Visiter Cardiff, la capitale du pays de Galles

PART4

 

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カーディフ 日常生活的な町歩き

朝はやくに「別の町」に来て、滞在1時間弱で引き上げるというのもいかがなものかと思いますが、海っぺたにずっといても展開があるわけではないので、カーディフに戻ろう。1018分発のバスが時刻表どおりに現れました。女性運転士さんに「カーディフまで」と告げて₤2.50支払うと、「シングル(片道)ですね?」と確認の上でレシート状のチケットをくれました。カーディフ市内は₤1.80、バリー地区内は₤1.70、そして両地区間を移動する場合は₤2.50の設定です。Young Personの運賃が半額よりも少し高めなのがおもしろい。日本では小学生までが小児運賃ですがここでは19歳までがヤング・パーソンだそうです。バリー・アイランド駅前発車時点で乗客は5人。

 
 
バリー〜カーディフ間のバス 車窓からカーディフ・シティ・スタジアムが見える


カーディフ中央駅の北側にあるバスターミナル(といっても単なる広場)まで1時間弱。路線バスの愉しさというのをマニア以外の方に説明するのはなかなか大変ながら、この95系統はかなりおもしろい路線でした(マップはこちらで確認してください。ただしCondoxton付近で実際にはもっと複雑な動きをしています)。さきほど歩いてきた道をバリー駅前まで進み、そこで線路から離れて高台の住宅街をぐるりと一回り。およそまっすぐに進むということを知らぬかのように、沿線のあらゆる地区に顔を出しては折り返していきます。途中、列車からも見えた湿地帯のようなところを疾走したかと思えば、年末の大掃除をしたのか玄関前に積まれた大量のゴミを拾っていく収集車に行く手を阻まれるなど、妙にストーリー性があります。アップダウンもものすごい。おそらく、個別の地区への放射状の路線を設定するほどには需要がないので、カーディフ〜バリーの2地区連絡と兼ねて系統を一本化しているのでしょう。大半はカーディフをめざすらしく、乗客はどんどん増えて、やがて満席に近い状態になりました。森のようなところを抜けると急に視界が開け、郊外の新興住宅地みたいなところに出ます。右前方にカーディフ・シティ・スタジアム(Cardiff City Studium)が見えてきました。カーディフ・シティFCのホームスタジアム。このクラブはウェールズにありながら、ウェールズのリーグ(実質1部のウェルシュ・プレミアム、同2部のリーグ・オブ・ウェールズ)ではなくイングランドのフットボール・リーグ1部(チャンピオンシップ)に越境参加しています。サッカー音痴の私が語るのも何ですが、フットボール・リーグこそがサッカー母国の頂上組織だったのが、1992年に名門チームが集団離脱してプレミア・リーグを結成したため、カーディフのいるディヴィジョンは実質2部(日本でいえばJ2)ということになりますか。主権国家とNationの関係が微妙にズレている話はしばしば指摘され、サッカーやラグビーが実際にそうですよねと私もよく話題にしますけれど、イングランドとかウェールズといったCountryごとにNationなのだという英国式の説明にもかかわらず、ウェールズの首都にあるクラブがなぜかイングランドのリーグに(大昔から)参加しているというのもよくわかりません。「そういうものなのだ」と思うしかないですね。

 
(左)中央駅前に着いたバス  (右)タフ川のそばに建つカーディフ・ミレニアム・スタジアム


バスは鉄道の線路をアンダークロスして、場末みたいな一角に入り込みました。どことも駅裏はそんな感じです。ほどなくタフ川を渡って、中央駅前に到着。列車の倍くらいの時間を要しましたが、車窓からの景色はバスのほうが数倍おもしろく、満喫しました。ターミナルに着く寸前に別の大きなスタジアムが見えたので、少し戻ってみました。こちらはミレニアム・スタジアム(Millennium Studium / Stadiwm y Mileniwm)で、ウェールズの国技ともいわれるラグビーの競技場。ミレニアムの名が示すように建設は新しく、1999年にW杯のホスト国になったのを機に造られたとのことです。レッド・ドラゴンズの異称で知られるウェールズ代表は2012年と2013年の6ヵ国対抗選手権(The Six Nations Championship 最も伝統ある大会で、イングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズ、フランス、イタリアの「6ヵ国」が参加)を制しました。

