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à Paris ! 21-
Japonais / Japonaises (日本人) japonais ジャポネ 形容詞・名詞(男性形、単複同形) お前だってそうじゃないかといわれるのを承知でいえば、パリには実に日本人が多い。どの街区でも見かけないことがないくらいです。ロンドンと並ぶ欧州の一大センターだけに、在外公館の関係者や海外支社・現地法人の関係者、(半)永住している人、留学している人などとその家族が相当数いますし、観光客も1年を通して訪れます。日本からは直行便がたくさん飛んでいることもあるし、欧州へ行くなら一度はパリへという人口も少なくないはず。初心者でも訪れやすい都市ですね。パリに行ったことがありますよ、といってくれる知人や教え子もかなりいますので、本当はこの手の連載は危なっかしいのです(汗)。 日本人密度?が最も高い地区は、おそらくオペラ座界隈(31- Opéra参照)だと思います。オペラ座からルーヴルへ伸びるオペラ通り周辺には日本企業が多く、日本料理店やラーメン屋、すし屋などもけっこうあります。いつものやつで日本へ荷物を送るならヤマト運輸や日本通運の事務所がこのあたりにありますし(私は郵政民営化に反対なので?フランス・ポスト→日本郵政公社を愛用)、三菱東京UFJ銀行、三越、ジュンク堂書店だってあるよ。日本人が多いからそういうお店ができるのか、その逆なのか知りませんけれど、街中を歩いていて日本語が聞こえるのが普通に感じられます。だからこの辺は気乗りしないんだよね〜などと、ジャポネズと歩きながら日本語で話したもんだ(笑)。
日本料理店が立ち並ぶ地区のはずれには日本人の経営するインターネット・カフェがあって、もちろん日本語のウィンドウズを搭載しているので便利です。茶場ねっとは、シャバネ通り(Rue Chabanais)の綴りに引っかけたネーミングのお店ですが、IT関係のサポートもしてくれるようですので、フランス語や英語の不得手な方はどうぞ。インターネットは15分2.50ユーロ、1時間6.0ユーロとお手軽。 プチ・シャン通りの日本食材店 フランス人のお客がけっこう多いです 観光もそうだけどお目当てはショッピング!という旅行客が多いことでしょう。ルイ・ヴィトンのあるシャンゼリゼやモンテーニュ通りには、はっきりそれとわかるお姉さんお嬢さんがいつでもたくさんいます。カジュアルでもセミフォーマルでもさらっと着こなす同年代のフランスのお嬢さんを見て何とも思わんのかね、などと悪態をつきながら通りすぎる(^o^)。最近は、小物やアンティークのお店がガイドブックなどでさかんに紹介され、そういうのは中心街から離れたところに多いため、おっ!ここにもショッパーさんたちが、というふうになっているようです。私はどちらかといえば左岸にいることが多いので、右岸ほどには多くないが、それでも日々見かけます(44- Shopping参照)。 日本人観光客が目立って多いのがエッフェル塔(46,47- Tour Eiffel)とシャンゼリゼ(10- Champs Élysées)とルーヴル美術館(23- Louvre)。エッフェルの周辺には、パックツアーを引き受ける小さなホテルが多く、ちょうど文京区の本郷あたりに修学旅行および外国人客向けの宿が多いのに似ている。 観光で来るジャポネ(ズ)の大半は、2人以上の集団で行動するので、ある意味で安心ですが、日常感覚を抜け切れず、かえって油断しやすい面もあります。街中で地図を広げて夢中になっている2人連れをよく見ます。危ないよ〜。単独行動がほとんどの私は、顔立ちから現地在住のインドシナ系(フランスには多い)と思われているのか、フランス語で話しかけられたり、道を訊ねられたりすることが非常に多い。ま、多様な人種が共存するのを当然だと思っていて、外人とわかっていても道を訊くのがフランス人です。