくりはじめています。千葉工大は大学の特性上、その種の話題とあちこちで出会えますので、アンテナを高くしておきましょう。

小・中学校で習った第一次・第二次・第三次産業について初めてこんなに深く学ぶことができた。B to Bは付加価値が低くB to Cは付加価値が高い。これをしっかりと覚えておきたい。B to Cでいっぱい稼ぎたい。
・・・> あ゛〜違う !!!! B to BB to Cの話は、付加価値の大小とはまったく関係ありません。B to BにもB to Cにも、付加価値の高い企業もあればそうでないところもあります。しっかりと覚えないでください。そして、授業内でいったと思いますけれど、付加価値の高い産業(≒もうかる企業)に進んだからといって自分自身がもうかるかどうかは別件です。自分の専門性や能力に見合ったところに行かなければ、台無しです。あわてないで、ゆっくりしっかり理解するように努めましょうね!

私が専攻する機械と電子工学の両方が何ごとにも必要であるとわかって安心した。

本当に必要なものは付加価値が低く、逆にそこまで必要でないものは付加価値が高い、というしくみについてだいたい理解することができた。

「豊かさ」について、ある一定のレベルまでの「豊かさ」の基準(先進国と途上国など)というのは、インフラのレベルであり、日本橋と大手町の差とは基準が少し違うと思った。
・・・> 日本橋と大手町の違いの話は「栄えている」という言葉の説明として出したので、「豊かさ」ではありません。いまのところ一般消費者に終始して生産者(労働者)ではない大学生が「栄えている」というとき、お店(たいていB to C)の多さなどに幻惑されて、本質を見ることが困難なのではないか、という問題提起です。なお、先進国と途上国の「豊かさ」の基準の差には、インフラのレベルはもちろん入りますが、それがメインとはいえません。基本的には工業生産力だと考えてください。

「軽工業の高次化」という考え方はしたことがなかったので、そういった働き方もありだと思った。
・・・> あ゛〜大ハズレになってしまいました。ちょっと、いったんリセットして次回イチから学びましょう。でないと、基本のところを間違えたままこの後の話を考えることになってしまいます。「軽工業の高次化」の話は今回していません。軽工業中心が重化学工業中心にシフトするとか(任天堂のケースなど)、重化学工業の内部の高次化(重厚長大→軽薄短小)の話はしています。そして、高次化というのは「働き方」とはまったく次元の異なる概念です。この手の、社会や経済の学びに不慣れなのだと思いますので、いろいろ読書などするといいかもしれませんね。

付加価値が大きいものが必ずしも本当に必要なものではない、というのは驚きました。だから事業が発展するのは難しく、挑戦やアイデアが必要なのだとわかりました。

必要なものほどもうからないというイメージはあったが、思っていたよりもその傾向が強くて驚いた。後発国が失敗する原因はまったく知らなかったので勉強になった。
段階を踏まない高次化は、経済の一時的な発展のみにとどまり、付加価値が低くても必要性の高い産業の枯渇により経済の失敗が起こることがわかった。

私は、生活が少し便利になるような、必ず必要ではないけれどあるといいな、くらいのものをつくりたいと思いました。

 

 


開講にあたって

この現代社会論は、学部指定科目群1に属し、「人間・社会の理解」にかかわる分野として設定されています。現代社会というのは「世の中すべて」のように広い範囲を指しますので、なかなか捉えどころが難しいのですが、当クラスは産業industry)に注目して、社会の成り立ちや近年の変化、そして近未来の可能性や課題などを考察していきます。みなさんは小・中・高の社会科や公民科で、第○次産業といった話を何度も扱ってきたことでしょう。また地理の授業では「この地域の産業の特色は」といった切り口で学ぶことがしばしばあります。大学の教養科目では、もう「試験のためにおぼえる」などという(ほとんど無意味な)ことはありませんので、授業で扱われている内容を常に自身に引きつけて、「自分たちの問題」なのだという視点で考えましょう。最もわかりやすい話としては、「数年後、大学を卒業してどこかに就職する」人が大半であるはずで、その「どこか」の話だということです。冷静に考えればわかるように、世の中は常に動いていて停まることがありません。「いま」の様態がずっとつづくはずがない。ですから「いま、いちばんイケてる産業はどこですか? 僕そこに就職します」という発想は、10年後、20年後になると話の前提自体が変わっていて、当人が損するということになるわけです。私(古賀)は、長年にわたって高校・大学で社会系の授業をもっていますが、そこで学んでいる「社会」が、自身の立っている足場であり、これから生きていく舞台なのだという感覚をもたないままでいる生徒・学生がずいぶん多いな、もったいないなと思うことがあります。せっかく学ぶのであれば、「社会の有意義な見方」を身につけたいですよね。

現代社会論という科目名ではありますが、現代といって取り扱う時間的範囲は、だいたい5080年くらい、テーマによっては100年くらいにもなります。これから何十年か先を見通すには、それくらいの幅をもって、社会を捉える必要があります。受講生の中には、進みたい産業分野がすでに固まっているという人もあるだろうし、まるで見当がつかないという人もあることでしょう。いずれにしても、「この分野には興味がないから、今回はパス」などと安易に考えずに、いったん自分の頭で考えて、問題をかみしめるようにしてみましょう。どんな分野に進むにしても、商売する相手は別の分野の人ですし、市場のニーズを知ろうとするなら狭い範囲に閉じこもっていてはどうにもなりません。商品開発に携わろうとすればなおさらです。たとえば、農業(第一次産業)のことは視野の外だという人が多いことでしょう。でも、農業で用いられる機械は製造業のうち機械工業(第二次産業)でつくられるものですし、農作物が流通するしくみはサービス業(第三次産業)に属します。どの分野でもそれ単体で成り立つということはありません。これから先の時代は、さらにそうした相互関係が重要になります。

 

<評価>
2回の提出物(レポート)の内容により評定します。
出欠は評価対象に含みません。

 

 


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