ロンドンへの帰便は1325分発なので、まだ2時間くらいは町を見学できます。とくに執着すべきスポットも食べておくべき料理もないため、遠目のところから適当に歩いて、徐々に駅に戻ってくる感じにしましょう。といっても中心市街地はかなり狭く、中央駅〜カーディフ城が徒歩15分くらいで、それを一辺とする正方形の中にほぼ収まります。何度目かの中心部に歩を進め、フィッシュ・アンド・チップスをいただいたパブの前まで来たら、前日には気づかなかった賑やかな一隅が見えました。のぞいてみると、小さな店舗が並ぶ市民マーケットのようです。あとで調べたところ中央屋内市場Central Indoor Market)だそうで、19世紀から人々の暮らしを支えているのだと。観光色はほとんどなく、肉・魚・野菜・惣菜・パンなどの食材店、食器や包丁などを扱う店、生活雑貨を売る店、アクセサリー店などもろもろ。アメ横の屋内版みたいなものですかね(あそこのガード下というほうが規模は近いけど、アメ横のガード下は貴金属やアクセサリーばかりで食材店の大半は屋外にあります)。通り道が3筋あるので一筆書きみたいにゆっくり歩いて見物しました。客層はどちらかといえば中高年寄り。そういえば1年前に訪れたバルセロナにもこんな市場があったな。

 
 
中央屋内市場


お城の向かいにあって、日曜は閉まっていたスーベニア・ショップにも寄ってみました。ウェールズ土産といえばこれというラブ・スプーン(柄の部分が鎖状になっている木製さじ)とか、かわいらしいレッド・ドラゴンのぬいぐるみとか、それらしいものはあるのですが食指が動きません。ウェールズ感があまりないのにお土産ばかりこってりしていても、ねえ。ウェールズ料理も含めて、このつぎ来たときにあれこれ試してみよう。

本筋とは関係ないながら、フランス語でウェールズはPay de Galles(ペイ・ド・ガル)、スペイン語ではGales(ガレス)です。ウィリアムがギョームになるみたいにWGの転移があるわけですが、教科書分析などをしていた私は固有名詞を勝手に読み替えてしまう作法にとまどった時期がありました。フランス語では、イングランドはAngleterre(アングルテール)、スコットランドはÉcosse(エコス)、グレートブリテンはGrande-Bretagne(グランド-ブルターニュ)といいます。まあでも、われわれがするみたいにイギリスとかエイコクとかレンゴウオウコクなんていってもまったく通じないわけだから、外国の地名とはそういうものか。オランダ(これはスペイン語・ポルトガル語の表現)、スペイン(英語の表現)なんていうのはまだいいですが、ドイツ(ドイツ語のドイッチュラントないしその形容詞系ドイッチュの転訛)というのも厳しいし、案外気づいていない人が多いですがフランスを4音節で発音しても現地では通じません(何と1音節で、しかもanのところは鼻母音で発音する)。ささ、どこかで昼ごはん食べてロンドル(Londres フランス語でロンドンのこと スペイン語は同じ綴りでロンドレス)に帰るとするか。

 


町なかを縦横に通るアーケードをじぐざぐ歩きながら駅方面に向かいます。セント・メアリー通りから中心部へと入り込むブルワリー・クォーター(Brewery Quarter)というL字型の歩道をきのう見つけていました。ブルワリーというのはいうまでもなくビールの醸造所ですが、フランス語ではブラッスリー(brasserie)で、カフェとレストランの中間みたいな飲食店。こんな町なかに醸造所はないだろうから、パブ的なものが並ぶという意味合いでしょうか。たしかにパブが2軒、でもその他はチェーン系みたいな飲食店が並んでいます。もうあまり時間がないのでゆっくりもできず、店の前でヒマそうにしていた客引きのおねえさんに声をかけて、あるイタリア料理店に入りました。

 
 