日本人が訊かれるケースは、(1)日本人は親切で、わからなくても一生懸命教えてくれそうだ、(2)日本人はたいてい地図をもっている、(3)日本人だとは思わなかったよ〜、(4)道を訊いているあいだに相棒が後ろに回ってハンドバッグを・・・のどれかですな。 日本人観光客のもう1つの特徴というか当たり前のウィークポイントは、フランス語がほとんどできないこと。行ってみればわかるけど、空港やホテルをのぞけば英語表記というのはほとんどありません。会話はもちろんだけど、どこに何があるかもわからなくなる恐れがあります。次回くわしく述べますが(22- Langue(s)参照)、フランス人もこのところは英語をかなり話せますけど、肝心の日本人が英語を話せるのかどうかのほうが実はあやしい。質問するときも答えを聞くときも、下手なら下手なりの度胸やコツというのがあるのであり、それさえ心得れば高校入試程度の英語でも(それなりにだけど)用を足せるはずなのに、舞い上がっちゃってダメな人が多いようですね。道端で「えー、どうすればいいのぉ〜、わかんないよぉ〜」と青ざめているジャポネズたちを救済したことが過去に何度もあるけれども、考えたってわかるものでもないし、スリや置き引きさんたちもいて危険だから、カフェに入って一服して、最低通じる単語を手がかりにお店の人に訊いてみることよ(もちろんチップあげてね)。 |
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Langue(s) (言語) 誇り高いフランス人はとにかく英語が嫌いで、日本人観光客がイングリッシュで話しかけようものなら知らんぷりを決め込むか、わざとフランス語で答えるのだそうな。フランスが専門です、フランス語を少しやっていますというと、かなりの確率でその伝説ないし神話を持ち出されますよ。かなり以前から流布していた伝説で、おそらく国際公用語・外交語のメインがフランス語から英語に移った時期(20世紀前半)に強い印象をもって語られ、フランス語に限らず外国語に弱い日本人の体験が重なって、今日まで受け継がれているのでしょう。それでも先輩世代のフランス専門家に聞くと、誇り高さやフランス語至上主義の信念はたしかにある(あった)ようです。現在でも、料理や美術、ファッションなどの分野ではフランス語が幅を利かせているし、IOC(国際オリンピック委員会)やFIFA(Fédération
Internationale de Football Association 国際サッカー連盟)などスポーツ界も、実はフランス語ワールドです。それすらも失われたとき、フランス人の自信喪失というのはすごいでしょうね。 私は、大学3年生のとき「第3外国語」としてフランス語を学びはじめましたが、それはほぼ研究のためのテキスト講読に資されましたので、基本的には読むだけでコミュニケーションのない、中世のラテン語みたいなものでした・・・。今でも会話は非常に苦手です。3回くらい訊き直してもわからないことだって、けっこうあります。論文などで抽象名詞にばかり触れているためか、普通名詞が案外わかりません。この連載ではいかにも自分の庭のごとくパリを闊歩しているように書いているけれど、本当のことをいえば失敗のほうが多いくらいです。でも、言葉がわからないからといってうろたえるとか、行動するのに障害になるというのは最近なくなりつつあります。どうせ外人だもの。基本的には通じない、くらいに思っていれば怖くないよ。 さて、フランスでもご多分に漏れず英語教育が重視される時代を迎えています。英語のことをフランス語でanglais(アングレ)といいます。こちらが日本人とわかると「アングレのほうがよろしいですか」といってくれる人も、たまにいます。現行の教育課程では、小学校高学年(5年制の3〜5年)で実質的に英語が必修化されていますし、中高での授業時数もかなり増えました。何より、英語をまったくできない人はサービス業への就職のチャンスがほとんどないわけで、もはやフランス人にとって必須のワザになりつつあります。