PART 1  低い地方へ行ってみよう

 

 

東京などの「本州」から九州へ観光旅行にやってくる人が、しばしば45日の日程なのにその島を一周しようとすることに、九州人は嘲笑を含んで「島って言うても広いとバイ。移動ばっかりになってつまらんめーが」などというのだけど、そういう九州人が北海道に行くとなるとやっぱり数日で一周したりする。北海道は九州の2倍以上もあるのですが。普段なじみの薄い地域へいざ旅行というと時間感覚が問われますね。欧州の旅にもその傾向はあって、せっかく行くのだからと現地6泊くらいなのに3ヵ国を突っ込んだツアーに行ったりしますが、本当の本当に移動だらけになるし、飛行機移動でも入ろうものならさらに無意味な時間が多くなります。空港は都心から遠いし、早めに行って待機していなくてはならないですからね。その点で鉄道の旅は都心→都心ですし、窓から途中の景観を眺められるメリットがあります。車窓の景色が点と点の移動ではなくしてくれます。ただ鉄道は飛行機ほど速くありませんので、それほど遠くへは行けず、短期間に数ヵ国を回るツアーなんてとても無理。それこそ、夏休みに鉄道会社がやっている子どもスタンプラリーみたいに「乗りっぱなし」になってしまう。鉄道での移動はせいぜい4時間以内に収めたいところですね。くれぐれも欲張らないようにしましょう。・・・古賀のようにまとまった休みがあっていつでも行けるやつの言い草だって? そりゃそうだけど、せっかくの旅行を印象の薄い「移動」で終わらせることの弁解にはなりますまいよ。

いまから3日間の旅行で、訪れる「国」の数は1つだけ。うらやましいだろ〜

もっとも、例年そうであるし、自分自身の信念とか研究課題にもかかわるのですが、西欧を歩こうというときに「国」の数はさほど重要ではありません。というか、そこにこだわりすぎても仕方ない。「国」の数にこだわると、いきおい首都とか観光都市みたいなのを1ヵ所ずつピックアップすることになり(ロンドン→パリ→ウィーン→ローマみたいに)、西欧が有している面的な連続性とか多様性に気づくことができなくなります。「パリ」の話をするとき、私がそれを「フランス」一般に重ならないように注意しているのにお気づきでしょうか?

 
早朝のパリ北駅 ここの出発便掲示はなつかしいパタパタ式! クロワッサン+カフェの朝食セットが€2.20


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21日の月曜日、カルチェ・ラタンの常宿からタクシーをとってパリ北駅(Paris- Gare du Nord)にやってきたのは午前640分。いつ来るかわからんメトロを当てにすると危ないので用心したのだけど、朝の道路は超すいていて、10分かそこらで着いてしまいました。往年のターミナルなら夜行列車が続々と到着する時間帯でしょうけど、それはほとんどなくなり、いまはIC(都市間急行)などの長距離列車、そしてTGVタリスThalys)といった高速特急の朝発便の入線を待っているところ。私が乗るのは725分発のタリス9311便で、それより前にリール・フランドル行きのTGV、ブリュッセル・ミディ(南駅)行きのタリス、そしてロンドン-セント・パンクラス・インターナショナル行きユーロスターが立て続けに出ます。この時間はまだ日が上がりきっていないのですが、大きめの荷物をもった人がたくさん待機。こちらの大ターミナルは出発15分前くらいにならないと発車番線がわからないので、みな櫛型ホームの端の部分で待っています。観光客らしき人は少なくて、大半がビジネスの雰囲気を漂わす男性。平日の朝だから当たり前か。日本人ビジネスマンも何組かいるね。どこからどこに行くのかな。