Pasta Meat Balls –Home made meat balls in a tomato sauce
という日本の中学生でも読めそうな料理(₤5.95)を発注。グラスの赤ワイン₤2.95も飲んじゃえ! 12時半を回ったところですが店内には私ひとり――と思ったら、たちまち数組が通されて入店してきました。私がガラス張りの窓際に座ってワインを飲んでいて、客引き効果があったのかも。5分もしないうちに運ばれてきたパスタ、というかスパゲティは、それこそ日本のお母さんが幼い子どものためにつくってあげるような見た目と味とやわらかさでした。フランスのパスタ類はウソみたいにやわらかく煮てしまうのですが、ここのもそれに近いかな。この手の料理は安くて速いので、ランチを急いで食べるときにはいいですね。店のしつらえとかメニューの感じから見て、ここもチェーン店なのかと思っていたら、あちらのグルメサイトによれば家族経営とのこと。ごちそうさまでした。

13時ころホテル・スリーパーズに戻り、レセプションでキャリーバッグを請け出します。あらためて23日の謝意を申し述べ、はじめてのおつかいでも迷うことがないであろうカーディフ中央駅まで徒歩30秒。途中でまた何かのハプニングがあったときに備えて食料でも買っておこうかと思いかけ、でもやめました。ウェールズとイングランドの地は、旅人に対してそれほど無慈悲ではあるまい。万一無慈悲だったら、それはそれでネタになります。


帰路は快調な急行列車

1315分ころホームに行くと、同じロンドン行きを待つ人がかなりあります。老若男女、人種・民族もいろいろ。指定券をもっているので間違いなく座れるのですが、それにしてもこちらの人たちは列をつくって並べない(並ばない)ですね。ただ、日本人の整然とした行列づくりはしばしば話題になるところながら、昨今見ているとスマートフォンの悪弊で前の人との間隔をつめない人がかなり多くなり、行列が無駄に長くなって通行の妨げになっています。主力商品に「有害」と明記することを強要されている日本たばこ産業のように、「スマートフォンを使いすぎるとバカになります」というステッカーの貼付をしてみたらどうかね。

 
 背もたれに挿入するタイプの座席指定票(本当はCoach-BSeat-69ですが印刷がズレている)


A
号車が下り方向のようなので、指定されたB号車は後ろから2両目。だいたいそのあたりで待っていると、1323分ころディーゼルカーの特急車両が入線しました。おそらくスウォンジーからの便でしょう。来たときはあんなようなことだったので指定も何もなかったのですが、席に行ってみると背もたれのところに縦長のカードが挿してあり、この席がカーディフからロンドン・パディントンまで指定されていることを示しています。欧州の多くの鉄道会社では、日本のように指定席と自由席の車両を分けるのではなく、座席が予約されている区間を明記しておいて、それがないところや予約区間以外では自由に座ってよいということになっています。窓枠の上部に名刺大のカードを差し込むパターンをあちこちで見ているほか、ドイツの新幹線ICEでは液晶式で表示している車両もありました。2月末にアイルランドで乗った列車は、ご丁寧に私の名前まで明記してくれていました。背もたれというのは斬新だけど、自由席客はぱっと見てそれがない場所に座ればよいのだから、いいかもしれない。実はJR東日本が20153月のダイヤ変更に際して、常磐線特急でランプ点灯による指定済み表示を実施することになっています。車両区分をなくし、赤ランプがついていたら自由に座ってよいことにするようですが、どの駅まで空いているのかがわかりませんし(検札の際に車掌が告げるのでしょうが、そのタイミングで他の空席に移れない可能性もある)、自分の席に座っている人に「そこは私の席です」といえない人はどうするのかなど、課題がいくつもあります。日本ではうまくいかないんじゃないかな。やるなら背もたれカードみたいなアナログのほうがいいかもしれないぞ。

ニューポートを出るとほどなく海底トンネルとなり、人生何度目かのイングランド、英語オンリーの世界に戻ってきました。明るいうちに見る景色はやっぱりいいねえ。あんなことがなければ地名を知ることすらなかったであろうレディングを発車すると、そこから先は初乗り区間。工事用車両がどこでオーバーランしたのかは不明ながら、それらしい車両基地が見えたのでそのあたりだったのかな? もとより二度までも何かが起きようはずもなく、列車は定刻どおり1534分にロンドン・パディントン駅に到着しました。なるほど、これが正解なのか。

 パディントン駅

南ウェールズ カーディフ短訪 おわり

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