ホテルやレストランは、よほど小規模のところをのぞけばどうにか通じますし、パリなどの大都市では<English spoken here>などと入口に示しているレストランもよく見かけますよ。とくにパリは英語通用率が高い。観光スポットならほぼ問題ありません。私の勝手な意見だと、日本でいちばん(コミュニケーションという意味での)英語が通じるのは京都の土産物屋のおばちゃんたちだと思うのですが、同じ理屈で、売ってなんぼのサービス業では非フランス語圏のお客さんを逃す手なんてないわけですね。 まあ、発音の仕方が基本的に違うので、フランス人が(ドイツ人などに比べて)英語を苦手にしているというのは確かなようです。英語を話していていつの間にかフランス語に戻っている、といった冗談みたいな話もけっこうあります。知り合いの初老のパリジャンは、ときおり英語を交えて私と話すのですが、「オウ・メニ」というのがわからず問い直したら、<how many>が訛っているのでした。 フランス共和国はアンテグラシオン(intégration
統合)の社会ですから、移民はフランス語とフランスの習慣を学びかなりの部分で「同化」することを求められています。したがってお隣りの英国ほど集住しているわけではないのですが、別の母語をもつ移民の社会というのはパリにもけっこうあります。ぱっと見てわかりやすいアラビア語の人たち(マグレブ出身者など)やインドシナ系の人たち、華僑などだけでなく、ポルトガルやギリシアなど南欧諸国からの移民もけっこういる。左岸の常宿で夜間フロントを担当する男性はしょっちゅう入れ替わっていますがだいたい南欧系で、以前はアルゼンチン出身のおじさんとも仲よくなりました。メールで予約の連絡などをする際、フランス語なのだけど、どう見てもフランス語の綴りではない言葉を書いてくることがあります。いってみれば発音どおりの綴りですので、日本人にはかえってわかりやすいかも。 国境の壁が低まり(フランス語ではふつうグローバリゼーションではなく世界化mondialisationといいます)、移民の入国がつづき、欧州統合の進展につれて各国の人々が入り乱れ、非欧州諸国からも多くの人々がビジネスや観光で押し寄せるとなると、フランスないしパリの言語状況も大きく変わっていかざるをえません。ま、ここ何百年ものあいだ、ずっと変わりつづけてきたのですけどね。 |
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Louvre (ルーヴル美術館) パリ市の中心部、セーヌ川の右岸に面してルーヴル美術館(Musée du Louvre)があります。で、冒頭から何ですけど、こういう「大物」を紹介するのは気が引けるのと、古賀自身が美術を非常に苦手にしているので、さらさらっと流しますよ(笑)。 物知りがよく「本気で回ると1日では終わらない」といいます。たぶんそうでしょうね。その建物は、いずれも歴史上の人物の名をとってリシュリュー翼(Pavillion
Richelieu)、ドゥノン翼(Pavillion Denon)、シュリー翼(Pavillon
Sully)が合わさったものになっていますが、前二者は全長500mを超えるスケール。日本流に数えて3階建てで地階と半地階がありますので、とてつもなく大きな美術館だというのがわかります。そのため見学には気合が要るのではないかと躊躇してしまう人もいるでしょうが、ちょこっと見るだけでも十分におもしろいので、ぜひどうぞ。日曜日は混雑しますけれど、9時の開館より前に並べば楽に入れますし、お店が閉まってしまうパリでの有効な過ごし方となるでしょう。休館日は火曜です。 ミロのヴィーナスを撮りまくる観光客(あ、自分もだ) 初心者、ミーハーさん、美術への関心が薄い人は、日本語のパンフをもとに著名な作品をねらいうちにするコースを計画しましょう。ハンムラビ法典、ミロのヴィーナス、サモトラケのニケ、ダヴィッド(ナポレオンの戴冠)、ドラクロワ(民衆を導く自由の女神)あたりは「見たよ〜」と報告すると誰にでもわかってもらえます。