わがタリス9311便の発車番線が発表されると、大勢の人がぞろぞろ前進。土曜日に北駅へ来たついでにネットで予約済みのチケットを発券してもらっており、そいつを刻印機に押し込んでがちゃりとやります。それにしても長いホームで、大屋根が途切れてもなお進まされる。この便は、前8両がアムステルダム中央駅(Station Amsterdam Centraal)行き、後ろ8両が途中のブリュッセル・ミディ(蘭Brussel Zuid / Bruxelles Midi)止まりで、やまびこ/つばさと違うのはそれぞれの前後を動力車がはさんでいるため、全体としてかなりの長大編成になっていることです。乗るのは前の編成だから指定車両にたどり着くまで5分くらいかかりますやね。指定号車の指定座席に行ってみたら、セミコンパートメントとアクリル板で仕切られた客室の最後部の窓際。今回は進行方向を向いてゆけるので上々です。隣は20歳そこそこのかわいいお嬢さんで、どうやら彼氏と座席が離れてしまったらしい。変わってあげようかと思いかけたものの、現れた男がロン毛のチャラい感じだったので知らんふり〜(笑) あ、でも「ボンジュール」とかそういうあいさつは長距離列車では欠かせませんね。たぶん彼女も、得体の知れぬ文字で書かれた本を読む東洋系のおっさんが隣で、どうしたものかと思っていることでしょう。

  出発!


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25分定刻に出発。たちまちスピードを上げてパリ郊外を駆け抜け、TGV専用線(高規格線)に入りました。自動放送はフランス語、オランダ語、英語。つづいて肉声でも3言語をつらねて停車駅の案内などをしています。この9311便はベルギーのブリュッセル・ミディ、アントウェルペン・セントラール(Antwerpen Centraal)、オランダに入ってロッテルダム・セントラール(Rotterdam Centraal)、デン・ハーグ・セントラール(Den Haag Centraal)、スキポール(Schiphol)に停まり、アムステルダム・セントラールが終点。私はひとまず1001分着のロッテルダムをめざします。今回のターゲットはオランダ南部の3都市(ロッテルダム、デン・ハーグ、アムステルダム)で、この便と、帰路のアムステルダム→パリのタリスをネットで予約しました。片道3時間くらいなので冒頭に触れたような基準でいうなら最も鉄道旅行にふさわしい時間距離ということでしょう。ただし、タリスが時間どおりにちゃんと走ってくれればの話だけどね。この赤いボディの高速特急に乗るのは今回が6回目だけど、1度として時間どおりに着いたことはなく、とくに昨年のケルン→パリではえらい目に遭いましたもんよ。それなのになぜオランダなのかといえば、わりに単純な発想で、昨年6月のサッカーW杯を見るうち「この次はデンマークかオランダに行きたいなあ」と思った次第。サッカーそのものにはほとんど関心がないため、事前のアオリみたいな報道で「対戦相手の母国を取材しました」みたいな特集に興味をもったんでしょうね。デンマークにはとても興味があったけど、パリから鉄道で往復できる距離ではないし、ユーロ圏でもないしで、今回はパス(サッカーだけに?)。カメルーンとウルグアイは論外(笑)。オランダは、2006年のドイツの旅の折に時間の隙間を見つけ、南東部のマーストリヒトとハーレンに合計2時間ちょっと滞在しただけで、実質的に今回が初めてみたいなものです。

  ロッテルダム中央駅


日ごろのおこないゆえか天の思し召しか、タリスはほぼ定刻にロッテルダム中央駅に到着しました。まだ10時過ぎ、まる1日使えるので、場合によってはロッテルダム見物を途中で切り上げてどこか別の都市へ転戦してもいいかなと考えています。往復のタリス以外はノープランだけど、オランダは鉄道が充実している上に主要都市間の距離が近いので、あちこち見て回るにはいい環境だと思う。

 ロッテルダム中央駅の外観


いずれにしても、まずはホテルを見つけて荷物を預けよう。別の都市を見るにしても、ロッテルダムを基地にするつもりです。ここロッテルダムRotterdam)は人口規模でオランダ第2の都市。欧州国際河川であるライン川の巨大な河口デルタ付近(川筋でいうとマーズ川沿い)に開けた港湾商業都市で、EUの海の玄関という使命を負っています。子どものころ読んだ絵本に船旅の話があり、ロッテルダムという地名がやたら印象に残っていました。中学校の地理の教科書では、当時のECの「海の玄関」ユーロポート(Europort)について写真つきで紹介されていて、知人の船員さんに「ロッテルダム港は大きいですか」なんて質問したのも憶えているな。たぶん「物知りだね〜」といってもらいたかったんでしょうね(笑)。

