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Lisbonne et l’Océan Atlantique
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PART 7 |
ケーブルカー乗車の宿題は残ったものの、町歩きと買い物を終えて、だいたいのところは完了しました。欧州の都市というのは東京や大阪などと比べると市域・市街地ともかなり小さいのですが、ここリジュボーアは市街地部分がさらに狭く、なのに極端な高低差があるというのが他にはない特徴。中学生のころ、とある地区の立体地図模型を先生や友人たちとつくって新聞に載ったことがあります。ボール紙に地形図を貼り付け、等高線に沿ってカッターで切り抜くという精緻な作業をわれながらよく辛抱したと思いますけど、そのようなつくり方をすればどうやっても垂直方向にデフォルメされた作品にならざるをえません。「この坂はこんなに急じゃないよなあ」みたいに感じます。リジュボーアはその点で町なかなのにウソみたいなアップダウンでおもしろいですね。 レスタウラドーレス広場
夜のポルタス・デ・サント・アンタオン通り 通りをいったん全部歩いてから、それらしいところを2、3軒のぞいてみました。白を基調とした妙に品のあるレストランから兄さんが出てきて、複数言語のメニューを示しながら内容を説明します。「当店は上等な肉、魚を使って料理をお出ししています。オープンキッチンで調理の様子をライブ感覚で見られますからおもしろいですよ」。日本料理でいうところの「さらし」でしょうが、われわれにはさほどめずらしくないもんね。でも価格帯と内容がそれっぽかったのでノッてみようかな。オープンキッチン横の席に通され、まずは生ビール(ポルトガルではインペリアル Imperialといいます)を注文。いやー、この一杯のために生きているなあ(なんておっさんみたいなことはいいません)。英語とフランス語のメニューを見比べて、Medalhões de porco com molho virginなる料理を発注。英語版だとMedaillons of Pork with Virgin Sauceで、メダリオン・ポークのヴァージン・ソースということですやね。ヴァージン・ソースってタイとかホタテとかあっさり系の魚介類に使うやつじゃなかったかな?
オープンキッチンでは人種性別さまざまに取りまぜたコックさんたちが真剣な表情で作業しています。フロア係もまた多民族的な感じでいいですね。あ、なるほどこれか。メダリオンというのは円盤状の肉のことですが、こういう上品なカットは欧州のカジュアル・レストランではあまり見かけません。タイムなどのハーブをオリーブオイルで煮詰めたようなソース。これはポルトガルではなく明らかにフランス料理で、東京のフレンチ・レストランでまったく同じものを食べたことがあるぞ(たしか5000円コースのメインだった)。200gくらいありそうでもう腹いっぱいながら、もちろん完食しました。メインのメダリオンが€13.90、パン€0.70、生ビール€1.50、グラスの赤ワイン€2.00、エスプレッソ€1.00で〆て€18.95。チップ込みで€20紙幣1枚とは何とも安く、うれしいかぎりです。今度来たときには豆の煮たやつとか子豚の丸焼きとか、いかにもポルトガルという料理に挑戦しよう。
ホテルそばのマルケス・デ・ポンバル駅には青メトロのほか黄メトロが乗り入れています。この路線だけ利用したことがなかったのですが、次の終点ラト(Rato)まで1駅だけ乗ってみよう。ラト駅は住宅街プラスビジネス街みたいな一角で、ターミナルというほどではないにしても各方面へのバス路線が乗り入れている拠点のようでした。そこからペドロ・アルヴァレス・カブラル通り(Avenida Pedro Alvares Cabral)を南へ歩いていきます。土曜の朝ということもあってか歩行者も自動車もほとんどありません。P.A.カブラルというのはブラジルを「発見」した例の人物で、インドに行こうとしたら間違えて対岸に着いてしまったものらしい。前述したように、いまや言語が同じ旧植民地ブラジルにポルトガル人が出稼ぎに行くのだから、きっかけというのは深い意味をもつものですね。 カブラル像
エストレーラ大聖堂
さて念願のビッカ線乗車。ちゃんと動いていることを確認した上で、前日と同じようにまずは徒歩で下って、行き違いのシーンを撮影! 下の駅から今度はケーブルカーに乗り込んで上をめざしました。階段状の車内には初老のおっちゃんと私の2人だけで、もう遠慮なくというか、田舎もんみたいに前後左右を撮影しまくりました。おもしれー。 そのあとカモンイス広場からまた28系統に乗って、一昨日じっくり観察した急勾配を下り、バイシャに出ました。4日目なのでもう景観はすっかりなじみました。コメルシオ広場まで歩き、テージョ川の景色をゆっくり眺めてから、東側に隣接したフェリーターミナルに行ってみます。対岸へのフェリーは毎時2本出ているのですが、この時間はお客がほとんどなくて閑散としています。河口付近でこれほど川幅の広いテージョ川、スペインではタホ川(El Tajo)と呼称されます。スペインの首都マドリードも流域に含まれます。イタリアと並んで日本人が観光で行きたがるスペインを思い切りスルー(じゃなくてオーバー)して先にポルトガルに来てしまいましたが、いずれスペインにも行ってみませんとね。 フェリーターミナルは赤メトロのテレイロ・ド・パソ(Terreiro do Paço)駅に直結しています。これに1駅乗って、最後の最後にバイシャ・シアードで乗り換え、いったんホテルに戻って荷物をピックアップ、チェックアウトしよう。3泊4日と異例の長逗留(でもないか)になったホテル・ドン・カルロス・パークは、無駄のないサービスというか、何から何までかまってくれるのではなくいい意味で放っておいてくれるので心地よく、清潔感があってよい宿でした。「当ホテルのサービスに何か問題はございませんでしたか」とレセプションがいうので、「いえいえ。初めてリジュボーアに来たのですが、みなさんのおかげで楽しく過ごすことができました」と心からの返答。リジュボーアと周辺は観光するかぎりにおいては英語でまったく問題なく、むしろ国際空港の地上スタッフの訛りがいちばんキツかったくらいでしたよ。さあ年度末の弥生3月、転職に伴う研究室の引っ越しとお花見が近づいてきました。 |
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