ヴィーナスは360度どこからでも見られるのですが、日本人や中国人の団体に出くわすと、全方向からケータイのフラッシュが光るよ。そうそう、最近またまた話題になった「モナリザ」を見ねばね。モナリザはドゥノン翼のいちばん西の端あたりにありましたが、2005年に展示室が新装され、同翼の中央付近に移されました。以前から、この美術館にしては例外的な重装備で展示されています(日本テレビの協賛でつくられました、と書かれています)。 ガラスのピラミッド(ルーヴル初体験のお二人さま) エントランスは3ヵ所あります。初心者は中庭にあるガラスのピラミッドから入るのがいいでしょう。地階に降りると、チケット売り場やインフォメーションがあります。日本語パンフを入手しておきましょう。それほど親切なガイドとも思えませんけどね。そのホールからいずれかの翼に入り、いよいよ見学という段取りになります。お手洗いが極端に少ないのと、いったん見学に入るとなかなかエントランスに戻ってきにくい(広い&ややこしい)ので注意。チケットは途中退場しても当日のうちなら有効ですから、外に出てランチしてもいいのです。 フランス・イタリア絵画が展示されているドゥノン翼 それにしても、古い宮殿を存分に生かして、よくもあれだけ大胆でわくわくするようなステージをつくっているなと感心します。石造りと木造りの違いではありますが、日本の歴史的建造物って、どうしても「昔」のままですよね。ルーヴルは、ある部分は大きくぶち抜いてつくり直してあるし、修築しているうちに中世の遺蹟まで出てきてそれをそのまま展示物にしてしまっているなど、歴史の跡を何層にも重ねた、それ自体がものすごい展示物なのだといえます。 ピラミッドを入ると広々としたエントランスホールがある 中央のホールからつづく地階には、郵便局やミュージアムショップ、美術書の書店などが品のいい感じで並んでいます。その先のゲートを抜けると、小さなブティックの並ぶショッピングゾーン。高級なのが多いのでいつも素通りだけど、この並びのトイレは無料なので(しかもきれいだし)、押さえておくと街歩きに使えます。そのまま進むとリヴォリ通り側の地味な出口につながります。ピラミッドに行列ができているときでも、こちら地下の入口は比較的すいているので、暑いときや雨のときにはとくにお薦め。 パリのど真ん中にあって雰囲気もいいので、最近はチケットを買って入場しないときでも、カフェとトイレと郵便局だけ使わせていただいております。やっぱり美の鑑賞には向かない体質なのかしらん。 |
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Luxembourg (リュクサンブール公園) シテ島から左岸に渡り南北方向のメインストリート、サン・ミッシェル通りを7、8分歩くと、右手に大きな公園が現れます。街中の公園なので、一見すると鉄柵に囲まれてどこか管理された印象があるものの、入ってみればかなり広く、開放感のあるいい公園です。 リュクサンブール公園(Jardin du Luxembourg)は隣国のルクセンブルクと同じ綴りですが、こちらは絶対王政期のリュクサンブール公爵邸に由来。旧邸はいまリュクサンブール宮殿(Palais du Luxembourg)と呼ばれ、フランス議会の上院(Sénat)議事堂として使われています。壁の時計がアクセサリーになっている小さめのかわいい宮殿で、外見では国事を議しているように見えない(笑)。その宮殿が公園のいちばん北にあり、南側に庭園が広がっているのです。中央に8角形の人工池があって、その周囲に砂利敷きのスペース、さらにその周囲が一段高くなって芝生のスペースと、欧州式庭園独特の幾何学仕様になっています。花壇や並木のセンスもすばらしく、とくにパリを特徴づけるマロニエがいい感じです。 最近までカルチェ・ラタンのウルム通りにあったINRP(国立教育研究所)に研究のため(お〜)出入りしていたとき、昼休みにふらふらと歩いたのが最初だったかな。生来の都会人のもので、ヴァンセンヌやブーローニュのような郊外型の公園(森)なんかより、都心部の整形された公園に安らぎを感じるわけです。