しかし寒い。パリは78度といったところでしたが、ここは体感で1度あるかないかでしょう。1ヵ月くらい前に中国東北地方の遼陽市(瀋陽の南、約100kmのあたり)に仕事で出張したのだけれど、あちらは日昼でマイナス20度と想像を超える寒さ。ただその折はダウンコートで完全武装していたため、露出している顔と頭だけが感覚を失うほど冷たくなるだけでした。今回は、パリとオランダ南部ではあまり違わないはずという先入観もあって、基本的に冬の東京でしているのと同じような服装で来ていますから、本気で寒いよ。ことによってはインナーかマフラーでも買わんといけないかもなあ。

 朝の市庁舎(Stadhuis) 手前のレーンは噂に聞いた自転車用


市の中心部を貫くコールシンゲル通りに出てツーリスト・インフォメーション(観光案内所)を探すのだけど、日本のガイドブックに i マークが記されている市庁舎の付近を探してもそんなものは見当たらない。きょろきょろしていたら、20代くらいの背の高いイケメン兄さんが自転車を止めて英語で話しかけてくれました。「インフォメーションはもう少し先ですね。記憶がはっきりしないんですが、たぶん2ブロックくらい行った右側で、小さなイタリアンレストランが見えたらそのあたりです」。ご親切にありがとう。歩いていけばたしかにそのとおりで、ガイドブックが示す場所とはメトロの駅1つぶんズレていたぞ! 私はたいていインフォメーションで1枚もののシティマップを入手してコートのポケットに入れ、ガイドブックはそこにたどり着くまでの道具なので宿に置いてきてしまうのですが、こんなにズレておったらそもそも動きようがありません。実業之日本社さんは、肝心のところだけでもチェックを怠りなく!(翌日のデン・ハーグも怪しかったぞ)

 ロッテルダムのvvv(フェーフェーフェー 観光案内所)


ツーリスト・インフォメーションのユニヴァーサルサインは小文字のiを意匠化したものですが、オランダではそれに加えて小文字のvを逆三角形状に3つ重ねたものを使用している模様。目抜き通りの広い歩道に、ガラス張りのパビリオンみたいなインフォメーションがありました。ここは市内のど真ん中のようです。西欧を個人旅行する際には必須のポイントで、多くは中央駅付近ではなくて中心街(名古屋なら栄、広島なら紙屋町、福岡なら天神とか)にありますので、荷物をどうするか、宿泊は・・・という見通しをある程度もっておきたいね。清潔なカウンターがあり、私と同年代くらいのスマートな女性係員が応対してくれます。I would like to reserve a room… と話しはじめると、女性はすこし首をかしげるような様子を見せ、「フランス語のほうがよろしいですか?」と驚きのお訊ね。まだ前記の依頼文しか口にしておらず、クセでフランス語を話してしまったということはないので妙なのですが、おそらく当方の発音にフランス語的な特徴があるんでしょうね。ベネルクスは本当にマルチリンガルな社会で、観光業界などで働く人ならなおのこと欧州諸言語の特徴を会得しているのでしょう。フランドル(ベルギーのオランダ語地域)ならともかくオランダでフランス語が通じるとは思っていなくて、存分に英語を話すつもりで乗り込んできたのに、わちゃー! まあいいや。お言葉に甘えてフランス語での交渉とさせていただこう。フランス人のフランス語は早口すぎてわからんけど、非母語どうしだと通じやすいものね。市内中心部(フランス語でサントルCentre)で€70くらいと指定すると、現在地から徒歩15分くらいのところに1€75のところがありますよと。オンラインの調子が悪く電話で直接やりとりするなどして多少時間はかかったものの、無事にブッキング完了、すぐにもチェックインできるということでした。ありがたし。徒歩ならこの道を、トラム(路面電車)なら21系統でと道案内も的確だけど、ここの方針なのかオランダの作法なのか手数料を徴収しない模様です。イチゲンの観光客を気分よく滞在させようとすればインフォメーションのサービスや態度って本当に大事ですよね。折りたたみ式のシティマップを€2で購入して辞去しました。ダンキュー!(Dank U. 何となくDankethanksの中間っぽいですね)

 


目の前にメトロのビュールスBeurs)駅があります。徒歩15分なら歩いてよいのだけれど、きょう1日市内交通を使うのだし、トラムで行けるものなら利用しようと思う。メトロ駅に目をつけたのは、ここなら切符売り場があって一日乗車券を買えると思ったからです。そのカンは当たり、ワン・デイ・チケットをというと€7で購入できました。体格のいいおばさん駅員は「市内のメトロ、トラムウェイ、バスを24時間利用することができます」ときれいな英語で。チケットはov-chipkaartと書かれた名刺大のボール紙ふうで、どうやらチップが埋め込まれているらしい。さっそく地上に戻ってトラムをつかまえると、鉄道マニアが鼎の軽重を問われそうな誤乗で、マーズ川を渡って南の副都心のほうに向かってしまいます。うははと苦笑するものの、何か予定があるでもなし、一日券もあることで、いい景色を見られたからいいや。マーズ川に架かる斜長橋はエラスムス橋(Erasmusbrug)とのことで、港の景観とあいまってすばらしいデザインだなあ。20分くらいロスしてビュールスに戻り、あらためて21系統に乗って、たしか4つ目の駅で下車。どういうわけかシティマップにはトラム電停の位置や駅名が記されておらず、これは不親切なのではないかな? このあとデン・ハーグ、アムステルダムも同様だったので、トラムはそういう扱いなのかもしれませんね。最初に乗ったトラムに女性車掌が乗務しており、切符の使い方を教えてもらいました。ドア際の機械にタッチしてくださいとのこと。東京のバスや都電と同じようなICカード読み取り機ですが、「乗るときだけでなく、下車するときのタッチを忘れないでくださいね」と。

 


予約したサヴォイ・ホテル(Savoy Hotel)はすぐに見つかりました。これはエデン(Eden)という西欧のあちこちにあるチェーン(フランチャイズ?)ですな。予想したとおり、いわゆる「ビジネスホテル」の構えで、レセプションまわりも清潔でした。まだ11時だけどアーリーチェックインを許され2階(日本式では3階)に上がると、広々とした部屋にダブルベッド(ではなくてシングルベッドをくっつけている)、ライティングデスクまである立派なものです。トイレやシャワーなどの水まわりがいまいち貧相なのが残念ですが、1€75にしては上々で、昨年利用したフランクフルト駅前の同価格のホテルよりもかなり上等やね。ついでの話、中国・遼陽で泊まったのは、先様が予約してくれた市内ナンバー2くらいの立派な国際酒店(International Hotel)で4つ星、東京なら2万円くらい取られそうなすばらしい部屋でしたが、さすがに人民元は安く1300元(3000円ちょっと)。ただ、チェックアウトに際してレセプションの係が一人も少しの英語すら話さないのには参った。現金で精算します、とかいうほどの通常業務くらい英語できるようにしないと、欧州の基準では確実に星を剥奪されます(まあでも先様との商談?に際して「日本ではそうかもしれないが世界ではこうです」とか強気な態度で来られたことを思えば、欧米がどうした、中国を相手にしないと知らんぞというのがチャイニーズ・ビジネスなのかもしれん。私が「中国ではそうかもしれないが欧米では通用しませんよ」といったら青ざめていらしたので)。

 
(左)キューブハウス (右)ブラーク駅のトラム電停


荷物を置いていつものように手ぶらになり、街歩きに出かけます。日が高くなってきたためか、朝着いたときのようには寒くないので、服装はいじらなくていいか。ホテルのあるところは中心街の東に隣接する閑静な地区で、歩いて5分くらいのところにオランダ鉄道(Nederlandse Spoorwegen: NS 日本でいうJR)とメトロのブラーク(Blaak)駅があります。トラムやバスの停留所もあって小さな総合駅になっていますね。その駅に面してキューブハウス(Kijk-Kubus)なる異様な建物、というか意味不明の黄色い構造物があり、道路とトラムの線路を覆っています。あとでガイドブックを見ると建築の世界ではけっこう有名なマンション!だとか。中が水平でないわけはないけど、住みづらいでしょうね。ブラークからトラムに乗って都心のビュールスに戻り、さきほどのインフォメーションの一筋西を南北に通るラインバーンLijnbaan)へ。これもあとから知ったことですが、ものの本によれば、都心の目抜き通りを歩行者専用にした「歩行者天国の元祖」だそうですよ。ここの場合は銀座や新宿と違って恒常的に歩行者専用で、インフォメーションがあったコールシンゲル通りに自動車とトラムと自転車、こちらに歩行者と機能分化させているわけね。西欧ではこういうところを多く見かけます。日本の中都市あたりでもしてみればよいと思うものの、自動車社会とどう折り合わせるかというのが課題でしょう。