そこがすっかり気に入って、以来パリを訪れれば必ず2度3度とここでゆっくりすることにしています。ベテランさんが散歩しているのはもちろん、場所がら学生ふうの人も多いし、昼間は子どもたちがたくさん遊んでいる。どういうわけか8角形池でラジコンヨットを走らせる子ども(むしろパパのほうか)をいつでも見かけるよ。 公園の敷地内には見どころもたくさん。メディシスの泉(由来不明だけどガイドさんが一生懸命説明してくれた)、ジョルジュ・サンドやスタンダール、ショパンらの像、小さな人形劇場もあります。木立のあたりはデートにもいいムード。いちばん西側の隅っこには、ニューヨークに贈られた自由の女神の原像(したがってとても小さい)があります。 このごろは冬場に渡仏することが多いので機会に恵まれないのですが、サンドイッチなどを買って公園のベンチでゆっくり昼ごはん、というのもなかなかいいですよ。ここは左岸に住むハトさんたちの拠点(?)になっているようで、パンくずが落ちれば競って突っつきます。よく太ったハトさんたちにまぎれてスズメさんもちょこまか動き回り、隙間をすり抜けてエサを確保する場面も。公園の東側、RERのリュクサンブール駅付近にはマックとクイックが並んでいるので(16- Fast food参照)、テイクアウトしたフライドポテトをちぎって投げる人もいます。私もやったことがあり、けっこう人気(ハト気)があるのです。コレステロールたまりそうだね。 お気に入りの眺望は、8角形池の東側に立って池越しにモンパルナス・タワーを見ること。福岡の大濠公園で、やはり池越しに油山(あぶらやま)を望むポジション(貸しボート乗り場のあるあたり)と、私の中では双璧です。モンパルナス・タワーのような人工物をどうしてと思われるかもしれないけれど、そこはやっぱり都会育ちなのですね。大濠公園の曲線に対してあちらは直線の世界。リュクサンブールは池のサイズも小さいが、どうもそういうのに惹かれるらしいのです。ここを歩くと、パリに来た実感が湧き、至福のときを過ごせます。 |
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Métro (1) (メトロ その1) 元祖・ロンドン(1863年)に遅れること37年、パリの地下鉄は1900年に最初の路線が開通しました。英語でsubway、とくに英国ではundergroundと文字どおりの「地下鉄」ですが(ロンドン地下鉄の愛称Tubeは真円状のトンネル・車両に由来)、パリのそれは、最初の地下鉄を経営していた会社名の首都鉄道(Chemin de fer métropolitain)の略称が定着したものです。いまや英語圏でもメトロで通用するし、長らくサブウェイのSを意匠化してきた東京の旧営団地下鉄も、2004年春の民営化で東京メトロの通称を採用したのは周知のとおり(正式社名は東京地下鉄(株))。 東京よりずっと狭いパリ市内に張りめぐらされたメトロは全14路線(東京は12路線)。街を歩いていて道に迷っても、そのうちすぐメトロの駅が見つかり帰り道を確保できるほどの密度です。 2号線ラ・シャペル駅 国鉄パリ北駅と地下通路で結ばれる メトロの経営は、バス、RER(市内部分)などと同じパリ交通公団(RATP: Régie autonome des
transports parisiens)が担当しています。RATPの路線は、ゾーン制のRERをのぞけば基本的に均一運賃を採用しているので、非常に気楽だし便利です。バスも共通の1回1.40ユーロですが、メトロの場合は乗り換え可能ですから、市内のほとんどの地区にその運賃で行けます。10回回数券カルネ(Carnet)は10.70ユーロ、1週間有効(ただし月曜起算)のカルト・オランジュ(Carte Orange)市内版が15.70ユーロ、観光に便利な一日乗車券モビリス(Mobilis)市内版が5.40ユーロで、もちろんバスなどと共用。短い旅程で行きたいところがしっかり計画されているような場合には、そうしたチケットを使って安く上げたいですね。だいいち、そのつど切符を購入するためのやりとりが省けて気楽です。自動券売機もあるけれど、ややこしいので使ったことはありません(苦笑)。パリジャンたちもだいたい窓口に並んで買っています。たとえばカルネなら、<Un Carnet, s’il vous