 トラムがゆっくり歩道を横切る
  歩行者専用の商業ゾーン


昼休みにさしかかっていて、オフィスワーカーとおぼしき人たちが続々とラインバーンに出てきました。中心街って、午前と午後で表情というか雰囲気ががらりと変わるんですよね。こちらもどこかで昼ごはんを食べることにしよう。ラインバーンは衣料品や靴などのブティックが主で、西欧の街のパターンとしては、ここから左右に折れるどこかの道に飲食店が集中するんだろうな。そう思って歩くと、コールシンゲル通りに面した立派な市庁舎とラインバーンをむすぶ150mくらいの歩行者専用道路にカフェやレストランが並び、寒いからほとんど人はいないもののテラス席もしつらえられています。表に掲出してあるメニューを見ればどこも大差なく、しかしどこも英語を添えてあるので、まあどこでもいいか。緑色のひさしを構えた’t Fustという店に入ってみれば、ウッディな造りで、観光地の土産物屋にくっついた食堂みたいな感じ?

 
 


恰幅のよい口ひげの店員が「お飲み物は」と英語で訊ねるので、つい反射的に「ハイネケン」。ロッテルダムに着いてから、あちこちで例の緑のマークを見かけ、さすが本場だなあと思っていたのでした。寒いのにビールとは何だと思わぬでもないけど、「お飲み物は」の選択肢はわれながら乏しい(涙)。テーブルに置かれているのはオランダ語のなので英語メニューを求めると、同じレイアウトなのにこちらには値段が書き込まれていません。そこで両者を見比べつつ(オランダ語では何というのかというのも参照しつつ)検討して、カフェの軽食みたいなやつを頼むことにした。オランダ語でStokbroodje warm vleesとあり、英語版ではSpicy chickenをフレンチ・ブレッドに載せたとかいう感じだったかな? €6.75なのでサンドイッチのたぐいでしょう。ややあってお皿が運ばれると、なるほどバゲットを切り開いて、鶏肉の炒め物をたくさん載せてある。かぶりつくには大物すぎるのでナイフとフォークで切り分けて口に運んでみれば、これはおなじみ「鶏肉とカシューナッツ炒め」のナッツ抜きということだな! 鶏肉、パプリカ、たまねぎを醤油と砂糖、オイスターソースなどで甘辛く炒めてあって、中華そのものじゃん。この前夜、パリの中華街で豚肉・タケノコ・キクラゲの炒め物を食べており、まあ普通に美味いと思いましたが、こっちのほうが日本人の好きそうな中華味。パンにも不思議に合うね(てりやきチキンバーガーというのもあることだし当然か)。ここのオリジナルなのかスパイシーチキンと当地でいえばこういうものなのか聞き損じましたけど、このあと街歩きをしていて気づいたことに、中華風の惣菜とか料理というのはファストフードを含めてありふれていて、オランダというかロッテルダムの食生活には定着している様子でした。中華&スリナム料理という看板もあちこちで見かけます。スリナムというのは南米大陸北部の旧オランダ領の国で、ロンドンのインド料理やパリのベトナム料理みたいなものでしょうが、エスニックといっても中華と交ぜるか?(笑)

陽気な店員さんは「ホリデー?」と訊ねてきました。驚いたことにまた「フランスから来たのですか」というので、「私は日本人で東京に住んでいますが、いまパリに滞在中で、さきほどロッテルダムに来たところです」と答えました。そんなにフランス訛りかなあ。ムッシュは「友達がいたので東京に行ったことがあるよ。ものすごくグレートだったね」とか何とかいっていました。食後のコーヒーもつけて€11.25。テーブルにシティマップを広げて午後の見どころをチェックしよう。


*この旅行当時の為替相場はだいたい1ユーロ=113円くらいでした

 

PART 2へつづく

この作品(文と写真)の著作権は 古賀 に帰属します。