plaît.>といえばさっと10枚ぶん出てくるし、フランス語が苦手ならメモ紙に<1 Carnet SVP>と書いて出すと問題なく買えます(SVPはs’il
vous plaît=お願いします、の記載上の省略形)。拡大版の一日ないし数日用乗車券パリ・ヴィジット(Paris Visite)が日本の代理店で売られているのを見かけたことがありましたが、現地で買ったほうがお得だし、とくに初心者はヴィジットを使いこなせるとも思えませんので、あまり勧めません。 左上から時計回りに 1回券ティケ、モビリス、パリ・ヴィジット、カルト・オランジュ1週間用 メトロを制する者はパリを制す。乗り慣れればこんなに便利なものはないし、モビリスなど手にした日には、もう下駄代わりに使えるようになります。どこも駅間が短く、方向感覚がつかみにくい面はたしかにあるけれど、まずは自分のお宿と要所(国鉄駅、オペラ、シャトレなど)を結ぶ路線をきちんと把握し、それとの関係で路線を考えるといいかもしれません。 そうそう、ガイドブックには駅名をカタカナで書いてある路線図を載せている場合がありますが、現地に行けば当然ながらフランス語オンリーですので、面倒でもフランス語版をもっていたほうがいいでしょう。1号線をのぞいて車内アナウンスがありませんから、降りるべき駅の綴りを頭に入れておき、つねに駅名票に注目しておかなければなりません。厄介なことに、メトロの駅名はどこも長めなんですよね。長すぎると評判の馬出九大病院前(まいだしきゅうだいびょういんまえ 福岡市営地下鉄箱崎線)なんてパリでは標準サイズですから。しっかり覚えてくださいな。それと、名所旧跡に行く場合でも、そのものずばりを名乗る駅はほとんどありません。上げ底的に名所の名を冠する日本とはそこが違います。わかりやすいのはルーヴル最寄りのパレ・ロワイヤル・ミュゼ・デュ・ルーヴル(Palais Royal-Musée du
Louvre)やアンヴァリッド(Invalides ただしヴァレンヌ
Varenneのほうが近い)、マドレーヌ(Madeleine)など。凱旋門へはシャルル・ド・ゴール・エトワール(Charles de Gaulle- Étoile)、エッフェル塔へはビラケム(Vir Hakeim ただしRER利用ならシャン・ド・マルス・トゥール・エッフェルChamps de Mars- Tour Effel)、モンマルトルへはアンヴェール(Anvers)という具合。駅名は、地名のほか、建造物、人名、歴史的にかかわりのあるパリ以外の地名、記念日などヴァリエーションに富んでいます。ラ・クルヌーヴ・ユイ・メ・ミルヌフサンキャラントサンク(La Courneuve 8 mai 1945)なんておよそ駅名とは思えないし、ナシオン(Nation)やレピュブリック(République)なんてそれぞれ由緒ある広場の名なのだけれど「国民」「共和国」といった観念的な駅名でびっくりしますよね。フランクリン・デー・ルーズヴェルト(Franklin D. Roosevert)、サン・フランソワ・グザヴィエ(Saint
François Xavier ザヴィエルですね)、ジョルジュ・サンク(George V 英国王ジョージ5世)など外国人の駅名もあるよ。 なお、ニューヨークなどと並んでパリのメトロは危険だという説が流布されています。何をもって危険というのかわかりませんが、ギャングや殺人鬼と乗り合わせることは一生かかってもないはずで、その点は東京と同じように考えてよいと思います。ただし、スリや置き引きはたっくさんいますのでご注意を。バッグは膝に抱えて、リュックも背中に乗せたままにしないようにね。 |